ネットゼロ社会における環境認証制度<LEED認証・WELL認証>
はじめに
2022年の省エネ法改正に伴い、2025年4月以降に着工する全ての建築物に“省エネ基準適合”が義務付けられ、建築に係るさまざまな業種に大きな影響を与えていると考えます。
適合義務化は、2050年に目指すべき住宅・建築物の姿(あり方)である、“ストック平均でZEB(Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称化)基準の水準の省エネ性能確保”を目指す施策のひとつです。日本中の建物がZEB化となると、省エネルギー対策を行っているだけでは建物の付加価値について差別化を図ることが難しくなります。
この適合義務化をきっかけのひとつとして、日本国内での環境認証制度のニーズが高まることが予想されます。ビューローベリタスでは、省エネルギー性能以外も評価対象とした環境認証サービスを提供しており、不動産投資を扱う多くのお客様に関心をもっていただいております。
今回は、なかでもお問い合わせの多いLEED認証・WELL認証について、概略、世界の認証件数の分布、国内における建物用途ごとの認証件数をご紹介します。
LEED認証・WELL認証の概略
LEED®、WELLともに、米国発の環境認証制度です。投資においては、ESG(環境、社会、ガバナンス)に配慮した企業の価値が高まるなど、その考え方が広まっています。
- LEED®(Leadership in Energy and Environmental Design):
建築全体の計画段階から運用段階までにおける建物の環境性能を総合的に評価 - WELL:
建築そのものというよりも“利用者”の健康とウェルビーイング(身体・精神・社会的に良好)に与える機能を評価
ともに建築物の構造や設備のハード面のみでなく、ソフト面の評価も重視しているところに特徴があります。また、国際的な評価制度なので、海外へのアピールがしやすく、日本国内でもグローバル志向の企業や日本参入の動きがある外資系企業を中心に認証取得申請が増えています。
LEED認証、WELL認証件数の推移(日本国内)
参考:グリーンビルディングジャパンウェブサイト「グラフで見るLEEDとWELLの今 5月」をもとにビューローベリタスジャパンが編集
世界の認証件数の分布
LEED認証・WELL認証は国際的な環境認証制度ですが、日本以外の国の認証件数分布はどうなっているのでしょうか。下表は各累計認証件数です。
ともに米国発祥の認証制度であることから、米国の認証件数が非常に多いですが、EU主要国のLEED認証件数はアジアと大きく変わりません。アジアではLEED認証・WELL認証ともに中国がトップで、特にWELL認証に関してはアメリカを大きく凌ぐ認証件数です。日本はまだ、LEED認証、WELL認証ともにアジアのなかでも多くはありません。
世界におけるLEED・WELLの認証件数
■北米
国名 | LEED | WELL |
---|---|---|
アメリカ | 85,540 | 318 |
カナダ | 2,166 | 41 |
■中南米
国名 | LEED | WELL |
---|---|---|
ブラジル | 982 | ― |
メキシコ | 729 | ― |
チリ | 288 | ― |
コロンビア | 284 | ― |
■大洋州
国名 | LEED | WELL |
---|---|---|
オーストラリア | ― | 84 |
■欧州
国名 | LEED | WELL |
---|---|---|
スペイン | 878 | 98 |
フランス | ― | 95 |
イギリス | ― | 73 |
オランダ | ― | 53 |
イタリア | 746 | 31 |
ドイツ | 640 | ― |
スウェーデン | 426 | ― |
フィンランド | 372 | ― |
ポーランド | 287 | 34 |
アイルランド | 273 | ― |
ハンガリー | ― | 17 |
■中東
国名 | LEED | WELL |
---|---|---|
サウジアラビア | 1,195 | ― |
アラブ | 648 | ― |
■アジア
国名 | LEED | WELL |
---|---|---|
中国 | 6,887 | 724 |
インド | 1,773 | ― |
トルコ | 614 | ― |
香港 | 418 | ― |
台湾 | 312 | 23 |
韓国 | 402 | ― |
タイ | 274 | ― |
日本 | 271 | 64 |
国内における建物用途ごとの認証件数
国内の累積認証件数の用途別では、LEED認証・WELL認証ともにオフィスが最も多く、LEED認証ではオフィスに次いで商業施設、倉庫、住宅の件数が多く、その他用途では数件程度です。
WELL認証に関しては、オフィスの認証件数が圧倒的に多く、オフィス以外用途は差がなくすべて数件と、現時点では偏った分布となっていますが、健康経営への関心の高まりについて関連のある用途建物でもLEED認証同様、今後増えていくのではないかと考えられます。
参考:グリーンビルディングジャパンウェブサイト「グラフで見るLEEDとWELLの今 5月」をもとにビューローベリタスジャパンが編集
最後に
今回、世界の認証状況および建物用途の分布に的を絞ってご紹介しました。
ご質問や気になる点がございましたら、ご相談ください。
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