車載機器のEMC ~エミッション測定~
ビューローベリタスジャパン株式会社 消費検査部門 ニューモビリティーテクニカルセンターは、車載部品のEMC試験および、Eマーク認可取得サービスを提供しております。
自動車業界は、「電動化」「自動化」「コネクテッド化」が進められ、100年に一度の変革期を迎えているといわれています。また自動車以外で身近なところでは、「5G」や「IoT」など電波を利用したサービスが急速に普及しています。
電波を利用したサービスを支えるEMCについて、5回に分けて簡単に説明しています。
第1回:EMCとは(概要)
第2回:EMC規格
第3回:エミッション測定
第4回:イミュニティ試験
第5回:今後のEMC動向
番外編:EMC障害事例
第3回は、エミッション測定についてご説明いたします。
車載部品のエミッション測定は、主に国際規格であるCISPR25に基づき試験を実施します。OEMメーカ規格もこの規格に準拠した試験条件がほとんどです。
CISPR25は車載受信機の保護を目的とした規格ですが、エミッション測定は、車載受信機(AM・FMラジオやナビゲーションシステム等)以外にも他の車載部品やシステム機能へ影響を与えない(誤動作させない)ことを確認します。
自動車には、狭い空間にECU:Electronic Control Unitが多数搭載されていることから、個々のECUやそれらによって構成されているシステムから発生するノイズによって、互いの機能が影響を受けること(自家中毒)が課題となっています。
放射・伝導エミッション
エミッション測定は、大きく以下の2つに分類されます。
放射エミッション
放射エミッションは、車載部品本体や接続されたワイヤーハーネス(自動車用組み電線:数本から数十本の電線の束)から放射される電磁波ノイズを、専用の広帯域アンテナ(バイコニカルアンテナやログペリアンテナ等)を用いて測定します。
伝導エミッション
伝導エミッションは、ワイヤーハーネスに重畳されているノイズ電圧/電流を、LISN、電圧/電流プローブを用いて測定します。
【実車への影響懸念】
- 車載部品本体から放射されたノイズが直接ナビゲーションシステムのアンテナから混入し、衛星からの微弱信号を受信できず、自車の位置情報を正確に表示できなくなる。
- 高電圧・大電流の車載部品と超低電圧・高速通信信号が密着/近接する自動車内の部品搭載環境では、大電力機器から発生するノイズが、直接混入やワイヤーハーネス間の結合により微小信号センサーへ影響を与え、センサーは正確な値が読み取れなくなる。
- ラジオアンテナから離れた場所に搭載された車載部品のノイズが、ワイヤーハーネスを伝搬しラジオアンテナへノイズ混入、ラジオ放送が聞こえなくなる。
低周波磁界エミッション
最近の車両は、電動化に伴う高電圧・大電流化により、低い周波数帯域(DC数100kHz)の磁界ノイズへの対応が求められています。低い周波数帯域の磁界ノイズの測定は、ループアンテナを用いた測定を行います。
また、ICNIRP(International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection:国際非電離放射線防護委員会)によって、人体の健康への有害な影響を防止するためのEMF(electromagnetic field)曝露制限のガイドラインが規定されています。また、IEC規格により規定された測定プローブを用いて、時間領域および周波数領域の測定を行います。
【実車への影響懸念】
- 磁気センサーが正しい値を測定できずに、ECUが誤動作する。
- シートに座った状態で客室内に搭載された車載部品から発生する電磁界ノイズにより、心臓ペースメーカが誤動作する。
- 長時間のEMF曝露により、人体への健康被害の可能性がある。
過渡エミッション
電源スイッチON/OFF時に、過渡現象によるサージ電圧・電流が発生します。
この伝導性電気的過渡現象サージは、ISO7637シリーズ規格に規定されています。
【実車への影響懸念】
- 同一の電源系統に接続されている車載部品(モータや機械式リレー、マグネットクラッチ)から発生した過渡サージによりECUが破壊される。
次回は、イミュニティ試験についてご説明いたします。
消費財検査部門 ニューモビリティーテクニカルセンター 船津 雅史
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