1.持続可能性証明のしくみ

サステナビリティへのシフトが加速し、企業には経済的利益のみならず、社会面、環境面への影響を含む、企業経営に不可欠な側面に対して、どのように方針を示し適切な選択をすることによって企業姿勢を示すか、が問われています。2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、2030年の目標達成に向け対応が推進され、企業活動にも大きく関係しています。SDGs貢献への選択が存在意義を示す事業経営の条件となった現在、持続可能性のための選択を客観的に評価し証明するしくみとして、世界基準の認証制度の活用は有効な手段のひとつです。世界で展開している3つの認証制度の動きについてご紹介します。

参考リンク:
SDGs: Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標
SDGsとは?|JAPAN SDGs Action Platform|外務省
EUROPE SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT 2022
持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド[第2版]:環境省 ⼤⾂官房 総合政策課 ⺠間活動⽀援室

 

2.グローバルサプライチェーンを支える「輸送」~ISCC認証~

企業活動が世界につながる今、企業の多くは直接あるいは間接的に輸出入に関わり、それを支える輸送にも、持続可能性を考慮した選択が重要です。

国連機関である国際民間航空機関(ICAO:International Civil Aviation Organization)は、輸送による温室効果ガスを軽減すべく、2021年から「国際民間航空のためのカーボン・オフセットおよび削減スキーム」(CORSIA:Carbon Offsetting and Reduction Scheme for. International Aviation)を導入しました。持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)を推進することで、航空業界として温室効果ガス削減を目指しています。「2050年にCO2排出実質ゼロ」を目標としており、SAF導入は世界的に加速するでしょう。

CORSIAには、国際航空事業に関わる世界100か国以上が参加しています。国際持続可能性カーボン認証(ISCC:International Sustainability & Carbon Certification)は、CORSIA適合燃料の評価可能な認証制度のひとつです。世界の主要な航空会社が温室効果ガス削減の取り組みを進めるなか、ISCC認証の活用も広がると思われます。

航空に比べCO2排出量が抑えられる手段と言われる船舶輸送ですが、グローバル化による輸送量拡大を考えると、持続可能な選択は必須です。船舶に使用されるバイオ燃料、非バイオ由来再生可能燃料、カーボンリサイクル燃料はISCC認証の対象です。認証制度活用により、サステナブルな企業姿勢をアピールすることができます。

ISCC認証は、ご紹介した輸送分野のみならず、農場から出る有機物残さからプラスティックまで、非常に幅広い原料のサプライチェーンにおけるバイオマス循環推進を評価認証する制度です。世界経済のグローバル化において、限られた資源の適切な世界的循環を示すものとして、世界中で重要性が高まる認証制度のひとつといえます。

参考リンク:
国際航空セクターにおける取組|炭素市場エクスプレス
国際航空で2050年にCO2排出実質ゼロへ、ICAOが採択(世界)|日本貿易振興機構(ジェトロ)
CORSIA Approved Sustainability Certification Schemes|ICAO(INTERNATIONAL CIVIL AVIATION ORGANIZATION)
Sustainable Aviation Fuels – ISCC System
Sustainable Marine Fuels – ISCC System

 

3.進む社会面強化 ~FSC® COC認証、MSC/ASC COC認証~

制度が作られて30年になるFSC(Forest Stewardship Council®)認証は、社会や環境に合わせ規格が進化しています。
木質由来製品の加工流通分野の認証制度であるFSC CoC(Chain of Custody:加工流通過程の管理)認証の規格に、中核的労働要求事項が組み込まれ、移行期間を経て2023年から適用必須となりました。認証取得事業者のみならず認証範囲内の外部委託先も含め、児童労働、強制労働および差別の禁止、結社の自由と団体交渉権の尊重が求められます。

社会面の強化は、水産関連の認証制度でも進められています。
天然魚の持続可能な漁業および加工流通過程(CoC)を評価するMSC(Marine Stewardship Council)認証は、「MSC労働適格性に関する要求事項」を2023年5月から発効させました。この要求事項は、養殖水産物の加工流通認証であるASC(Aquaculture Stewardship Council)CoC認証にも適用されます。
これまでも強制労働、児童労働に関しては要求事項に含まれていましたが、カントリーリスクにより除外が認められていました。今回の発効により、手作業での荷下ろし、加工、包装を行うすべての認証取得事業者および請負事業者は、国を問わず適合が求められることとなりました。

FSC CoC認証は、企業でもよく使用される紙や木材製品、またMSC/ASC CoC認証は、身近な食文化である水産物に関する認証制度です。認証ラベルは、社会面も含め責任ある管理がなされていることを示しますので、企業が認証製品を取り入れることは、社会的責任を果たす選択を意味します。

参考リンク:
FSC:Forest Stewardship Council(ウェブサイト)
海洋管理協議会 MSC:Marine Stewardship Council(ウェブサイト)
ASC:Aquaculture Stewardship Council(ウェブサイト)

FSC® International Certification Centre in France
 FSC® Accredited under registration code FSC-ACC-020

 

4.これからを支える原料~RTRS認証~

世界人口は増加しています。より多くの人が生活していくためには、より多くの食料や燃料が必要です。貴重なたんぱく源であり、また肥料や油脂原料としても活用される大豆の適切な栽培と利用のために、責任ある大豆の製造、流通、使用を推進する目的で、2006年スイスで「責任ある大豆に関する円卓会議(RTRS:Round Table on Responsible Soy Association)」が作られました。農場管理から大豆の加工流通工程までの認証制度です。

RTRSは、農場での生産から加工流通までの責任ある管理のため、規格を設定しています。規格には、サステナビリティのための責任ある製造と、トレーサビリティのCoCがあります。2010年に生産規格が承認され、翌2011年には世界初の認証がアルゼンチンとブラジル、パラグアイで承認されました。2022年11月に日本初の3つのRTRS CoC認証取得者が承認されました。

大豆生産管理の規格では法に基づく適切な農場管理はもとより、労働環境やコミュニティとの関係、環境への責任も求めています。また加工流通(CoC)の規格では、入り出しの数量管理、トレーサビリティ、重要管理点などの要求事項が定められています。さらに、バイオ燃料の生産、非遺伝子組み換え大豆生産などの規格も作られました。

大豆に加えてトウモロコシも食料、飼料、バイオエタノールと幅広く使用される原材料として重要であることから、2015年に検討が始まり、2021年にRTRSトウモロコシ生産規格が発行されました。トウモロコシ生産者認証も世界で広がり始めています。

RTRSは、遺伝子組み換え、地域クレジット、フットプリントなど世界で懸念される点について、利害関係者による検討により新たな規格や考え方を構築し、責任ある生産を支える世界的なしくみとして進化を続けています。

Image
RTRS認証

参考リンク:
RTRS – Round Table on Responsible Soy Association

 

今回ご紹介した認証制度は限られますが、サステナブルな管理を評価する認証制度は多く、それらを活用する企業も増えています。選択は一票。皆様の事業活動にサステナビリティ認証の活用をお考えの際は、ビューローベリタスへお問い合わせください。

システム認証事業本部 佐久間 智恵子

 

【お問い合わせ】

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