はじめに

世界的な潮流として、サプライチェーン全体で労働者の人権保護担保・可視化が求められています。特に欧米の顧客から、人権を含む管理体制の証明を求められることが多くなってきています。日本政府も2020年には「ビジネスと人権に関する行動計画」を公表、2022年には「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を公表し、企業に人権保護の責務があることを明確に示しています。日本の企業も人権体制のチェックとしての監査を含め、どのような対応が必要か、議論を始めています。

一方、CSRや倫理・人権を含む監査スキームは海外の団体が作成し管理をしている場合が多く、日本の企業にとっては言葉の壁などのコミュニケーションの問題、監査コスト、監査に取られる時間が大きいなどの面で、対応にはハードルが高くなっている現実もあります。

 

ビューローベリタスの人権監査基準の概要

ビューローベリタスは人権監査ニーズの高まりに対応して、人権に関する監査基準を開発し、数年前より人権監査サービス(HRAB)を提供しています。Human Rights Audit Base grade(人権監査ベース・グレード)は、グローバルで普及している行動規範や国内法令などをベースとした基準で、労働と安全衛生の2分野からなります。

人権のテーマには安全性が含まれています。従業員にとって、職場が安全でないことは、安心して働くことができず、人権体制が整っていないことと同義のためです。

人権監査では労働時間、賃金、差別、ハラスメント、強制労働、児童労働、応急処置、避難訓練、消火設備、保護具など多岐にわたるトピックをカバーしています。監査は書類チェック、マネジメント・従業員へのインタビューおよび現場監査で構成され、多面的に課題を炙り出すアプローチです。本記事ではグローバル基準の監査を含む現場での課題をご紹介します。

 

労働

この分野で一番多い問題は長時間労働です。グローバル基準では週60時間以内の労働というルールが課されています。長時間労働の弊害は数々の研究などでも明らかになっており、世界中で非常に大きな問題と認識されています。
ILO(International Labour Organization:国際労働機関)の労働時間に関する条約の歴史を紐解くと、100年以上この問題に取り組み続けていることが分かります。特に時間外労働については、国によっては残業代がないと生活が成り立たないという現実もあり、最低賃金の議論だけにとどまらず生活ができる賃金、生活賃金という概念にもつながっていきます。

次に外国人の権利が守られているかという視点でも課題が見えてきます。米国政府が人身取引・強制労働にあたると指摘する日本の技能実習生制度や、ローンを組み、斡旋料を払って来日する労働者など、日本の外国人労働者の問題は国際的にも問題ありと認識されています。そのほか、外国人に対するいじめ、差別やハラスメントなど、企業としては問題がないと認識していた場合でも、従業員インタビュー時に問題が露呈するということもあります。

年少者保護の問題も散見されます。日本では年少者が実際に工場で働いている例はほとんどありませんが、会社の方針・規定として法令と同じく採用年齢を15歳以上としている場合は、時間外労働、深夜労働および危険作業の禁止等の年少者保護規定が必要です。

 

安全衛生

この分野で繰り返し見られるのは緊急時の備えに関する現場の問題です。例えば、消火器や消火栓の前に大きな障害物があったり、緊急時の避難経路や非常口が障害物で塞がれていたりすることが多々あります。これは、いざ避難となった場合に避難経路上の先に進めない、非常口が開けられず外に出られないという大きな問題につながります。

避難訓練の参加率が低いという問題もよく見られます。避難訓練不参加の問題は、いざ避難となった場合に避難経路が分からない、安全な集合場所が分からず逃げられない可能性があるということです。特にここ数年はコロナ禍ということもあり、大人数での訓練実施が難しいという現実がありました。また、日本語の得意でない外国人従業員が避難方法を理解しているか、夜のシフトの従業員も避難訓練に参加しているか、といったことも監査では確認していきます。

日本国内でもメディアで報道されたような工場・事務所火災による死亡事故などが発生しています。その後の報道で、避難ドアに鍵がかけられて避難できなかった、避難訓練を実施しておらず、また防火体制も不備があり、再三当局から注意を受けていたということが明らかになりました。未然に悲劇を回避するには是正処置や訓練・予防が不可欠です。東日本大震災後から防災や避難訓練の重要性に対する意識は格段に高まりましたが、まだまだ意識や対策が足りない部分があるのも事実ではないでしょうか。

 

<確認箇所の例>

  • 避難経路・非常口
    Image
    避難経路・非常口
    しかるべき場所に避難のサインがあるか?視認性は確保されているか?避難経路は物で塞がれていないか?
  • 消火設備
    Image
    消火設備
    消火器は障害物で塞がれていないか?期限以内か?
  • 消火栓
    Image
    消火栓
    消火栓の前に障害物がないか?
  • 救急箱
    Image
    救急箱
    救急箱は適切に管理されているか?

 

最後に

自社の従業員並びにサプライチェーン上の従業員の人権の担保とその現状把握・可視化は、企業にとって非常に関心の高いトピックです。場合によっては顧客要求で人権に関する体制の証明が必要な場合もあるでしょう。

まず何から始めていいか分からない、どういったステップを踏めば効率的に人権体制の構築・強化ができるか分からないという疑問があると思います。その場合、まずビューローベリタスの人権監査(HRAB)を受けていただくことで要求事項や課題の理解が可能になります。


システム認証事業本部 川手 洋明

 

【お問い合わせ】

ビューローベリタスジャパン(株) システム認証事業本部
TEL:045-651-4784(代表) FAX:045-641-4330
ウェブサイト
お問い合わせフォーム

【ビューローベリタスのサービス】

人権監査(HRAB:HUMAN RIGHTS AUDIT BASE GRADE)