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ISO 9001:2026発行速報と改訂ポイント解説
2026-09-18
品質マネジメントシステムの国際規格であるISO 9001の第6版ISO 9001:2026が、2026年9月16日に発行されました。
今回の改訂では、箇条4から箇条10までの基本構造やプロセスアプローチ、PDCAサイクルなど、2015年版の基本的な枠組みが維持されています。
その一方で、品質文化、リスクと機会、変更管理など、品質マネジメントシステムを実際の組織運営に結び付けるための要求が明確化・強化されました。
本記事では、ISO 9001:2026の主な改訂ポイントと、移行に向けて確認すべき事項を解説します。
1.今回の改訂の全体像
今回の改訂は、主に次の3つに整理できます。
- 維持された事項
プロセスアプローチ、PDCAサイクル、箇条4から箇条10までの基本構造 - 明確化された事項
リスクと機会の区分、内部監査の目的、マネジメントレビューへのインプット、要求事項の意図 - 強化された事項
品質文化および倫理的行動、変更の計画、事業中断への対応、組織の知識
既存の品質マネジメントシステムが有効に機能している組織では、品質マニュアルや手順書を全面的に作り直す必要性は限定的です。
まずは2015年版との差分を確認し、自社の仕組みへの影響を特定することが重要です。
2.主な改訂ポイント
➀品質文化および倫理的行動
ISO 9001:2026では、トップマネジメントに対し、品質文化および倫理的行動を促進することが明確に求められています。また、組織の管理下で働く人々の認識に関する要求にも反映されています。
品質文化は、品質方針や手順書を整備することだけで形成されるものではありません。経営層や管理者の意思決定、従業員の日常的な行動、問題発生時の報告、部門間の情報共有などを通じて形成されます。
組織は、次のような点を確認することが考えられます。
- 品質上の問題や懸念を速やかに報告できるか
- 納期やコストと品質が相反した場合、適切な判断が行われているか
- 経営層や管理者が、品質方針と整合した行動を示しているか
- 不適合や苦情が隠されず、改善につながっているか
企業理念、行動規範、コンプライアンス方針、教育制度などが整備されている場合、新しい制度を一律に導入する必要はありません。既存の仕組みが品質マネジメントシステムと結び付き、実際の行動に反映されているかを確認することが重要です。
②リスクと機会の明確な区分
ISO 9001:2026では、リスクと機会を区分して取り扱うことが明確になりました。
リスクへの対応は、望ましくない結果を防止または低減することを目的とします。一方、機会への対応は、顧客満足の向上、新しい製品・サービスの開発、業務プロセスの改善など、望ましい結果を実現することを目的とします。
組織は、リスクと機会を決定するだけでなく、新たにそれぞれを分析し、評価しなければならないとなり、必要な取り組みを品質マネジメントシステムのプロセスに組み込んだうえで、有効性を評価する必要があります。
これまでリスク管理を中心に運用してきた組織では、改善や成長につながる機会が明確に特定され、品質目標や事業計画に反映されているかを確認することが重要です。
③変更の計画の強化
ISO 9001:2026では、意図した結果を達成するように変更が効果的に実施されることを確実にするため、計画から実施後の確認まで、品質マネジメントシステムに影響する変更を一貫して管理することがより明確になりました。
品質マネジメントシステムに影響を与える可能性がある変更には、次のようなものがあります。
- 新製品・新サービスの導入
- 製造工程や設備の変更
- ITシステムやAIの導入
- 外部提供者や委託先の変更
- 組織再編や責任・権限の変更
- 事業所の移転や統廃合
これらの変更を計画する際には、目的、起こり得る結果、品質マネジメントシステムへの影響、必要な資源・情報、責任者、関係者への連絡方法などを確認します。
また、変更後に意図した結果が得られたか、新たな不適合やリスクが発生していないかを評価し、結果をレビューすることが重要です。
品質マネジメントシステムの変更管理は、事前申請や承認だけで完了するものではありません。変更後の有効性確認までを含む一連のプロセスとして運用する必要があります。
3.その他の確認すべきポイント
