ビルオーナーが実施すべき点検とは
~法定点検と任意点検を解説~
ビルのオーナーや管理者には、建物を安全な状態に保つ義務があります。
ビルを適切に管理していない場合、風雨や日照、自然災害などにより建物が徐々に劣化してしまいます。安全性を維持・向上させるために定期的に点検を行ない、対応していくことが重要です。
ビルで実施すべき点検は、法定点検と任意点検に大別されます。
本記事では、ビルに必要な法定点検と任意点検の内容をそれぞれ詳しく解説しますので、ビルを所有または管理している方はぜひ参考にしてください。
ビル点検の重要性
ビルの点検は、建物利用者の安全を守り、重大な事故や災害を未然に防ぐために欠かせない作業です。理由は主に2点があげられます。
①法令順守
多くの人が利用する建築物は、その安全性を確保するため、法律によりさまざまな点検および維持管理が義務付けられています。適切な時期に検査を行わない場合は所有者への罰則が規定されています。また適切な検査が実施されていない場合は当該検査員への罰則が制定されました。
②長期寿命化
建物を保守し、寿命を延長するという点でも点検は重要です。点検で修繕が必要な箇所を早期に発見することで、修繕範囲や修繕費を最小限に抑えられます。
上記2点を元に適切な検査が行われ、ビルの安全性が確保できていれば、社会的・技術的にビルのテナントや利用者の安全を守ります。
点検には、法律で義務付けられている法定点検と、任意点検があります。
ビルの法定点検
ビルの法定点検の概要を、12条点検(建築基準法第12条定期報告)と、その他の法定点検に分けて解説します。
◇12条点検(建築基準法第12条定期報告)
12条点検は、建築基準法第12条に基づく点検・報告制度です。国や地方自治体が指定する建築物が点検の対象となっています。指定された建築物の所有者または管理者は、一級・二級建築士や特定建築物調査員などに依頼して状況を調査し、特定行政庁に報告する義務があります。

12条点検は、以下の4つの定期調査・検査で構成されています。
| 定期調査・検査 | 調査・検査対象 |
|---|---|
| 特定建築物定期調査 | ・地盤および敷地 ・建築物の外部 ・屋上および屋根 ・建築物の内部 ・避難施設等 |
| 防火設備定期検査 | ・防火扉 ・防火シャッター ・耐火クロススクリーン ・ドレンチャーその他の水幕を形成する防火設備 |
| 建築設備定期検査 | ・換気設備 ・排煙設備 ・非常用の照明装置 ・給水設備 ・排水設備 |
| 昇降機等定期検査 | ・エレベーター ・エスカレーター ・小荷物専用昇降機 ・遊戯施設等 |
上記のほかに特定建築物調査では、外壁の全面打診等調査が義務化されています。
外壁全面打診等調査は10年に一度検査を要しており、別途検査が必要となります。
なお、12条点検の対象建物や検査内容は過去の事故や災害から改正されています。直近では2023(令和5)年2月に定期調査・報告の対象が、2024(令和6)年6月および2025(令和7)年1月には、定期調査報告における点検の項目、方法および結果の判定基準等が改正されており、改正内容に沿った適切な検査が必要です。建築基準法改正の動向にも注目しながら、確実に点検を実施しましょう。
関連記事:【2025年最新版】定期調査報告(12条点検)法改正のポイントを全解説
◇その他の法定点検
ビルで実施するその他の法定点検には、以下のようなものがあります。概要を知り、点検に備えましょう。
| 根拠法令 | 点検・調査名称/調査・点検概要 |
|---|---|
| 消防法 | 【防災管理点検/防火対象物点検】 防災管理者を選任しているか、避難階段に障害となるものが置かれていないか、避難訓練が実施されているかなどを定期的に点検 【消防用設備等点検】 消防用設備が適切に配置されているか、損傷の有無などを定期的に点検 水道法 【簡易専用水道検査】 水槽等の給水設備やその周辺の管理状態、給水栓における水質などを検査 |
| 建築物衛生法 | 【空気環境測定】 特定建築物において、浮遊粉じんの量や一酸化炭素の含有率などを定期的に測定 |
