CASE STUDY:新日本コーポレーション株式会社(ISO9001・ISO14001・ISO27001・ISO45001)
消防設備点検の標準化と安全性の向上を目指して、
防災業界初、4種のISOを取得
新日本コーポレーション株式会社(愛知県名古屋市)
事業拡大の武器「標準化」
新日本コーポレーションは、愛知県名古屋市を拠点に多くの東海地域の消防設備点検を手掛けている。
火災報知機をはじめとする消防設備の点検は、年に2回実施することが法律で決められている。同社はこの非常に継続性の高い事業に、社員全員で210もの消防関連資格をもって、45年間取り組んできた。
その結果、名古屋市交通局、郵便局、自衛隊、大手工場や病院などが客先に名を連ねるようになった。文字通り、手堅く地歩を築くことに成功したのだ。
しかし、2代目社長の飯田慎也氏は「それだけではつまらない」と考えたという。
「もっとクリエイティブに事業を展開したい」と思った飯田社長は、客先に消防設備の点検だけでなく新しい設備や建築の提案を行うことにした。点検で実績を積んでいたこともあり、そのセールスはまず国の機関で成功し、それが呼び水となって、さらに多くの客先と発注を獲得することができた。
この段になって、飯田社長の問題意識にあがったのは「標準化(平準化)」というテーマだった。
客先と仕事のバラエティが増え、従業員も増えるにつれ、誰が行なっても作業のクオリティが一定に保たれるのかどうかが懸念されたからだ。
「標準化」を図るためには作業内容をマニュアル化しなくてはならないが、マニュアル化するためには何らかの基準が必要になる。「その基準としてISOを選んだのです」と飯田社長は言う。
では、なぜISOを選んだのか。その理由についてもクリアだ。
「新日本コーポレーションの点検は、誰が行なっても同じクオリティと内容で、誰もが90点を取れる点検内容ですが、この状態をつくるためには、常にエラーを改善できる仕組みが必要です。この原因を突き詰めPDCAを回せる仕組みとして最も優れている、また国際規格として信頼性の高いのがISOだと思ったのです」。
ISO取得4か年計画
こうして同社のISO取得の取り組みが始まった。
まずはISO9001と14001の取得を決めた。
当初はこの2種類のISOを取得するところまでを考えていたが、そこに客先からISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)取得のリクエストが入った。
消防設備点検は、社員以外立入禁止のゾーンでも行わなくてはならないため、取引先は、この際の情報漏洩の不安を解消する手段としてISO27001の取得を提案してきたのだ。
そこで飯田社長はISO9001と14001に加えて27001までの3種類のISOを3年で取得する計画を立てた。
この3か年計画は、幸い社内の優秀な人材にも助けられて、順調に進んだ。
「これでやれやれと思ったところにコロナが起こり、わが社でも点検時のコロナ対策をルール化する必要を感じました」。
飯田社長は4つ目のISOに着目した。労働安全衛生のためのマネジメントシステムISO45001だ。
「コロナ対策をルール化するにあたり、“衛生”という観点を軸とするISO45001は有効だと思いましたし、コロナだけでなく、日ごろ防災設備点検という現場作業に携わっている社員のためにはぜひ必要な規格だとも思いました」と飯田社長は言う。
そこで当初のISO取得3か年計画を、ISO45001を加えた4種類のISOを4年間で取得する「4か年計画」に切り替えた。
こうして同社は、防災業界初の4つのISO取得企業になった。
ちなみに、取得後は営業的な効果だけでなく社内的にも好影響が出ているという。
「社員が今までなあなあでやっていたことを明確化しようとし、お互いチェックし合う社風が出てきている」のだという。
今後の経営戦略を支える4つのISO
「このように、4種類のISOを取得したことは社内外の両方において大変良かったと思います」と飯田社長は言う。
さらに今後は同社の経営戦略にもISO取得を役立てるつもりだという。
取得している4種のISO名が社屋の入り口に掲げられている
同社では、三河地方が今後、日本における製造業の拠点になると読み、工場や製造設備が増えるであろう三河地方を集中的に攻める「三河地区構想」をもっている。そして4つのISOはその時に「選ばれる企業」になるための切り札の一つになると考えている。
また、世界進出も視野に入れている。東南アジアにある日系企業の工場や施設の消防設備のメンテナンスを請け負いたいと考えているのだ。
日系企業にとって、現地施設の火災予防や防災のための取り組みを充実させることは、他国からの信頼とコンプライアンスに関わる重要な課題だ。
そしてその大切な点検・メンテナンス作業を受注し、作業を管理するために、同社が4種類のISOを取得・運営している事実は必ず貢献するだろう。
あふれる新たなビジネスアイデア
最後に同社の興味深い取り組みを紹介しておこう。
それは「カーボン・ゼロ点検」という新しい点検方法の開発と運用だ。
実は、消防点検の際に使う燃料(ベンジンやメタノールなど)は温室効果ガスをたくさん出してしまう。また、ベンジンは有機溶剤、メタノールは劇物であり、それをオフィスや施設に持ち込んで点検していることになる。
そこで同社では、植物由来の温室効果ガスが発生しない燃料を使って点検する方法を開発した。それが「カーボン・ゼロ点検」だ。
狙い通り、この新たな技術は、たとえば病院や幼稚園や学校など、とりわけ危険物の持ち込みを回避したい施設の関心を呼び、問い合わせが来はじめているという。
もちろんSDGsの側面からも注目される取り組みだ。
新しいビジネスアイデアにあふれる飯田社長は今後も防災・消防をキーワードにビジネスを広げていくだろう。「看板だけのISOは要らない。役立ててこそ、回してこそのISO」。そんな飯田社長がISOを語るこの言葉が印象的だった。
(2024年6月5日取材)
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