QHSE

効果的なOJT記録有効性確認

2021-05-10

システム認証事業本部
主任審査員 K.G
 

OJTなのに記録が必要?

私は、いろいろな企業・組織(ここでは組織と呼ぶ)に対してISO9001の審査を行っていますが、審査のなかで規格要求事項の箇条7.2 力量の教育・訓練の審査をするとき、力量が不足する人に対して計画的に教育・訓練を行っている組織もあれば、場当たり的に教育・訓練を行なっている組織も見られます。

今回は、効果的なOJT(On the Job Training:実際の仕事を通じて指導し、知識・技術を身に付けること)の方法と記録の取り方について書いてみました。

ISO9001:2015 の規格要求事項の箇条7.2 力量では、以下の内容を要求しています。

組織は、次の事項を行わなければならない。

  • 品質マネジメントシステムのパフォーマンスおよび有効性に影響を与える業務をその管理下で行う人(または人々)に必要な力量を明確にする。
  • 適切な教育・訓練または経験に基づいて、それらの人々が力量を備えていることを確実にする。
  • 該当する場合には、必ず必要な力量を見に付けるための処置をとり、とった処置の有効性を評価する。
  • 力量の証拠として、適切な文書化した情報を保持する。

 

これらの要求事項を満たすためだけでなく、規格が要求する、しないに関わらず必要に迫られて新人や異動者等(以下受講者と呼ぶ)に教育を行なっている組織もあると思います。
組織によっては、年間教育計画等についての教育項目は、教育記録をきちんと残していても、OJTの場合の教育記録は残していないケースが多く見られます。その理由を聞くと、OJTでの教育項目はいつ発生するか分からず、計画的なものにはできないという答えが返ってきます。
また、いちいち教育実施の際に記録するのは面倒であるとの回答もあります。

実務発生の都度、教育を行なっているため、

  1. 教えたい業務が計画的に発生するわけでないので、計画そのものを設定することができない。
  2. OJTは現場で教えているので、いちいち記録は残してはいないし、指定された記録用紙では記入項目が多くて時間がかかる。このためOJTでの記録は残す必要を感じていない。

というのが実情ではないでしょうか。
この方法では以下の問題点が考えられます。

  1. 指導が長期間にわたる時に、どこまで教えたか指導者が忘れてしまう。
  2. 指導者が途中で変わった際に、前指導者がどこまで教えたか、また、教えた内容の理解度がどの程度かわからない。
  3. 指導すべき業務全て指導したかわからない。
  4. 受講者がどの程度理解たかわからない。

これらの問題点を解決するために、
一度指導者が集まり、考えられるOJTの内容・項目を洗い出し、チェックリスト様式にした記録用紙を作成してはいかがでしょうか。その際に注意すべき点は、

  1. 受講者一人一様式の記録にする
  2. 指導日、指導項目(内容)、指導者明確にする
  3. 受講者が自ら理解度を記号等(◎、〇、△、X)や数で表す項目を設定する(セルフチェック欄)
  4. 指導者が受講者の理解度を記号等(◎、〇、△、X)や数で表す項目を設定する
    (受講者と指導者の理解度の差がある項目については、十分話し合うことが重要)

最低限これらの項目を事前に設定しておくと、OJTの際の記録が楽になります。
OJT項目が思い浮かばない場合は、チェックリストの項目欄を空欄にしておいて、実際にOJTを行なった際にその指導項目名をチェックリストに追加しておけば次の時に役立ちます。
これを重ねることにより、充実したOJT計画と記録になるのです。

規格要求事項の箇条7.2 力量で求めている「とった処置の有効性を評価する」や「力量の証拠として、適切な文書化した情報を保持する」については、理解度を表す記号等(◎、〇、△、X)や数で十分です。有効性の記録は文章でなければいけないことはありません。
◎、〇、△、Xや数でも理解度や習熟度の有効性を表すものとなります。
こうしたチェックリスト方式の教育記録を作成することにより、規格要求事項の箇条7.2 力量の内容を満たすものとなるのです。

このチェックリスト方式を教育記録としている良い一例が医療現場で用いられている「看護師のクリニカルラダー」です。これは日本看護協会で発行している医療関係の教育記録の用紙(フォーマット)です。新人看護師からベテラン看護師までの指導項目や力量向上を網羅した計画、その結果の記録がされる内容となっています。インターネットで「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」と検索するとわかりますので、ここでは詳細の説明は省略いたします。皆様の組織にも応用が利く内容と思います。

また、発生する業務の都度指導者が変わる場合などでは、受講者が個人ごとに保有した手帳スタイルの記録様式にすると、OJT教育を受ける都度、指導者より記録をしてもらうことができ、利便性が上がると思います。

 

効果的な有効性確認

組織によっては、教育実施後すぐに教育結果の有効性を行なっている場合が見られますが、有効性確認のタイミングは教育内容により異なっていてもよいと考えます。

作業手順上でのヒューマンエラーの場合、再発防止のため、今までの作業手順を変更し改訂した作業標準等の内容を教育した後にその場で教育後の有効性を確認し記録しているケースが多く見られます。
これはこれで良いのですが、果たして“効果的な有効性確認”となるのでしょうか。
指導教育した結果は、その場ではほぼ全員が理解されていると思います。しかし、重要なのは教育を受けた内容が職場や自分行う業務のなか実際に反映されているかどうかではないでしょうか。
人は時間が経過すると忘れてしまいがちなので、変更前の手順で作業・業務を行なってしまっているかもしれません。

この場合は、指導・教育した内容が守られいるか、3か月後、6か月後等に有効性確認を行ことが重要です。それが正しい有効性の確認となり、本来の目的を達成することになるのです。
記録様式には何回かの有効性確認結果の記録欄の設定をるとよいでしょう。規格が有効性を求めているからといって、すぐその場で有効性を確認するのは簡単で手間がかかりません、それが本来の有効性確認となるのか、一度皆様の組織の仕組みを再確認されると良いと思います。また、作業者が新人等で、作業手順を変更した際の教育に参加していない場合、変更内容に従った内容で作業を行なっているかどうかなど、誰もが守れる仕組みとなっているかどうかの確認も必要です。

OJTによる教育内容・項目と記録、および教育結果の有効性確認の効果的運用を図り、皆さまが更飛躍されることを期待しております。

【関連サービス】
ISO9001

お見積り依頼はこちらから

お見積り依頼フォーム

ビューローベリタスジャパン株式会社
システム認証事業本部