政令改正に伴う防火避難関係規定等の合理化
1.内装制限における「仕上げ」と「下地」の関係性の合理化
防火・避難関係規定では、壁および天井の室内に面する部分について、「仕上げ」と「下地」を準不燃材料または不燃材料とすることが求められています。主な対象規定は以下のとおりです。
- 防火区画(建築基準法施行令第112条):高層区画(8項、9項)、竪穴区画(11項、14項)
- 避難階段(建築基準法施行令第123条):屋内避難(1項)、特別避難階段(3項)
従来は、「仕上げを準不燃材料(または不燃材料)とし、かつ、その下地を準不燃材料(または不燃材料)で造ること」と規定されていました。しかし、今回の政令改正により、
「国土交通大臣が定める基準に従い、仕上げを準不燃材料(または不燃材料)とし、かつ、その下地を準不燃材料(または不燃材料)で造ることその他これに準ずる措置を講ずること」
へと改められました。
これに伴い、「これに準ずる措置」として、新たに「令和7年国土交通省告示第988号(準不燃材料告示)」および「令和7年国土交通省告示第989号(不燃材料告示)」が制定されました。合理化の概要は下表のとおりです。政令では、仕上材と下地材ともに不燃性能が求められていますが、告示では、下地材の不燃性能を問わないものが含まれている点が特徴です。
なお、告示で例示された仕様の上から、規定で求められる性能(不燃・準不燃)以上の性能を有する壁紙や塗装等を施工することは差し支えありません。

2.無窓居室に該当する居室の基準の合理化
1/50無窓居室の判定において、開口部の位置は、居室の天井高さにかかわらず、「天井」または「天井から下方80cm以内の部分」とされていました。
今回の改正では、開口部の位置に関する規定が見直され、「天井」または「壁(床面から天井までの垂直距離に応じて国土交通大臣が定める部分)」へ改められました。
つまり、これまでのように天井から下方80cm以内という一律の基準ではなく、居室の天井高さに応じて定められることになります。
具体的な基準は、令和7年国土交通省告示第992号において次のとおり定められています
| 天井高さ(床面から天井までの垂直距離) | 開口部の位置(解放できる部分条件) |
| 2.6m以下 | 天井から下方80cm以内の距離にある部分(改正前の令の規定と同じ) |
| 2.6m超え | 床面から1.8m以上の部分 |
一つの居室において天井や床の高さが異なる場合の取り扱いは次のとおりです。

また、従来は、無窓居室の判定に用いる「開放できる部分」の面積について、居室の床面積の 1/50以上 であることが求められていました。今回の改正では、給気口※が設けられている場合、その効果を考慮して開放できる部分の面積を算定できるようになりました。具体的な算式は次のとおりです(令和7年10月31日国土交通省告示第993号)。
※常時開放されているもの、または排気口の開放に連動して自動的に開放される構造のもの

なお、この式において算定値Dが0以下となる場合は、開放できる部分の面積は従来どおり居室床面積の1/50以上となります。
<記号の定義>
| Aneed | 開放できる部分の面積(2以上ある場合は、その合計)(㎡) |
| Aroom | 居室の床面積(㎡) |
| Hc | 居室の床面から開放できる部分の中心までの垂直距離(m) |
| Aa | 給気口の有効開口面積(2以上ある場合は、その合計)(㎡) |
ここで、給気口の位置については、排気口と同様に取り扱われます。具体的には、天井高さが2.6m以下の場合は天井から下方80cm以内の部分、2.6mを超える場合は床面から1.8mを超える部分に設ける必要があります。
なお、本告示を適用する場合は、排煙設備と同様に、手動開放装置が設けられていることが条件とされています。
3.防煙壁の基準の合理化
今回の改正では、令第126条の2に規定する「防煙壁」について、「はり」を防煙壁として明示するとともに、その下端から床面までの垂直距離が、居室の床面積に応じて国土交通大臣が定める距離以上である準耐火構造のはり等が、新たに防煙壁として認められました。
これにより、従来は「不燃材料で造り、または覆われたもの」とされていた防煙壁の規定が合理化されることとなりました(令和7年10月31日国土交通省告示第994号)。
防煙壁として取り扱うことができるはり等の下端から床面までの垂直距離は、防煙区画部分の床面積に応じて次のとおり定められています。
| 防煙区画部分の床面積(㎡) | ~340 | 340~380 | 380~420 | 420~460 | 460~ |
| 防煙壁下端までの垂直距離(m) | 3.0 | 3.5 | 4.0 | 4.5 | 5.0 |
下図の場合、防煙区画の床面積はそれぞれ180㎡であるため、防煙壁の下端から床面までの垂直距離は3.0m以下とする必要があります。

また、今回の改正により、燃えしろ設計された「はり」を木材あらわしのまま、防煙壁とみなすことが可能になります。
間仕切り壁についても、告示で定める高さより下の部分が不燃材料で造られている、または不燃材料で覆われている場合には、その上部を木材あらわしとすることができます。
なお、本告示の適用対象は「居室」に限られています。そのため、例えば居室と廊下を区画する間仕切り壁には適用できません。
4.その他、排煙口の合理化
なお、本告示の制定に伴って、旧平成12年建設省告示第1436号第1項第3号の天井高さ3m以上の場合の床面から2.1m以上かつ天井高さの1/2以上の規定は削除されています。
自然排煙の排煙口については、今回の改正により、不燃材料以外の材料で造ることが可能となりました。これにより、樹脂サッシや木製サッシを自然排煙口として採用できるようになります。
一方、機械排煙の排煙口については、従来どおり不燃材料で造る必要があります。
排煙口の位置については、「排煙口を設けた場合に火災時に生ずる煙を有効に排出することができる壁の部分を定める件」(令和7年国土交通省告示第995号)が新たに制定されました。
有効な排煙口の範囲は、無窓居室の判定における取扱いと同様に、天井高さが2.6m以下か、または2.6mを超えるかによって異なります。
なお、令第126条の3に規定する排煙口については、防煙区画を形成する防煙壁のうち、最も高さの低い防煙壁の高さによっても有効範囲が変わる点について、従来どおり注意が必要です。
また、本告示の制定に伴い、平成12年建設省告示第1436号第1項第3号に規定されていた「天井高さが3m以上の場合は、床面から2.1m以上かつ天井高さの1/2以上とする」との規定は削除されました。
2050年までのカーボンニュートラルおよび脱炭素社会の実現に向けて、温室効果ガスの吸収・貯蔵効果を有する木材の建築物への利用を促進する観点から、技術的知見の蓄積に応じた建築規制の見直しが順次進められています。
令和7年11月1日の改正では、本記事で紹介した内容のほかにも、小屋裏隔壁規定の合理化(令第114条)、敷地内通路の合理化(令第128条の2)、建築基準法の規制対象となる昇降機の範囲の見直し(令第129条の3)、大規模の修繕・模様替え時における遡及適用除外規定の対象追加(令第137条の12)などが行われています。
建築認証事業本部 渡邊 仁士
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