建物法定点検のコスト削減~複数点検を一括実施するメリットと効率化のポイント~
建物の安全性や資産価値を維持するうえで、法定点検は欠かせません。
しかし、全国展開する企業の施設管理は地域ごとに業者選定を行うため、点検の基準が異なる場合があります。施設の担当者が変更になるたび引き継ぎが複雑になり、誰がいつどの点検を行なったのか、拠点の管理品質を維持することが難しい場合もあるでしょう。
本記事では、複数の法定点検を一括で実施することのメリットやコストを削減する方法について解説します。
■複数の法定点検を一括実施で行うメリット
法定点検を別々の業者に依頼すると、手間や余分な費用が発生しかねません。手間を減らしコストを削減するには、一括実施がおすすめです。ここでは、法定点検を一括実施する重要性について解説します。
同日実施で出張費が削減できる
複数種類の点検を同日に実施することで、法定点検のコストを削減できる可能性があります。日程をまとめることで、業者の訪問回数が減り、出張費を抑えられるケースがあるためです。
ただし、全ての点検を同日に行えばよいとは限りません。例えば、「12条点検(建築基準法第12条定期報告)」と「消防」など別の法定点検を同日に行うと、一部の点検項目が重なり、作業員の待ち時間が生じることがあります。その結果、かえって非効率になる場合があります。
コスト削減を図る際は、単に日程をまとめるのではなく、点検内容の重複や作業の流れを踏まえて日程を調整することが大切です。なお、建物近隣の業者に依頼することで出張費がかからない場合がありますが、日程などの調整が難しい場合は、全国で一元管理している企業に法定点検を依頼するとよいでしょう。
業者とオーナーの人件費を削減できる
法定点検の種類ごとに依頼すると、その都度、業者の人件費が発生します。
また、人件費は業者だけでなく、建物のオーナーや管理会社にも発生します。業者の立ち入りにともない、鍵の手配や作業の立ち会いなどが必要になるためです。これらは直接的な費用としては見えにくいものの、対応に時間を要し、結果として人件費の増加につながります。
こうした負担を抑える方法として、一括で法定点検を実施することが挙げられます。まとめて実施することで業者と施設オーナー双方の人件費を削減できる可能性があります。
ただし、点検周期の都合により、一括実施が難しい場合があるでしょう。無理にまとめると施設運営に支障が出るおそれがあるため、人件費の削減効果と運営への影響を踏まえて検討することが大切です。適切に調整できれば、結果として業者・オーナー双方の負担軽減につながります。
事前告知や調整の手間を削減できる
法定点検を一括で行うことで、事前告知や日時調整の手間を削減できる可能性があります。
法定点検を行う場合、テナントの室内への立ち入りやエレベーターを一時停止することがあるため、入居者への事前告知が必要です。また、テナントの休日確認やそれにともなう日程調整が必要になるケースもあります。
このように、法定点検を別々の日に実施するとそれぞれ手間がかかるため、できるだけまとめて実施するとよいでしょう。
■法定点検ごとに業者を分けるデメリット
法定点検ごとに別の業者に依頼する場合にはいくつかのメリットがあります。点検内容に応じて専門性の高い業者を選べるほか、業者間でコスト比較がしやすい点は大きな利点です。また、地域密着型の業者であれば、トラブル発生時に迅速な対応が期待できる場合があります。さらに、エレベーターや大型空調設備など、一部の設備ではメーカー系点検が適しているケースがあります。
しかし、こうしたメリットがある一方で、業者を分けることで生じるデメリットも存在します。ここでは、法定点検ごとに業者を分けるデメリットについて解説します。
事務作業が煩雑になる
法定点検ごとに業者を分けると、点検項目の確認や見積書依頼、発注手続き、社内稟議などを業者ごとに行う必要があり、事務作業が煩雑になりがちです。事務作業が増えると、人件費の増加にもつながりかねません。
このような負担を軽減する方法として、法定点検を1社にまとめて発注する方法があります。事務作業を集約できるため、別々の業者に依頼する場合(見積もり取得~検査完了まで)と比較し1つの点検当たり約4時間の事務作業削減につながるケースがあります。
コミュニケーションコストが増大する
法定点検ごとに業者を分けると、見積もり依頼や発注、点検日時の連絡、請求書対応など、コミュニケーションコストが増えてしまいます。
そのため、法定点検を業者ごとに分けるのではなく、一括での発注がよいでしょう。一括で発注することで、業者の窓口は1つになり、事前の打ち合わせから点検実施、報告を受けるまでスムーズに進めることができます。