| 建築物衛生法 フロン排出抑制法 | 【飲料水水質検査】 人の飲用、炊事用、浴用そのほか人の生活用のために水を供給する場合、飲用水に細菌や大腸菌などが含まれていないか定期的に検査 |
| 【ねずみ等防除】 ねずみ等の発生場所・生息場所・侵入経路・被害状況について定期的に調査 | |
| 【空調設備点検】 業務用冷凍空調機器について、機器の状態を定期的に点検 | |
| 電気事業法 | 【電気保安点検(自家用電気工作物法定点検)】 受変電設備や負荷設備など、ビルの自家用電気工作物について定期的に点検を実施 |
ビルの任意点検
ビルの任意点検には、劣化診断調査、日常点検、遵法性調査等があります。
法定点検と異なり、実施する義務はなく、点検結果を報告する必要はありませんが、これらの点検を定期的に実施することで日常的な不具合や経年による劣化の進行状況、テナント変更時の適法性等を確認することができ、ビルの安全性がより一層高まります。積極的に任意点検を実施し、修繕すべき箇所がないかチェックしておきましょう。
◇劣化診断調査
劣化診断調査では、建物全体の状態を調査します。調査対象部位と調査項目の例は以下のとおりです。建物全体を幅広く調査するため、建物の現状を把握できます。
劣化診断調査の対象部位と調査項目の一般的な例
| 部位 | 調査項目 |
|---|---|
| 躯体 | ひび割れ、き裂、爆裂、欠損、土台・柱の腐食、コンクリート中性化、コンクリート圧縮強度、鉄骨の錆 |
| 屋上・屋根防水 | 屋上・塔屋・ルーフバルコニーの防水層、塗装の劣化度 |
| 防水処理 | 外部階段・廊下・バルコニー等の防水機能 |
| 外部塗装 | 一般外壁や天井の浮き・剥離・割れ・欠損、付着力 |
| 鉄部塗装 | 屋上・共用廊下・バルコニーなどの錆 |
| シーリング | 外壁・サッシ周り・タイル打継目地 |
| 内部仕上げ | 床・壁・天井 |
| 共用設備 | エントランス・廊下・外部階段・バルコニーなどの天井・壁・床 |
| 外構 | 塗装・フェンス・駐輪場・ごみ置場 |
| 電気設備 | 幹線、非常設備、コンセント |
| 給排水衛生設備 | 給水・排水・消火設備、換気設備、衛生設備 |
劣化診断調査で建物全体の状態をチェックすることで、修繕の優先順位を正しく判断できるようになり、建物の安全性を確保できます。また、調査結果は修繕計画立案に役立つため、早期の計画修繕実行にもつながり、ひいてはライフサイクルコストの低減や資産価値の維持にもつながるでしょう。
劣化診断調査は、修繕・改修計画立案のために建物の状況を把握したい、修繕や更新の時期について診断をもとに検討したい方に特におすすめの調査です。
◇遵法性調査
遵法性調査は、建築基準法などの法令に既存建築物が適合しているかどうかを調べることです。調査を実施することで、現状の適法性を把握し、法的なリスクを明確化できます。
建築物のテナント変更による用途変更や既存不適格調査を計画している方、増改築を検討している方、コンプライアンスを徹底して信頼性を高めたい方に、遵法性調査はおすすめです。
◇日常点検
日常点検は、建物が健全・安全な状態にあるか、日頃から確認することです。日常点検を実施することで、不具合の早期発見と改善につながります。
点検対象は、日常的に使用している設備や建物全体の目視検査等、普段の使用範囲にて不具合がないかを対象とします。建物の特徴に合わせて適宜点検項目を調整して点検に臨みましょう。チェックシートを作成しておくと、点検の抜け漏れがなくなります。
まとめ
ビルの点検には法定点検と任意点検があり、点検を実施することでビルの安全性が保たれます。必要な点検を必ず実施できるよう、いつどのように点検を実施するのか計画を立てておきましょう。
ビューローベリタスでは、日本全国に検査員を配置しており、既存建物の法定点検をサポートしています。
点検・調査に関するご相談等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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