利害関係者の要求事項
組織は、品質マネジメントシステムに関連する利害関係者とその要求事項を把握するだけでなく、品質マネジメントシステムを通じて取り組むものを明確にすることが箇条4.2に明記されました。
利害関係者の一覧を作成するだけでなく、どの要求事項を品質マネジメントシステムに反映するのか、その判断根拠を説明できる状態にすることが重要です。
組織の知識
組織の知識については、必要な知識を保有するだけでなく、業務の中で適用・共有できる状態にすることが重視されています。また、注記で具体例が言及されました。
熟練者の退職、担当者の異動、外部委託、技術変更などによって重要な知識が失われないよう、知識の維持、共有および移転の方法を確認する必要があります。
事業中断時の対応
「リスクへの取り組み」の注記に事業継続計画(BCP)が言及され、災害、供給停止、IT障害、設備停止などの事業中断が発生した場合に、適合する製品・サービスを提供できなくなるリスクへの考慮が明確になりました。
「顧客とのコミュニケーション」に、製品またはサービス提供の中断に関連するあらゆる情報を含めることが明確化されました。組織は、代替手段や復旧方法だけでなく、顧客への情報提供、事業再開時の製品・サービスの適合確認についても整理する必要があります。
これは、全ての組織に特定の事業継続マネジメントシステムの導入を求めるものではありません。自社の事業と品質への影響に応じた対応が求められます。
内部監査とマネジメントレビュー
組織が内部監査プログラムで示す事項として「監査目的」が追加されました。内部監査では、各監査について、何を確認するための監査なのかという目的を明確にすることが求められます。
また、マネジメントレビューでは、「考慮して」から「含めなければならない」へ表現が変更されました。規格に定められたインプット項目を確実に含め、利害関係者のニーズや期待の変化などを踏まえて、継続的改善、品質マネジメントシステムの変更、必要な資源に関する意思決定につなげることが重要です。
4.移行に向けて優先すべき対応
ISO 9001:2026への移行に向けて、まずは次の事項から確認することが有効です。以下の優先度は本記事での対応の目安であり、規格が定める順位ではありません。実際の優先順位は、自社のリスクと差分に応じて決定してください。
優先度:高
- 品質文化および倫理的行動に関する現状を確認する
- リスクと機会の決定、分析、評価方法を見直す
- 変更後の有効性確認を含め、変更管理を見直す
- 品質マネジメントシステムで取り組む利害関係者要求事項を決定する
優先度:中
- 事業中断時の品質確保と顧客への情報提供を確認する
- 組織の知識を適用・共有できる状態にする
- 内部監査の目的を明確にする
- マネジメントレビューのインプットと意思決定を見直す
既存の仕組みが有効に機能している場合、新しい文書や帳票を一律に追加する必要はありません。規格との差分を確認し、自社に必要な対応を選択することが重要です。
5.まとめ
ISO 9001:2026は、ISO 9001:2015の基本的な枠組みを維持しながら、品質マネジメントシステムを実際の組織運営により深く結び付けるための改訂です。
特に重要な改訂ポイントは、次のとおりです。
- 品質文化および倫理的行動の促進
- リスクと機会の明確な区分
- 変更後の評価を含む変更管理
- 利害関係者の要求事項の取り扱いの明確化
- 組織の知識の適用・共有
- 事業中断時の品質確保と顧客コミュニケーション
- 内部監査およびマネジメントレビューの強化
今回の移行では、文書の追加や形式的な変更を先行させるのではなく、既存の品質マネジメントシステムが有効に機能しているかを確認することが重要です。
6.ISO 9001:2026への移行
ISO 9001:2015の認証組織には、ISO 14001:2026と同様に、ISO 9001:2026への3年間の移行期間が設けられる見込みです。
移行期限、移行審査の実施方法、追加審査工数、認証書の取り扱いなどの詳細については、正式な国際移行方針および認定機関の決定に基づき、当社の認証組織へ順次ご案内します。
ビューローベリタスジャパンでは、ISO 9001:2026の改訂内容を解説するセミナーや、移行対応に関するトレーニングを順次提供し、各企業の円滑な移行を支援してまいります。
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