今、観光産業に求められる「持続可能性」とは~GSTC認証の概要と実践的意義~
観光産業は、世界のGDPの10%以上を占め、3億人以上の雇用を生み出す巨大な経済分野です。日本でもインバウンド需要の回復とともに、観光地の活性化が進んでいます。一方で、環境破壊、文化の喪失、地域住民との摩擦など、観光がもたらす負の側面が顕在化しています。
こうした課題に対応するため、「サステナブル・ツーリズム(持続可能な観光)」が世界的に注目されています。これは、観光による経済的利益を享受しつつ、環境・社会・文化への悪影響を最小限に抑える観光のあり方を指します。
消費者の意識変化と市場の要請
近年、旅行者の意識も大きく変化しています。Booking.comの2023年調査では、81%の旅行者が「今後1年以内に最低1回はサステナブルな宿泊施設に泊まりたい」と回答、さらに74%が「旅行会社に持続可能な選択肢を提供してほしい」と回答しています。
このような意識の高まりは、観光事業者にとって無視できない潮流です。大手旅行会社やOTA(オンライン旅行代理店:Online Travel Agent)では、持続可能性に配慮した施設やツアーを優先的に紹介する動きが加速しており、認証取得は競争力の源泉となりつつあります。
GSTC認証とは
GSTC(グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会:Global Sustainable Tourism Council)は、持続可能な観光の国際基準を策定・管理する非営利団体です。国際連合環境計画(UNEP:United Nations Environment Programme)や世界観光機関(UN Tourism)などが設立を支援しており、世界中の観光事業者が参照する「共通言語」としての役割を果たしています。
GSTC Industry認証は、ホテルを含む宿泊施設全般やツアーオペレーターなどの観光事業者が、環境・社会・文化・経済の4側面において持続可能性を実践していることを、第三者機関が審査・認証する制度です。ビューローベリタスジャパンは、GSTCに認定された認証機関として、審査・認証を行っています。
認証基準の4つの柱と実践内容
GSTC認証は、以下の4つの柱に基づいて構成されています。
1. 持続可能なマネジメントの実践(セクションA)
- サステナビリティマネジメントシステムの構築(PDCAサイクル)
- 法令遵守(消防法、労働法、食品衛生法など)
- スタッフ教育と役割明確化
- 顧客満足度の管理と是正措置
- 正確なプロモーションと情報提供
- 建築物およびインフラ整備の持続可能性の確保
- 土地・水の利用権、資産の取得に際しての地域の権利や自由意志の遵守
- 住民の権利を守り観光地域づくり法人(DMO:Destination Management/Marketing Organization)との連携
2. 社会経済的便益の最大化と負の影響の最小化(セクションB)
- 地域のインフラ整備と地域社会開発への支援
- 地域雇用の創出と昇進機会の提供
- 地元企業からの調達(食材、アメニティ、サービス)
- 地元起業家との連携と販売機会の提供
- 搾取・差別・ハラスメントの防止
- 労働者の権利保護と生活賃金の保証
- 地域住民の生活インフラへの配慮
3. 文化遺産への便益の最大化と負の影響の最小化(セクションC)
- 地域文化の尊重と本物の体験提供
- 文化遺産の保護活動への貢献
- 知的財産権の尊重
- 考古学的遺物の適切な取り扱い
4. 環境への便益の最大化と負の影響の最小化(セクションD)
- 環境に配慮した購入、効率的購入
- エネルギー・水の効率的利用と削減
- クリーンな交通・輸送手段の利用
- 廃水・廃棄物管理とリサイクル
- 有害物質の使用制限と汚染の最小化
- 自然地域・生物多様性の保全と外来種の管理
- 野生生物との接触管理と動物福祉の確保
- GHG排出量の測定と削減(カーボンオフセット)
事例:ホテルとツアーオペレーターの取り組み
■ホテル
ある地方の宿泊施設では、地元食材を使った料理の提供、エコ清掃の導入、再生可能エネルギーの活用などを通じて、環境負荷を軽減しながら地域経済にも貢献しています。また、地域の観光協会と連携し、文化体験イベントを開催することで、地域文化の継承にも寄与しています。
■ツアーオペレーター
あるツアー会社では、訪問先の文化行事や自然環境を尊重し、無理な観光体験の提供を避ける方針を徹底。野生動物との接触を最小限に抑え、地域住民との協議を通じてツアー内容を調整するなど、持続可能性を重視した運営を行っています。
認証取得のメリット
GSTC認証を取得することで、以下のようなメリットが得られます。
- 市場アクセスの拡大・・・大手旅行会社やOTAでの優先表示
- ブランド価値の向上・・・グリーンウォッシュではない信頼性のある証明
- コスト削減と業務効率化・・・エネルギー・水・廃棄物の管理改善
- リスク管理の強化・・・法令遵守、危機管理、地域との関係構築
認証取得のステップ
- 自己評価・・・GSTC基準と自社の現状のギャップ分析
- マネジメントシステムの構築・・・社内体制の整備と文書化
- 認証機関の選定と審査申請・・・ビューローベリタスなど認定機関への相談
- 審査対応・・・現地審査またはリモート審査の実施
- 認証取得と継続的改善・・・取得後もPDCAによる改善を継続
まとめ:観光産業の未来を守るために
持続可能な観光は、地域社会、環境、文化、そして観光事業者自身の未来を守るための重要な取り組みです。GSTC認証は、その実践を客観的に証明する有効な手段であり、国際的な信頼を得るための鍵となります。
ビューローベリタスジャパンでは、認証取得に向けた支援を提供しています。観光産業の持続可能な発展のために、今こそ行動を起こす時です。
システム認証事業本部
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GSTC認証:サステナブルツーリズムの国際規格