Image
カバー画像(日本酒)

CASE STUDY:大関株式会社(FSSC22000)

FSSC22000 認証を味方に「蔵元力」をあげる

大関株式会社(兵庫県西宮市)

大関株式会社(兵庫県西宮市)

■認証取得の機運

日本酒製造大手メーカー「大関株式会社」

創業313年を迎える日本酒製造大手メーカー「大関株式会社」が食品安全の国際規格FSSC22000 を取得したのは2015年10月のことだ。

食肉偽装事件(2007年)、中国製毒入り餃子事件(2008年)など、食品をめぐる重大事件を背景に、国民の「安全・安心」への関心が高まっていた。さらに2013年に発生した国内で製造された冷凍食品の農薬混入事件により、食品製造会社でフードディフェンスの取り組み強化の気運が一気に高まり、同社でもこの認証取得を求める声が上がっていた。

日本酒製造大手メーカー「大関株式会社」の甘酒の画像
2003年より、HACCPの考え方を取り入れたマル総の認証を受けていた甘酒。 この認証の取り組みと米国FDAから査察の可能性が考えられたことがFSSC22000の取得のきっかけの一つとなった。

また、同社は1979年に米国カリフォルニアに、清酒メーカーとしては初めて現地法人を設立していたが、2011年に米国食品安全強化法が制定され、日本でも、米国に輸出される主として伝統食品の製造会社にアメリカ食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)の査察が行われるという情報がもたらされた。当時、同社は甘酒の製造に関して業界初となる総合衛生管理製造過程の承認制度の認証(通称:マル総)を取得していたが、その仕組みを清酒や酒粕の製造に導入し、FDAの査察に十分な対処ができるようになることも考慮して、食品安全の国際的な規格であるFSSC22000認証を取得することを決めた。

■認証機関を選んだ3つのポイント

同社のFSSC22000認証取得への取り組みは、HACCPの研修への参加メンバーがFSSCの情報を集めることからスタートした。さらにコンサルタントにも相談をかけた。その結果、いくつかの認証機関が候補に挙がった。
そのなかから同社が最終的にビューローベリタスを選んだ理由は大きく3つあるという。同社執行役員生産副本部長の絹見昌也氏は、それについてこのように言う。

「FSSC22000を取得するためには、現状を改善するための取り組みをしないといけませんが、その改善点に関する認証機関の提案を見ると大きく2タイプに分かれました。一つは設備や施設などハードの改修・改善を重要視した提案。もう一つは仕組みや意識のソフト面の改善に重きを置いた提案です。弊社の場合は後者の提案に魅力を感じました。もちろんかかる費用の問題もありましたが、後者は単に安全性の精度を高めるだけでなく社風や社員のモチベーションを高めることにも繋がると感じたからです」。

「建屋が多い酒造会社において、前述のハードの改修に重きを置いた提案では建屋ごとに分けて取得せざるを得ず、手間も費用もとても大変ですが、ソフト面を重視すれば、認証サイトは会社1つの方が好ましいということになります。これが2つ目の理由です。」

「3つ目は、今後の展開を考えるとグローバルに対応できる認証機関が望ましかったことです」

「これら3つの要件をトータルに満たしていたのがビューローベリタスでした」。

 

■酒造の特殊性と規格の汎用性の融合

FSSC22000認証を取得し、運用を開始した同社にとって課題になったのは、「昔ながらの良さを持つ酒づくり」を公明性と合理性を大事にする規格に従って運用することだった。酒造に関するノウハウやコツを記録することは簡単ではないし、旨い酒を造るノウハウが衛生的な問題となりうる場合がある。たとえば『冬の寒風を地窓から蔵に入れる』は、旨い酒を造るノウハウであるが、防虫などの衛生面では規格にそぐわないのだ。

しかし同社では、以前より酒蔵も食品工場の一つという考えのもと酒造りに取り組んでおり、「現代に合わせた進化が求められる」という方針に異を唱える風潮はなく、現場が協力的だったことは、運用推進の追い風になった。また昔から「掃除半分」といわれて来た酒造りの現場には、清掃や消毒などに関する作業標準は先輩から後輩へと伝えられていた。

つまり「現場がすでにOJTでやっていたことを、整理して文書化することで衛生を担保できる」という理想的なマニュアル作りができた。

 

■審査を教育の機会に活用する

もう一つ、同社が大事にしているのは、「審査を社員教育の機会として活用する」ことだ。
審査時に積極的に質問し、回答を得て、それを知識にする。それを繰り返してレベルアップを図ると同時に、審査員には受ける質問や回答した時の反応で進歩の具合を計り、次の課題を察知してもらうようにしている。

また審査時の指摘や追加要求事項については、それが改善されているかどうかを該当する部署だけでなく、関連する部署も含めて内部監査でしっかりチェックし、同じ指摘を何度も受けることなく、意識や行動が先に進んでいるかどうかを重要視している。

「具体的にはこのようなことを心掛けて、審査を教育機会としても活用できるよう図っているのですが、いちばん大事なことは、審査員の指摘を受けた時に、なぜそういう指摘を受けたかを説明して、現場全員がそれを理解していることだと思います」(品質保証部 兼田光俊部長)。

 

■課題の解決と未来のものづくりに向けて

大関株式会社の日本酒「純米酒 #J」と「創家大坂屋 純米大吟醸」の画像
有機米を使用し、有機JAS認証を日本酒で最初に取得した「純米酒 #J」、創醸310周年を機に創醸精神をあらためて想起し、酒造りを始めた1711年当時の屋号”大坂屋”を冠した「創家大坂屋 純米大吟醸」。同社が新たな「蔵元力」の発揮に挑戦するため新機軸のブランドを開発した。

こうしたきめ細やかな運用を続けている同社だが、そのうえで現在課題になっている点を挙げてもらった。

  1. お客様からのクレームにつながるミスを少なくすることはできているが、社内トラブル(内部でとどまったミス)はまだある。それも撲滅させる仕組みを作る。
  2. 子会社もFSSC22000のスキームで統括管理する。
  3. 製造だけでなく開発(研究所を含む)にもFSSC22000を適用・活用する。
  4. OEMの委託先にもFSSC22000を活かす。

このように多角的にFSSC22000を活用することで、関わる人たち全員の意識を高めていくと同時に、FSSC22000のパフォーマンスを上げたいと絹見氏は言う。

現在、酒造業界は決して順風満帆ではない。清酒の消費量が落ちるなかで、新商品・新機軸の開発が望まれており、そのためにもまずは品質面での安全を担保する必要がある。

歴史ある酒造にも、そして未来のものづくりにもFSSC22000を活用すること。それを絹見氏は「FSSC22000を味方に『蔵元力(くらもとりょく)』をあげる」と表現した。まさに言い得て妙だ。

 

大関株式会社 絹見昌也生産副本部長(左)と兼田光俊品質保証部部長のインタビュー画像

絹見昌也生産副本部長(左)と兼田光俊品質保証部部長

2024年4月3日取材

 

【お問い合わせ】

ビューローベリタスジャパン(株) システム認証事業本部
TEL:045-651-4784 神奈川県横浜市中区日本大通18番地 KRCビル8F
ウェブサイト
お問い合わせフォーム

【ビューローベリタスのサービス】

FSSC22000(食品安全システム)