1. コロナ禍における労働安全衛生

2000年初頭から猛威を振るっている新型コロナウイルスの感染拡大は、2021年末を迎えようとしている今、収束に向かっているかに見えますが、未だ予断を許さない状況です。
ビューローベリタスは、今年の初めに認証登録顧客を対象として大規模なアンケート調査・分析を行いました。今回のようなパンデミックが蔓延する可能性を想定していた企業もありましたが、そのリスク評価・対策については不十分または十分に機能しなかったという回答が大半でした。下記はその抜粋ですが、企業は従業員の安全を一義的に考えているものの、具体的な対策は十分とはいえず、試行錯誤しながら対策を進めている実態が窺えます。

COVID-19に関するリスク評価


「COVID-19がビジネスに与えた影響~ビューローベリタス調査より抜粋」 

 

2. 新型コロナウイルス感染への法的対応

(1) 適用される法令

従業員が新型コロナウイルスに感染した場合の法的な処置はどのようになるのでしょうか。
厚生労働省によれば、「労働者が新型コロナウイルスに感染していることが確認された場合は、感染症法に基づき、都道府県知事が該当する労働者に対して就業制限や入院の勧告等を行うことができることとなります。使用者におかれましても、感染症法に基づき都道府県知事より入院の勧告を受けた労働者については、入院により就業できないことをご理解いただくとともに、都道府県知事により就業制限がかけられた労働者については、会社に就業させないようにしてください。また、発熱等の風邪症状がみられる労働者については休みやすい環境の整備にご協力をお願いします。なお、感染症法により就業制限を行う場合は、感染症法によることとして、労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業禁止の措置の対象とはしません。」「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」より抜粋)とあります。したがって、

  • 従業員が新型コロナウイルスに感染したときは、事業者が労働安全衛生法に基づき就業を禁止するのではなく、当該従業員自身が感染症法に基づき就業を禁じられることになります。
  • 労働安全衛生法が適用されるわけではないので、事業者は産業医等の意見を聞く必要もありません(あくまでも法的にはということですので、医師への相談は任意にでも行うべきと考えられます)。

 

(2)労災認定に関して

労働災害の認定に関して、厚生労働省のウェブサイトによると、下記のとおりです。

ア:医療従事者等 患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、 介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染した ことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となること。

イ:医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保 険給付の対象となること。

ウ:医療従事者等以外の労働者であって上記イ以外のもの 調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的 に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が 感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したもの と認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断すること。 この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況 等を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて判断すること。

(ア)複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務
(イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務

(厚生労働省通達「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取り扱いについて」より抜粋)

したがって、十分な蓋然性が認められれば、労災の対象となることは明白です。

労災認定された事例


 

3. 感染予防のガイドラインについて

感染予防に関する経験値が上がり、対策ノウハウも蓄積されてきたことから、各省庁もさることながら自治体や業界団体では個別に具体的な予防、対策ガイドラインを発行して感染対策を呼びかけています。一般的かつ汎用的なものとしては厚労省や経団連のガイドラインが参考になるでしょう。また、特定の業種に絞って対策する場合には業界別ガイドラインを参考にしてください。これらはいずれもウェブサイトから無償で入手できます。

その他、米国の労働省(OSHA)のガイドなども参考になります。100ページ以上にわたる詳細なガイドですが、リスク評価とその内容に応じた対策を求めており、ISO45001の考え方にも通じるものとなっています。

 

4. まとめ

新型コロナウイルスが企業活動に与えた影響は甚大なものであることは間違いありませんが、同時に災害対策に教訓を与えたともいえるのではないでしょうか。地震や洪水などの自然災害を含む予期しない事態が発生した際に、企業はいかに変化に対応し、ビジネスを想定内に復旧させ、災害が持続する状況下でも操業を持続可能なレベルに維持するかが問われ、それを克服できる組織が生き残ることになるのかもしれません。ただ、その前提は「働く人々の安全」であることを忘れてはならないと思います。

 

システム認証事業本部 水城 学


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