皆さんは、自動車業界が今「100年に1度」と言われる変革期を迎えているのをご存知でしょうか。この100年に1度の大変革を起こす波は、「電動化」、「自動化」、「コネクテッド化」の3つだと言われています。前回の「電動化」に続き、今回は、第2の波、「自動化」について、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議による「官民ITS構想・ロードマップ2018(案)」をベースとしてお話をします。

1.自動化とは何か

みなさんが「自動化」で想像するのは、「自動運転」のことだと思います。もちろん、自動運転が自動化の最終的な目標となりますが、それを実現するための先進運転支援システム(ADAS)や高度道路交通システム(ITS)も、自動化を実現する大切な技術となります。
自動化にはレベル0からレベル5が定義されており、概要は以下の表のとおりです。
官民 ITS 構想・ロードマップでは、自動運転レベルの定義として、SAE InternationalのJ3016(2016年9 月)*の定義を採用しており、SAEレベル3 以上の自動運転システムを「高度自動運転システム」、また、SAE レベル4、5の自動運転システムを「完全自動運転システム」と呼んでいます。

* 同様の内容を日本語でご覧になりたい方は、JASO TP 18004:2018 「自動車用運転自動化レベル」
https://www.jsae.or.jp/08std/ikou_index.html#jidou)を参照ください。

自動車運転自動化レベル
出典:公益社団法人 自動車技術会 JASO TP 18004:2018 「自動車用運転自動化レベル」(抜粋)

2.なぜ自動化が必要か

世界各国で自動運転に対する取り組みが過熱していますが、その大きな理由は以下の2つです。

(1) 社会的インパクトとビジネスモデルへの影響

自動運転システムは、一般的に人間による運転よりもより安全かつ円滑な運転を可能とするものであり、この結果、交通事故の削減、交通渋滞の緩和、環境負荷の軽減など、従来の道路交通社会の抱える課題の解決に大きく資するものとなることが考えられます。あわせて、物流や移動の社会的課題の解決、その他の産業分野への影響と波及も期待されます。
また、これらの技術的な実現により、MaaS(サービスとしてのモビリティー)やシェアリングエコノミーなど、新しいビジネスモデルが期待されています。

(2) データ・アーキテクチャーの進化の方向

自動運転を実現するためには、自動車の高度なIT化の進展と各種センサーによるデータ収集(ビックデータ)、そのデータを基にした判断や予測(AI化)が必要になります。
そのため、自動車だけではなく、インフラ、データセンターを含めたデータ基盤の充実とそれにかかわる技術の発展が期待されています。

3.自動化に係る社会、産業目標と全体戦略

「官民ITS構想・ロードマップ2018(案)」では、以下のように定義されています。

(1) ITS・自動運転により目指す社会、産業目標

  • 社会面:
    我が国は、2020年までに「世界一安全な道路交通社会」を構築するとともに、その後、自動運転システムの開発・普及及びデータ基盤の整備 を図ることにより、2030年までに「世界一安全で円滑な道路交通社会」を構築・維持することを目指す。
  • 産業面:
    我が国は、官民の連携により、ITSに係る車両・インフラの輸出を拡大し、2020年以降、自動運転システム化(データ基盤の整備を含む)に係るイノベーションに関し、世界の中心地となることを目指す。

(2) 自動運転システム、交通データ利活用等に係る基本的戦略

具体的には、以下の3項目に係る高度自動運転システム等に重点化し、これらのシステムの2025年目途の市場化・普及を見据えて取り組むものとする。

  1. 自家用車における自動運転システムの更なる高度化
  2. 運転者不足に対応する革新的効率的な物流サービスの実現
  3. 地方、高齢者等向けの無人自動運転移動サービス実現

(3) 安全の担保

自動運転技術の進化の方向としては、多様な交通状況での完全自動運転可能な技術の実現に向けて、大きく分けて、以下の2つのアプローチがある。

  1. 広いODD(例えば、高速道路全体など多様な交通状況)に対応することを優先し、徐々に自動制御活用型のレベルを上げていくアプローチ:
    本アプローチは、主に、時間・場所等を問わずに走行することが一般的に求められる自家用車(商用を含む)における自動運転システムの戦略となる。これらの自動運転システムを搭載した自家用車では、多くの場合、車両内に利用者が存在する。
  2. レベル4の遠隔型自動運転システム(完全自動運転システム)を実現することを優先して、狭いODD(狭く限定された交通状況)から開始し、その後、そのODDを徐々に拡大していくアプローチ:
    本アプローチは、主に、時間・場所等を制限してサービスを提供することが可能である事業用(地域公共交通、貨物輸送など)自動車での自動運転システムの活用における戦略となる。

4. ビューローベリタスの取り組み

消費財検査部門 ニューモビリティーテクニカルセンターでは、これまでのエンジンを動力とした自動車向けの車載機器EMC評価に加え、EV向け車載機器EMC評価への対応を進めています。
また、各機関と協力して新しい評価方法の策定にも積極的に取り組んでいます。

次回は、3つ目の波である「コネクテッド化」についてお話をする予定です。

消費財検査部門 スマートワールド事業部  武井 忠庸

 


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