欧州圧力機器指令(PED 2014/68/EU)の概要と日本企業に求められる実務上の要点
日本企業における欧州市場向け機器の需要拡大に伴い、PED(Pressure Equipment Directive:欧州圧力機器指令)2014/68/EUへの対応は避けては通れません。特に、製造業・プラント関連企業・エンジニアリング会社においては、CEマーキング取得を前提とした調達・設計・製造のプロセス見直しが求められています。
本記事では、実務上押さえるべきポイントを整理して解説します。
■PED(Pressure Equipment Directive:欧州圧力機器指令)とは
PEDは欧州において最大許容圧力0.5 barを超える全ての圧力機器に適用される法規制です。対象範囲は非常に広く、
- 圧力容器(Vessels)
- 配管(Piping)
- バルブ、フィッティング
- 圧力アクセサリ、安全アクセサリ
- 複合アセンブリ
など、産業機器の多くが該当します。
PED適合には、以下の要素が要求されます。
- 設計の妥当性
- 材料の適格性
- 溶接・検査の資格
- 適合性評価(モジュール)
- 技術文書および適合宣言(DoC:Declaration of Conformity)
- CEマーキング表示
特に、カテゴリーII以上ではNotified Body(NB)の関与が不可欠であり、事前計画の有無がプロジェクト進行に大きく影響します。
■カテゴリー分類と適合性評価のポイント
PEDのカテゴリーは、流体の危険性(グループ1/グループ2)、圧力(PS)、容積(V)または呼び径(DN)、製品種別(容器・配管・付属品など)の組み合わせで決定します。
カテゴリーが上がるほど、NBの関与が増加し、設計審査・製造監査・検査立会いが必要です。
カテゴリー | 概要 | NBの関与 |
| SEP(Sound Engineering Practice) | 最も軽微で、CEマーキング不可 | 不要 |
| カテゴリーⅠ | 低リスク領域 | 原則 自己宣言(NB関与なし) |
| カテゴリーⅡ | 中程度のリスク | NB関与が一部必要(製造・検査等) |
| カテゴリーⅢ | 高リスク | 審査/監査、設計審査、検査立会い、NBの関与が必須 |
| カテゴリーⅣ | 最高リスク | 設計審査、製造監査、検査立会い、NBの関与が必須 |
■材料要求 ― 日本企業が最もつまずく領域
PEDは材料に厳しい要求を課しており、特に日本企業では材質証明書(EN 10204)とPMA(Parts Manufacturer Approval:部品メーカー承認)に関して注意が必要です。
PEDで認められる材料区分
PED Annex I 4.2では、材料は次のいずれかである必要があります。
国内調達品の多くはEN材ではないため、日本企業では PMAの作成が標準的運用です。
- EN(European Norm)材:Harmonized Standard(整合規格)
- EAM(欧州材料承認:European Approval of Materials)
- PMA(特定材料評価:Particular Material Appraisal)
EN 10204(材質証明書)の正しい理解
Type 3.1は材料メーカーの品質管理に基づく証明で、PEDやEN 10204のAnnexにて、第三者機関はEU域内で設立していることとしています。よって、ISO 9001認証取得証明書に記載の住所がEUである必要があります。なお、日本で発行された証明書であってもEUの住所が併記されている場合は受け入れられます。
PEDにおけるEN 10204要求
証明書種別(タイプ) | 適用部位 | PEDカテゴリー | 要求事項 |
| 3.1 | Pressure-Bearing Parts(圧力保持部) | Ⅱ~Ⅳ | 材料メーカー発行。EU域内で設立した第三者機関発行のISO 9001認証取得証明書が必要。 |
| 3.2 | Pressure-Bearing Parts(圧力保持部) | Ⅱ~Ⅳ | NB立会い・第三者確認が追加となり納期が長くなる。 |
| 2.1/ミルシート | カテゴリーⅠまたは非圧力保持部 | Ⅰまたは非PED | 自己宣言で可。第三者認証は不要。 |
■PMA(特定材料評価:Particular Material Appraisal)の実務
日本企業で最も多いケースがこのPMAです。
- 製造者が材料仕様書を作成
- EN規格と比較し、不足する試験(例:衝撃試験)を補完
- カテゴリーⅢ・ⅣはPMAにNB承認が必須
特に衝撃試験(Charpy Test)はJISでは記載がなく、PEDでは要求される場合があるため注意が必要です。PMAの準備不足は最も多い納期トラブルの原因です。
■溶接・NDT(非破壊検査:Non-Destructive Testing)の要求
溶接に関する規定
PEDは溶接に関して厳格な規定を設けています。
- WPQR(溶接手順認定記録:Welding Procedure Qualification Record):ISO 15614-1
- WPS(溶接施工要領書:Welding Procedure Specification):ISO 15609-1
- 溶接技能者資格:ISO 9606-1
カテゴリーⅡ以上では、WPQR/WPS/溶接技能の一部にNBまたは欧州委員会に認められた第三者機関の承認が必須です。
NDT要員の資格(ROUTE C)
PED Annex Ⅰ 3.1.3に基づき、NDT実施者は「認定体系に基づく資格」が必要です。
- ISO 9712そのままではなく、CEN/TR 15589(Route C)による認定が実務的標準
- JIS Z 2305やSNT-TC-1A資格者も、NB審査によりPED対応者として認定可能(期間制限あり)
■日本企業がPED対応を円滑に進めるための実務ステップ
| ①プロジェクト初期で行うべきこと | ・カテゴリー判定と流体分類 ・使用材料の選定(EN材かPMAか) ・必要なISO規格の収集 ・NBとの初期打ち合わせ |
| ②材料調達の計画 | ・EN 10204 Type3.1/3.2証明書の入手可否を早期確認 ・PMA作成の必要がある場合は試験期間を確保 ・材料納期を標準より長めに見積もる |
| ③溶接・NDTの準備 | ・WPQR試験計画の策定 ・NDT技術者の資格確認とPED認定の取得 ・溶接計画と工程管理の整合 |
| ④文書化・CEマーキング | ・技術ファイルの作成(設計・材料・溶接・検査記録) ・適合宣言(DoC)作成 ・CEマーキング表示 |
■まとめ
PEDは内容、要求ともに複雑で、材料・溶接・検査・文書管理まで幅広い領域に影響します。特に、日本企業が円滑に対応を進めるためのポイントは以下のとおりです。
- EN 10204(Type 3.1/3.2)への正しい理解
- PMA作成時の事前計画と仕様確認(追加試験等による納期遅延を防ぐ)
- 溶接やNDT資格が欧州規格と異なる点を理解し、早期段階で欧州要件との整合を確認
- NBとの調整によってプロジェクト全体の遅延回避
これらは事前に把握し、早期に計画することが最も重要です。PED対応を正しく理解し運用することで、欧州市場への製品供給安定化を可能とします。
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