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建築物の用途変更時に起こる遵法性リスク~申請が必要なケースと不要なケース~

2025-04-01

建築基準法の規定にしたがって、建築物にはそれぞれ用途が定められています。定められた用途以外で使用する場合、一定の条件に該当すると、用途変更の確認申請が必要です。
しかし、対象建築物や変更計画が建築基準法および関連法規に適合していない場合、確認済証が交付されません。

本記事では、建築物における用途変更の内容、用途変更時に起こりうる遵法性リスクについて解説します。

 

建築物における用途変更とは

建築物には「一戸建ての住宅」「共同住宅」「飲食店」「事務所」など、利用目的に応じてそれぞれ用途が定められています。
当初に定められた用途から別の用途に変更する際、次に示す2点の条件のどちらにも該当する場合は、確認申請(建築確認申請)が必要です。

① 特殊建築物への用途変更
② 用途変更後の特殊建築物部分の床面積が合計200㎡を超える場合

「特殊建築物」とは、劇場、映画館、病院、ホテル、百貨店など不特定多数の人が集まる施設のことを指します。
また、建築物の一部のみの用途を変更する場合も、用途変更後の特殊建築物部分の床面積が200㎡を超えていれば確認申請が必要です。

 

確認申請の要否は以下のとおりです。

 変更前の用途変更後の用途
(200㎡以上)
確認申請理由
ベッドがない診療所病院(特殊建築物)必要特殊建築物への変更
ベッドがある診療所
(1床以上19床以下)
(特殊建築物)
児童福祉施設等
(特殊建築物)
不要類似の用途のため不要
事務所専門学校等
(特殊建築物)
必要特殊建築物への用途変更
事務所物販店舗
(特殊建築物)
必要特殊建築物への用途変更

上表の①について、患者受け入れ用のベッドがある施設は特殊建築物に該当します。そのため、ベッドがない診療所から病院へ用途を変更するケースでは確認申請が必要です。

また、建築基準法施行令により「類似の用途」とされている用途間での変更は確認申請不要です。
上表のうち、②のベッドのある診療所から児童福祉施設への用途変更がこれに該当します。

参考:
e-Gov法令検索︓建築基準法(別表第一)
e-Gov法令検索︓建築基準法施行令(第百三十七条の十八)

 

用途変更時におきる遵法性リスク

建築物の用途変更時には、確認申請の必要性の有無にかかわらず、事前に「遵法性調査」を行なうことが推奨されます。対象建築物の遵法性について確認しないまま用途を変更すると、以下のようなことが起こる可能性があります。

 

●不動産の売買契約が順調に進まない

元は住宅として活用していた建築物を、物販店(物品販売業を営む店舗)としてリノベーションしたうえで販売するケースを想定します。
物販店は特殊建築物に該当するため、用途変更後の特殊建築物部分の床面積が200㎡を超える場合、本来であれば用途変更の確認申請を行なわなければなりません。

売り主が確認申請の必要性を認識しておらず、申請していなかった場合、所定の手続きを経ずに建築物の用途を変更してしまった(もしくは建築基準関係規定に対し、不適合な状態に変更してしまった)ことになるため、構造や設備などが基準を満たさず、店舗として販売できない可能性があります。

構造や設備が基準を満たしていたとしても、原則は事後の用途変更の確認申請手続きはできないため、契約が順調に進まないというリスクが生じます。

 

●建築物利用者へ危険がおよぶ

建築物の用途によって、空調設備・避難経路・火災対策など、利用者の安全確保に対して求められる要件は異なります。
用途変更後も要件を満たしていない場合、利用者に危険がおよぶ恐れがあります。

特殊建築物は、耐火建築物にしなければならないなど、通常の建築物と比べて厳しい制限が設けられており、用途を変更した結果、法律上の要件が変わる場合があります。

先述した確認申請を要する場合に限らず、用途を変更する際には事前に対象建築物の遵法性について確認し、新たな用途に応じた安全対策を講じることが大切です。

 

●建築基準法違反

用途変更時に遵法性について確認せず、建築基準法を満たさないまま運用し、かつ特定行政庁からの是正命令に従わなかった場合、建築基準法違反として建築物の所有者等に対し3年以下の懲役または300万円以下の罰金が課されます。

後に法令違反が発覚すると、特定行政庁から所有者に対して是正命令が下される可能性があります。是正しないままでいると、最悪の場合、建物の取り壊しを求められることがあります。

