サステナブルファイナンスの動向と展望
サステナブルファイナンスの市場は、トランジションボンドの普及や新たに追加された目標であるネイチャーポジティブにより、質的な変化が進んでいます。ICMA(国際資本市場協会:International Capital Market Association)による最新ガイドラインの整備で、脱炭素や生物多様性保全を支援する資金調達手法が拡大し、企業や投資家にとって、持続可能な成長を実現するための選択肢はますます多様化しています。
本記事では、サステナブルファイナンス市場の動向、最新ガイドラインの概要と市場に与える影響を解説します。
サステナブルファイナンスの動向
国内市場における動向では、全体として2024年と同水準、もしくはやや減少するとの見込みです。米国政権の政策影響により一時的な停滞感はあるものの、中長期的には成長基調が続くと考えられます。
トランジションボンド(TB:Transition Bond)
2024年に市場浸透が加速。2025年11月、ICMA※による「Climate Transition Bond Guidelines(CTBG)」発行を契機に、さらなる普及が期待される。※国際資本市場協会(International Capital Market Association)
- グリーンボンド(GB:Green Bond)
発行額は2023年をピークに減少傾向ですが、発行件数は横ばい。今後は「ネイチャーポジティブ」など新テーマへの展開が見込まれる。 - サステナビリティ・リンク・ボンド(SLB:Sustainability Link Bond)
2023年以降、発行額・件数ともに減少。ガイドライン改定や仕組みの複雑性が発行体の慎重姿勢につながっており、今後の動向に注視が必要。
最新ガイドラインと国際的潮流
ICMA(国際資本市場協会:International Capital Market Association)では5つ(グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンド、サステナビリティ・リンク・ボンド、トランジションファイナンス)の主要枠組みを整備しています。トランジションファイナンスのガイドラインについては2025年11月に追加されました。
以下に概要を示します。
1. グリーンボンド(Green Bond)
| 目的 | 環境改善や気候変動対策に資金を使う |
|---|---|
| 資金使途 | 再生可能エネルギー、エネルギー効率化、廃棄物管理、クリーン交通など |
| 特徴 | 資金使途が「環境」に限定される |
2. ソーシャルボンド(Social Bond)
| 目的 | 社会課題の解決に資金を使う |
|---|---|
| 資金使途 | 教育、医療、雇用創出、低所得者支援、災害復興など |
| 特徴 | 資金使途が「社会的インパクト」に限定される |
3. サステナビリティボンド(Sustainability Bond)
| 目的 | 環境と社会の両方に資金を使う |
|---|---|
| 資金使途 | グリーンボンド+ソーシャルボンドの要素を併せ持つ |
| 特徴 | 環境・社会の複合的なプロジェクトに対応 |
4. サステナビリティ・リンク・ボンド(Sustainability-Linked Bond:SLB)
| 目的 | 発行体のサステナビリティ目標達成を促す |
| 仕組み | 資金使途は限定されないが、発行体が設定したKPI(例:CO₂排出削減率)やサステナビリティ目標の達成度に応じて、クーポン(利率)が変動する |
| 特徴 | 資金使途よりも「企業の行動変容」を重視 |
トランジションファイナンスについては次章で説明します。
また補完的なガイドラインとして、ジェンダーギャップ、ブルーボンド、ネイチャーポジティブ等に関するガイドラインが用意されています。ネイチャーポジティブは2025年に新たに追加されました。次章で概要を記載します。
2025 ICMAガイドラインマッピング
トランジションファイナンスについて
トランジションファイナンスとは、脱炭素社会への移行(トランジション)を進めるために必要な資金を企業に供給する金融手法です。特に、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出量が多く、技術的・経済的に短期間での脱炭素化が難しい「排出削減困難(hard-to-abate)」な産業を対象とします。
トランジションファイナンスのガイドラインは、日本国内では経済産業省と金融庁が公表しています。
経済産業省「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」
金融庁「トランジション・ファイナンスにかかるフォローアップガイダンス」
国際的にはICMA「クライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック」が広く参照されています。
2025年11月、ICMA「Climate Transition Bond Guidelines(CTBG)」が発行となり、さらなる市場の拡大が見込まれます。
2025年11月にICMAが発行したCTBGでは、以下の4要素が必須です。
1. Use of Proceeds(資金使途)
CTプロジェクト※に充当(例:CCUS、化石燃料設備の早期廃止、低炭素燃料導入、メタン削減)
※Climate Transition Project(気候移行プロジェクト)
- プロジェクトは「パリ協定整合」「炭素ロックイン回避」「低炭素代替不可の合理性」などの条件を満たす必要がある
