PFASに関する国内外の動向2023年
PFASについて
PFAS(パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質:per-and polyfluoroalkyl substances)はフッ素系化学物質の総称で、PFOA(ペルフルオロオクタン酸:Perfluorooctanoic Acid)、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸:Perfluorooctane Sulfonate)などの物質が含まれます。1940年代から1950年代に、その特性をいかし、ノンスティック加工や錆防止加工の商品に使用されるようになりました。
PFOAとPFOSは、消火用発砲剤やアウトドア用繊維製品の加工などにも広く使用されています。しかし1970年代後半になると、PFOAとPFOSは人への健康被害が認識され始め、ほ乳動物が多量に摂取した場合、生殖毒性や発がん性などの問題を引き起こすことが知られるようになりました。
PFAS化合物の他の多くの「バージョン」(推定数千)が現在も使用されており、PFOAおよびPFOSの一般的な代替品として機能しています。
PFASは非常に安定しており、自然環境では容易に分解しないため土壌や水に留まります。また、動物の体内に生物蓄積する可能性(「持続性」)があると認識されています。
<主な使用製品および用途>
上着、繊維、調理器具、食品包装、家具、敷物、カーペット、電気製品(コード)、屋外繊維および関連製品、包装、接着剤、マイクロチップ、化粧品など。ほとんどの場合、仕上げコーティングスプレー剤として適用されます。
米国
2023年10月11日にPFASの報告に関する最終規則が制定され、連邦官報に掲載されました。2023年11月13日に発行され、規則で特定された化学物質を商業目的で製造した者に適用されます。
この規則にはPFAS を含む輸入品が含まれ、製品カテゴリーは40 CFR 704.11で定義、さまざまな消費者製品が含まれます。
米国環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)が発行したこの報告に関する最終規則には物品に関する除外規定がなく、報告の義務は2011年にさかのぼって適用されます。これによりコーティングが物品の内面または外面に塗布されているか、硬化または化学処理されているかにかかわらず、物品の表面コーティングを含むLCPFAC(40 CFR 721.10536の表1および表2)すべてが2020年7月のルール改正時に復活した重要新規利用規則(SNUR:Significant New Use Rule)によってカバーされると考えられます。
また、消費者製品安全委員会(CPSC:U.S. Consumer Product Safety Commission) は、主に PFASに関連する次の情報を求めるパブリックコメント要請書を発表しました。
- 消費者製品における使用または存在の可能性
- 潜在的に高度に曝露された集団に関する情報を含む、消費者製品の使用に関連する潜在的な人体曝露
- 潜在的な悪影響 毒物学的データソースから情報を得た人間の健康への影響
パブリックコメントの締め切りは 2023年11月20日です。
州 | 製品 | 法案 | 施行予定 | 参照先 |
---|---|---|---|---|
ワシントン州 | 消火活動用個人防具他、家庭用品、包装材 | PFAS規制法 | 2025年12月1日 | PFAS規制法 |
メリーランド州 | ラグやカーペット・食品包材・消火用発砲剤 | HB 275(SB 273) | 2024年1月1日以降順次 | HB 275 (SB 273) |
ニューヨーク州 | アパレル製品 カーペット | 修正法案S01322 A09279A法案 | 2025年1月1日 2024年12月31日 | S01322 A09279A |
メイン州 | カーペットおよび繊維製品 | Public Law c. 477 | 2025年1月1日 | Public Law c. 477 |
ミネソタ州 | 小物をふくめたアパレル製品、カーペット | HF2310 | 2025年1月1日以降順次~2031年末まで | HF2310 |
カリフォルニア州 | すべての繊維製品 | PFASテキスタイル法 | 2025年1月1日以降順次 | AB1817 |
ロードアイランド州 | 包装材 | H 7438 | 2024年1月1日以降順次 | H 7438 |
EU
2023年2月7日、欧州化学品庁(ECHA:European Chemicals Agency)はPFASの規制を更に強化する提案書を発表しました。このなかには物質単体の基準値に加えて全フッ化物に関する規制条項が含まれます。
欧州化学品庁(ECHA)は、すでにREACH規則のもとでPFASを残留性化学物質に分類して製造、使用および上市を禁ずる提案を発表し、PFASの環境中への放出を減らそうとしてきましたが、今回の提案はPFASに基準値を具体的に設定し、規制の強化をはかる意図があります。
PFASの定義は幅広くフッ化物質全般を指しており、「1個以上の完全にフッ素化されたメチル(CF3-)またはメチレン(-CF2-)または炭素原子(結合したH/Cl/Br/Iをのぞく)を含むすべての物質」と規定されています。
提案は、規制発効から18か月後に適用され、いくつかの除外項目も提案されています。
参照:Restriction Dossier (Annex XV report)
日本
国内では、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)に基づき、2010年にPFOS、2021年にPFOAの製造、輸入は原則禁止されています。また、2020年に厚生労働省が飲料水中のPFOSとPFOAの合算値を50ng/L以下とする暫定目標値を定めています。環境省も各都道府県自治体とともに、水質調査を実施しています。
参照:
厚生労働省「PFASに対する総合戦略検討専門家会議」
環境省「PFOS、PFOAに関するQ&A集」
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消費財検査部門 坂倉 晴子