違反建築については、所有者等に是正措置が命ぜられるため、所定の手続きを経ずに用途変更した建築物を売却すれば、新たな買い主に責任が生じることになる可能性があります。

参考:
e-Gov法令検索︓建築基準法(第九十八条)

 

●保険の対象外となる

火災保険や地震保険などは、契約者から申請された建築物の用途に応じて補償範囲や保険金額が定められています。例えば、住居用の建築物と事業用の建築物では、契約可能な保険商品が異なるのが一般的です。
そのため、保険会社へ申請を行なわずに用途を変更すると、いざ災害があった際などに保険が下りない可能性があります。

加えて、変更後の用途に求められる建築基準を満たしていない場合、災害による被害が甚大になる恐れがあります。利用者に被害を与えたうえに、保険も下りないとなれば、損害の大きさは計り知れません。

 

●法改正に法改正に対応できていない(既存不適格建築物)

既存不適格建築物とは、建築当初は法令を遵守していたものの、その後の法改正により、現行法には適合しない状態にある建築物のことを指します。

過去の法令にしたがって建てられた建築物に対して、さかのぼって現行法が適用されることはないため、検査済証の交付を受けてからそのままの状態で使用している限り原則は違法建築とはなりません。

しかし、用途変更や増改築(以下「増改築等」という)での確認申請を行なう時点で対象建築物が現行法の基準を満たしていない場合は、一定の範囲内の増改築等を行う場合を除き、既存不適格箇所を現行法に適合させる必要があります。
計画を滞りなく進めるためには、「遵法性調査」で事前に既存不適格か否かを確認し、必要に応じた対策を講じておくことが重要です。

 

用途変更時に申請が不要になるケースもある

先に述べたように、すべての用途変更に対して確認申請が必要なわけではありません。特殊建築物に該当しない用途への変更や、用途変更後の特殊建築物部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は、確認申請の手続きは不要です。
以前は、床面積100㎡以下が建築確認申請免除の基準でしたが、2019年6月の建築基準法改正により、現行の200㎡以下に緩和されました。

また、建築基準法施行令第137条の18で規定される「類似の用途」とされる用途への変更に関しても、確認申請が不要です。先述した、ベッドのある診療所から児童福祉施設への用途変更はこれに該当します。

 

建築基準法施行令で規定される「類似の用途」

1劇場、映画館、演芸場
2公会堂、集会場
3診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、児童福祉施設等
4ホテル、旅館
5下宿、寄宿舎
6博物館、美術館、図書館
7体育館、ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場、バッティング練習場
8百貨店、マーケット、その他の物品販売業を営む店舗
9キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー
10待合、料理店
11映画スタジオ、テレビスタジオ

引用:
e-Gov法令検索︓建築基準法施行令(第百三十七条の十八)

用途によって求められる安全性は異なるため、利用者の安全確保の観点からも、用途変更時には事前に「遵法性調査」を実施しましょう。

 

建築物の用途変更時の「遵法性調査」

「遵法性調査」は、その建築物が建築基準法をはじめとする関連法規に適合しているかどうかをチェックする調査です。用途変更時における「遵法性調査」は次のような流れで進められます。

  1. お客様へのヒアリングにより調査項目を確定
  2. 調査に関し必要な資料をお客様に準備していただく
  3. ビューローベリタスが調査を実施(図上調査・現地調査)
  4. お客様へ既存建築物適合状況調査報告書を提出

 

「遵法性調査」を依頼された場合のフロー図



既存建築物適合状況調査報告書とは、専門家による詳細な調査・診断のもとに対象となる建築物の建築基準法に対する遵法性調査を実施し、得られた調査結果を報告書としてとりまとめたものです。
正確性と信頼性の高い調査により、不動産売買や不動産証券化など幅広い用途でご利用いただけます。

 

まとめ

建築物の用途変更のうち、用途変更後の特殊建築物部分の床面積の合計が200㎡を超えるとなる特殊建築物への用途変更は、原則として確認申請の手続きが必要です。確認済証の交付を受けるために、一部の規定は現行法に適合していることが求められます。
対象となる建築物が法律上問題のないことを確認し、計画をスムーズに進めるためにも、事前に「遵法性調査」を受けておくことをおすすめします。
用途変更後の特殊建築物部分の床面積の合計が200㎡未満の場合や類似用途間での用途変更であれば確認申請は不要ですが、変更後の用途に沿った安全性を確認する意味でも、「遵法性調査」の実施が推奨されます。

技術監査事業本部

 

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ビューローベリタスジャパン(株) 技術監査事業本部
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