Case Study:丸住製紙株式会社(ISCC CORSIA)
航空燃料の製造に企業の未来を託し、
パルプ工場として世界初のISCC-CORSIA認証を取得

丸住製紙株式会社(愛媛県四国中央市)
木材チップから航空燃料を
愛媛県の瀬戸内海沿岸部には日本の製紙会社が集中する。
そのなかのひとつ、丸住製紙は「川之江」という町に大きな工場を置き、約500人の従業員が新聞・雑誌などのグラフィック用紙やペーパータオルやウェットティッシュといった衛生用紙を製造している。
同社は、2024年8月に、CO2削減のためのジェット燃料SAF(Sustainable Aviation Fuel)を製造する原料になるパルプを生産する工場として、世界で初めて* ISCC CORSIA(International Sustainability & Carbon Certification / Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation: 国際航空のためのカーボン・オフセットおよび削減スキーム)認証を取得した。
* パルプ工場として登録された世界初の認証かつ、SAF製造に関わる工程の一部として日本初の生産拠点認証:
SCSであるISCC(International Sustainability and Carbon Certification)とRSB(Roundtable on Sustainable Biomaterials)を管理する団体のホームページの情報による。(2024年8月20日現在)

SAFおよびISCC-CORSIA認証とは何なのか。そして同社がこの認証を取得してSAF製造の技術開発事業に乗り出したのはなぜなのか。まずはそのあたりから紹介する。
SAFは、廃棄物やバイオマス燃料から作られる持続可能な航空燃料のことで、航空業界が2050年に課せられているカーボンニュートラルを達成するためにはSAFの利用が必要不可欠であるとされている。
国内の航空事業においては2030年に本邦エアラインが使用する10%の航空燃料をSAFに置き換えることを目標にしており、その場合の需要量は年間171万KLと見込まれているが、現在はその6分の1の供給量しか目途が立っていない状態だ。

技術開発課長 吉原 進市氏
必要な需要量を賄うための原料確保、製造技術の確立などが喫緊の課題となっており、日本においてはNEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organization︓国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構)が、2つの民間会社とタイアップして、SAFをパルプから一貫生産するため、そしてそのサプライチェーンを構築するための研究と実証に取り組んでいる。
丸住製紙はNEDOが採択した2社からの委託を受けて、木材製造販売会社の製材工場から排出される製材残渣を利用し、それを自社プラントでクラフトパルプを生産までの工程について協力している。SAFの原料となるパルプは、CORSIA認証を取得した工場で製造している(パルプがCORSIA認証に適合している)ことがCoC(Chain of Custody)認証で求められるため、パルプ工場としては世界初となるCORSIA認証の取得を目指したのである。
従来ビジネスへの危機感

池崎 克氏
同社が日本の航空業界の未来を左右するSAFの開発・製造という重要な案件に関わることになったのは、当時、他の製紙会社が積極的に取り組んでいなかったパルプからのSAF製造というプロジェクトへの参加を同社が思い切って引き受けたからだが、その背景にあったのは製紙業の未来に対する危機感だった。
今まで同社の売上のほとんどを占めてきた新聞や雑誌などのグラフィック用紙は、近年活字離れや電子媒体の普及、インターネットの台頭などにより急激に需要が減っており、その傾向は今後ますます加速すると思われる。紙の別分野として衛生用紙に新規参入しているが、こちらの分野は先発の製紙会社が多く市場競争が激しい。衛生はウェット中心に海外での生産・販売も考慮していたので、衛生用品用紙で大きな市場の構築には相当の時間が要すると考えていた。

後藤 民二氏
そこで同社は、NEDOが主宰するSAFの開発事業に参加することにし、他社がまだ着手していない「木質系バイオマス(木材チップ)を使ったSAF製造」によるパルプの新しい用途の開拓へ挑戦することを決めたのだった。
最短距離で認証取得
この事業で同社が担当するのは、製材残渣としての木材チップを調達し、それを自社プラントでクラフトパルプにするまでの工程であり、認証もこの範囲で取得した。この取得に必要な工程と同社の組み立て方を見てみよう。

2024年11月6日開催「ISCC認証(国際持続可能性カーボン認証)の概要と事例紹介」セミナー資料より
2023年1月にCORSIA認証を取得することを決めた同社は、このNEDO事業の採択企業とともに2023年6月にまずはGHG(Greenhouse Gas︓温室効果ガス)計算方法の確立から取り組みを開始した。その後数々の工程を踏んで、ビューローベリタスジャパンによる外部審査を受けたのは、取組開始からちょうど1年後の2024年6月20日。そして審査による指摘対応を経て認証取得を果たしたのはそれから2か月後の8月20日。世界に前例がない認証取得としては異例のスピード取得だった。
ちなみに、今回第三者認証機関としてビューローベリタスジャパンが選ばれた理由は、ビューローベリタスジャパンが双方の意図や意見が日本語で伝え合える日本人審査員を有したことが大きい。世界初の認証となる今回のケースでは、細部にわたる意思疎通や、指摘に間違いない理解が不可欠であり、それを母国語である日本語で行えることは必要かつ重要なことであった。

2024年11月6日開催「ISCC認証(国際持続可能性カーボン認証)の概要と事例紹介」セミナー資料より
スピーディな取得の背景には、主に2つの要因があった。
一つ目は同社のISO14001やFSC®認証取得の歴史が長く、従業員が「認証」の考え方と運営の仕方に十分な経験と知見を持っていたこと。
そしてもう一つは、NEDO事業採択企業と、審査前の資料の準備、要求事項の解釈などについて繰り返し相談し、認証取得に向けて取り組んだこと。

解説が展示されている
この2つの要因があいまって、認証取得までの複雑な工程は、難しいながらも順々にこなされ、最短の時間で取得に必要な体制と条件が整えられたといえるだろう。
現在同社大江工場内ではSAF製造のための設備(工場)を造っている最中であり、今後、試運転、本格稼働と進む。この実証事業を終えた後、事業化となるがまだ先は長い。
しかし、従来の印刷用紙ビジネスの衰退を考えると、長い道のりであっても一歩を踏み出したことに意義があるだろう。
CORSIA認証のパルプがその付加価値をもって、またCORSIA認証がGHG削減の面から取引の必須条件となる可能性も含んで、大きな武器になり、同社の未来を支えることを願いたい。
(2024年10月7日取材)
FSC License code:FSC® A000504
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TEL:045-274-7852 神奈川県横浜市西区みなとみらい4丁目6-2
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ISCC PLUS/EU/CORSIA認証(国際持続可能性カーボン認証)