法定点検の評価基準にばらつきが出るおそれがある
法定点検は書式や用語が概ね統一されていますが、複数の業者に依頼すると、報告書の表現や指摘の伝え方が異なることがあります。その結果、複数物件の状況を横断的に把握しづらくなるケースがあります。
特に12条点検では、業者ごとに判断の傾向がわずかに異なる場合があり、複数物件を別々の業者に依頼すると、管理側が状況を把握しにくくなることがあります。12条点検では、各検査項目を「要是正(既存不適格)」「特記事項」「指摘なし」の3区分で判定します。
「要是正」と判定された場合、早急に修理や部品交換などの対応が必要です。対応せずに放置すると、有事の際に設備が正常に作動せず、人命にかかわる事態になるおそれがあります。
また、要是正とはなりませんが、経過観察が必要な事象には「特記事項」という判定となります。要是正と特記事項の判断基準は検査員によって分かれる場合があります。
判断基準は行政が定めたものがありますが別々の業者に依頼することで、まれにこうした判定基準の解釈や表現が揃わず、混乱や管理の手間が増えることがあります。
また、業者が変わった際に今までなかった指摘が見つかることがあります。複数物件を保有している場合、一括実施できる業者に法定点検を依頼することで判断基準が統一され、管理の効率化につながります。
■法定点検のスケジュールを見直してコスト削減する方法
法定点検を分割して発注することで点検ごとに価格交渉ができるため、費用を抑えられる場合があります。しかし、業者選定や契約手続き、日程調整などの事務負担を含めた全体のコストで考えると、一括でまとめて依頼するほうが効率的で、結果的にコスト削減につながるケースは少なくありません。
ここでは、法定点検のスケジュールを見直して、コストを削減する方法について解説します。
建物の主な法定点検の内容
ビルやマンションで実施すべき主な法定点検とその点検頻度は以下のとおりです。
点検内容 | 点検頻度 |
| 特定建築物定期調査 | 1回/1~3年 |
| 防火設備定期検査 | 1回/年 |
| 建築設備定期検査 | 1回/年 |
| 昇降機設備点検 | 1回/年 |
| 防災 管理点検 | 1回/年 |
| 防火対象物点検 | 1回/年 |
| 消防用設備点検 | 機器点検1回/6ヵ月、総合点検1回/年※ |
| 電気保安点検 | 12回/年・年次点検1回/年 |
※報告頻度は用途により異なります。
これらの点検は実施するたびに一定のコストが発生します。複数拠点を管理している場合、点検の積み重ねによって全体の負担が大きくなることがあります。建物を適切に維持管理していくためには、法定点検以外に設備の更新なども必要でしょう。そのため、点検の進め方を見直し、効率的にコストを管理することが重要です。
繁忙期を避ける
繁忙期は、普段よりも費用が高くなることがあります。また、点検業者への依頼が集中し、希望どおりの時期に実施できない場合も考えられます。例としてビューローベリタスの点検時期傾向は下記のとおりです。
| 12条点検 | 9~12月 |
| 消防点検 | 4~6月、10~12月 |
| 電気保安点検 | 3~5月 |
行政庁によっては報告時期(〇月~〇月までに提出等)を設定しており、期間内に報告書を提出しなければならない地域があるため、繁忙期に検査せざるを得ない場合がありますが、点検業者の繁忙期を避けるためにも、法定期限に合わせて直前に点検を実施するのではなく、余裕を持ってスケジュールを組むことが大切です。
閑散期にまとめて行う
法定点検でコストを削減するには、業者の閑散期にまとめて実施することが有効です。
閑散期の活用を安定して行うためには、単年ごとではなく、中長期的に点検計画を立てることが重要です。複数年を見据えてまとめて依頼することで、業者側も繁忙期を避けて作業を組み立てやすくなり、長期的な取引関係につながるため、柔軟に対応してもらえる可能性があります。
■まとめ
複数の建物の法定点検コストを抑え、管理の手間を減らすために、点検を一括して依頼する方法が有効です。日程調整や事務作業の負担を軽減できるだけでなく、判断基準の統一や長期的なコスト最適化にもつながります。
こうした一括対応を検討する際には、幅広い点検業務に対応でき、複数拠点をまとめて管理できる業者を選ぶことが重要です。
ビューローベリタスでは、12条点検をはじめ、防災・防火・消防設備・消防点検報告、電気保安点検などのさまざまな点検業務を全国で対応しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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