皆さんは自動車業界が今、「100年に1度」と言われる変革期を迎えているのをご存知でしょうか。この100年に1度の大変革を起こす波は、「電動化」、「自動化」、「コネクテッド化」の3つだと言われています。今回は、前回までの「電動化」、「自動化」に続き、第3の波である「コネクテッド化」について話をしたいと思います。

1.コネクテッド化とは何か

皆さんは自動車を運転する際、カーナビを使いますか?近所を運転するのにもカーナビに依存してしまっている方も多いのではないでしょうか。実はこのカーナビ、私たちユーザーを分かりやすく「コネクテッド化」させている製品の一つといえます。それでは、代表的なカーナビの機能を確認してみましょう。

(1) GNSS

まず、カーナビの基本機能である「位置情報」ですが、カーナビは「衛星」から電波を受信して位置を特定します。正確な位置情報を得るには、三角測量の原理から最低4つ(位置3つ、時間1つ)の衛星が必要になります。この衛星は、GPS(米国)、GLONASS(ロシア)、Galileo(欧州)、BeiDou(中国)、NAVIC(インド)、みちびき(日本)などがあり、これらの衛星測位システムは、GNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)と呼ばれています。カーナビは、まるで電波と衛星でつながっているようにみえますので、これが最初の「コネクテッド化」といえると思います。

(2) ETC、ETC2.0(DSRC)

ETC(Electronic Toll Collection System / 電子料金収受システム)は、高速道路料金の自動支払いを実現しています。現在は、渋滞回避や安全運転支援といった、ドライバーに有益な情報を提供するサービスとして「ETC2.0」が導入されています。将来的には渋滞を緩和するための料金体系やデータの流用、高速道路以外での料金決済などに応用される予定です。
海外では、ETC2.0に使用している技術「専用狭域通信」(DSRC:Dedicated Short Range Communications)を利用した同様のシステムが構築されています。

(3) Bluetooth / Wi-Fi

BluetoothやWi-Fiは、主に携帯電話とカーナビの接続用に利用されています。この機能により、携帯電話のメモリ情報(音楽、動画、電話帳、受発信履歴など)を自身の自動車と共有することができますので、身近な「コネクテッド化」といえるでしょう。

(4) 携帯電話網

最近増えてきたのが、この携帯電話網を使ったサービスです。携帯電話網を使用して、音声通話とデータ受発信の機能を実現しています。このネットワークを使う一番のメリットは、受信だけではなく送信ができるということです。これにより、どこでも「コネクテッド化」した状態を保持できるようになりました。

このように、現在のカーナビは、多くの無線機能を持った最も身近なコネクテッドデバイスといえます。カーナビを利用することは、単に目的地を目指すだけではなく、「安全」かつ「迅速」に、そして「楽しく」カーライフを送ることにつながっています。

2.コネクテッド化の現在

この「コネクテッド化」ですが、カーナビ以外ではどのような実用例があるのでしょうか。

(1) eCall (自動緊急通報技術)

現在、欧州連合(UE)の加盟国で販売される新型車(乗用車、商用車)に対して、「eCall」と呼ばれる技術の搭載が義務づけられています。また、ロシアでは、「ERA-GLONASS」と呼ばれる技術の搭載が義務づけられています。
どちらの技術も、重大な事故が発生した際に、自動での緊急通報・位置データの送信・周囲への警告を行うもので、これらの技術により、自動車事故による死者数の減少が期待されています。

(2) V2X

V2Xは、「Vehicle to X (something)」の略語です。V2Xの中には、V2V(Vehicle to Vehicle)、V2I(Vehicle to Infrastructure)、V2P(Vehicle to Pedestrian)、V2N(Vehicle to Network)があります。
それをさらに拡張して、V2G(Grid)、V2H(Home)、V2L(Live)も出てきています。
現在、ETCに代表されるV2Iに位置する製品が一般的です。先に述べたように、DSRCの技術を使うことにより、より多くの情報が入手できるようになったことが安全運転の一助になっています。また、V2Vの製品が一般化することにより、車同士でのコミュニケーションが可能となり、より高度な危険回避ができるようになります。

3 .コネクテッド化の未来

コネクテッド化は特別な技術ではなく、私たちにとって既に日常的に使っている技術であることがご理解いただけたかと思います。
この「コネクテッド化」は、いったいどこへ向かっているのでしょうか。

(1) 自動化(自動運転)

「自動化の実現」には、コネクテッド化が必須の条件であるといえます。自動車は、カメラやセンサーから入力されるデータだけではなく、V2Xを介して取得するインフラ・自動車・歩行者からの情報をもとに「自動化」を行います。

(2) サービスとしてのモビリティー(MaaS)

自動化が実現することで、自家用車と公共交通機関の境目が曖昧になってくると考えられています。自動車は、「所有」するものではなく、「利用」するものという認識に代わってくるというのです。今は、自家用車で最寄り駅の近くの駐車場に行き、最寄駅から目的地に近い駅まで電車で移動、そこからタクシーを使う、というのが一般的ですが、自動運転が実現すれば、駅までの移動は「シェアカー」で済ませてしまえます。これにより、自動車の所有から利用への転換だけではなく、シェアカーを含めた統合型のモビリティーサービスが重要となってきます。いわゆるMaaS(Mobility as a Service:マース)と呼ばれるこれらのサービスが、街づくりや消費者向けのマーケティングにも利用できるため、サービスプロバイダーの覇権争いが激しくなってきています。

4. ビューローベリタスの取り組み

消費財検査部門 ニューモビリティーテクニカルセンターでは、これまでのエンジンを動力とした自動車向けの車載機器EMC評価に加え、EV向け車載機器EMC評価への対応を進めています。
また、スマートワールド事業部では、カーナビをはじめとした無線製品の国内・海外認証の実績を数多く持ち、eCallやERA-GLONASSをはじめとした、最新の法規に対する試験、認証サービスも展開しています。

消費財検査部門 スマートワールド事業部  武井 忠庸

 


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