2. Process for Project Evaluation and Selection(評価・選定プロセス)
- 適格性、除外基準、公式セクターや市場ベースのタクソノミーとの整合性を明示
3. Management of Proceeds(資金管理)
- サブアカウントやポートフォリオで追跡、外部監査推奨
4. Reporting(報告)
- 年次報告で資金配分、プロジェクト概要、期待されるGHG削減効果を開示
- 定量指標・定性指標の活用を推奨
また、外部レビュー:発行前レビュー+発行後の資金追跡検証が推奨されています。
トランジションボンドで認められるプロジェクトの例として以下が挙げられています。
■CCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)や炭素除去技術
- 化石燃料ベースのエネルギー・産業用途に適用
- CO₂輸送・貯留のための関連インフラ投資を含む
- 原油増進回収(EOR:Enhanced Oil Recovery)目的の利用は除外
■高排出資産の早期廃止・解体
- 例:石炭火力発電所(CFPP:Coal-Fired Power Plant)の恒久的な早期廃止
■燃料転換(Fossil Fuel Switch)
- 例:石炭→天然ガス
- 条件:将来的な低炭素代替の統合が可能な設計、メタン漏出管理、CCUS導入など
■低炭素燃料の導入・利用・購入・関連インフラ投資
- 例:水素、バイオ燃料など
■石油・ガスインフラにおけるメタン排出・フレアリング削減
- 対象:ガイドライン初版時点で存在するインフラ
- 条件:長期的な脱炭素目標に整合
- 除外:EOR用途、グリーンフィールドの探鉱・生産活動
サステナブルファイナンステーマの広がり(ネイチャーポジティブ)
2025年6月に自然および生物多様性の保護・回復を目的とした資金調達を促進するための実務者向け「Sustainable Bonds for Nature: A Practitioner’s Guide」が発行されました。グリーンボンド等の補完的なガイドラインとしての位置づけですが、海洋保全等に焦点を当てた「BONDS TO FINANCE THE SUSTAINABLE BLUE ECONOMY」などに続きテーマが拡大しました。
ネイチャーポジティブガイドライン「Sustainable Bonds for Nature: A Practitioner’s Guide」では、自然関連の持続可能な債券を設計・発行するための実務的な指針を3つの柱で整理しています。
- Use of Proceeds(資金使途)
自然テーマ債券は、生態系の保全・回復、自然に基づくソリューション(NBS)の導入、経済活動の転換など、自然損失を防ぐプロジェクトに資金を充てる。対象はグリーンボンド原則(GBP)の10カテゴリーに広がり、気候変動対策や水資源管理、森林・農業の持続可能化などを含む。 - Impact Reporting(インパクト報告)
発行体は、保護区面積、水質改善、土壌健全性、生物多様性回復、GHG削減量などの定量指標で成果を報告。さらに、プロジェクトの背景や改善点など定性情報も推奨され、透明性と比較可能性を確保。 Sustainability-Linked Bond:SLB(サステナビリティ・リンク・ボンド)
自然関連戦略を強調する発行体には、SLBの活用が推奨される。保護面積や汚染削減率などのKPIを設定し、GBF※やSDGsに沿った野心的な目標(SPT:Sustainability Performance Targets)を掲げることで、投資家との対話を深め、企業の行動変革を促す。※昆明・モントリオール生物多様性枠組(Global Biodiversity Framework)
具体的な自然関連プロジェクト例と指標の例として挙げられているものは以下です。
■バイオエネルギー
- プロジェクト例:持続可能なバイオ廃棄物利用
指標例:
o コア:エネルギー回収量(MWh/GWh)
o その他:GHG削減量、廃棄物削減率
■エネルギー効率
- プロジェクト例:緑化屋根・壁、雨庭など
指標例:
o コア:緑化面積(ha)
o その他:GHG削減量、都市住民の熱安全改善人数
■汚染防止・管理
- プロジェクト例:有害化学物質削減、代替農法
指標例:
o コア:有機農業面積(ha)
o その他:水質改善(pH、BOD、COD)、化学物質削減率
ビューローベリタスの取り組み:セカンドパーティーオピニオン(SPO)業務開始
ビューローベリタスは2025年7月より、サステナブルファイナンスに関するセカンドパーティーオピニオン(SPO:Second Party Opinion)業務を開始しました。
※環境省グリーンファイナンスサポーターズ制度の外部レビュー部門における外部レビュー部門登録支援者
グリーンファイナンスポータル:環境省
サービスの内容は以下のとおりです。
| 対象範囲 | グリーン/ソーシャル/サステナビリティ・リンク/トランジションボンド・ローン の発行前セカンドパーティーオピニオン(SPO)、発行後検証 |
|---|---|
| 強み | ・国内外の最新ガイドラインに準拠した評価体制 ・グローバルの環境・社会面での専門知見 ・グローバルでのサステナブルファイナンスセカンドパーティーオピニオン(SPO)業務経験 |
今後、新領域への対応として、新しい資金調達手段(トランジションファイナンスやネイチャーポジティブ)への評価拡大を図ります。
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システム認証事業本部 田城 慶樹
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