Case Study:株式会社北雄産業(ISO9001・ISO14001統合マネジメントシステム認証)
パイル界の「小さな巨人」を目指して、2つの認証を取得
株式会社北雄産業(北海道札幌市)
商社からメーカーへ
北雄産業は昭和44年に北海道札幌市でセメント・生コンクリートの商社として創業。大手セメントメーカーと特約店の契約を結び、順調に業績を上げた。
その一方で、創業者が「もの売りではなく、ものづくりがしたい」という強い希望を持ちメーカーとしての道を探ってもいたため、同社は設計者へ工法や技術について提案や支援をしながら販売を行うコンサルタント営業に長けており、それが取引先に重宝されていた。
やがて、同社に、新しい商品としてビルなどの建設に欠かせないパイル(杭)の話が持ち込まれた。本州のとある杭メーカーが、北海道の総代理店を同社に依頼してきたのだ。
同社は、技術や販売の指導を受けて販売を手掛けたのち、札幌市近郊に工場を建設して製造も行うようになった。
当初は生コンと杭の両方を製造していたが、生コンの価格が次第に不安定になり商売が難しさを増していたこともあり、杭の製造に特化していった。
新製品開発とライバル工法にも挑戦
昭和57年、大きな転機が訪れた。HEXA-Kパイルという六角形の中空節杭を開発したのだ。
それまで同社で製造販売していた三角形の節杭から六角形の形状に変更したHEXA-Kパイルは、一気に全国に展開した。昭和59年には建設大臣による工法認定を受け、昭和62年には東京支店を開設した。
このHEXA-Kパイルでの成功は、「製品およびそれを最適にする工法の研究開発の重要性」に気づくという副産物をもたらした。これを強化することで他社との差別化ができ、価格競争に巻き込まれない優位性をもつ企業になれる。また施工までの責任を設計者と共有できて信頼を得られる――そう確信した同社は杭自体と技術・工法の両方の研究開発に熱心に取り組み、その後もさまざまな新しい製品や技術を導入していった。
自社製品はJIS認証を取得した遠心成形PHC節杭の「HY-BSパイル」へと製造ラインを刷新。また新たに国土交通大臣認定工法「FP-BESTEX工法」を取得した。
その後も、多様な技術提案に対応するため大手杭メーカーと業務提携し、新たな製品や工法・技術を導入していく。羽根付き鋼管杭工法「G-ECSパイル工法」の北海道総代理店となり、これまで扱っていたコンクリート杭以外の分野においても、技術提案と施工を提供できる体制を構築していった。そして、九州佐賀県の企業と提携し、「柱状改良工法:SSコラム工法」の技術を獲得した。
「柱状改良工法:SSコラム工法」とは、硬い地盤の支持層までが比較的浅い場合に使われる基礎下の工法で、地盤に杭を打つのではなく、地下の地盤の弱い部分を柱状に固めてしまうやり方だ。つまり杭を不要にするライバル工法であり、普通に考えると杭の専業メーカーが提案するものではない。
「しかし、杭を不要とする工事のことは知りませんというのは、設計者にとって責任を果たしていないし、わが社の将来像にもかなっていないと思うのです」と清水泰雄副社長は言う。
清水副社長の言う「わが社の将来像」とは、「基礎下のことなら、製品から技術、工事まですべてを提供できる企業になること」だ。そのために地盤調査の会社も新たに立ち上げようとしている。 「要するに、地盤に関する工事のワンストップサービスができる企業になりたいのです」
ISO活用で目指す「基礎下のガリバー」
この「基礎下のことなら、製品から技術、工事まですべてを提供できる企業になる」という将来像を掲げてから、同社では今までに必要なかった分野の人材のリクルートや新たな営業体制の構築など、しなくてはいけない仕事が増えた。また取引先に対して果たす責任の幅も増えた。それをスムーズにしてくれるツールはないか?「その答えがISO9001と14001の取得だった」と清水副社長は言う。
「この時代にどんどん売り上げを伸ばすことは難しいから足元をしっかり固めるほうがいい。そのためには品質について自分たちできっちり把握するためのISO9001と、自分たちがかけている環境負荷を認識して軽減するためにISO14001を取得するのが得策だという判断でした」。
5人のメンバーのプロジェクト制でISO委員会を立ち上げて取り組んだ結果、専門家に知己を得たことと、コロナ禍で業務が軽くなったことにも助けられ、通常業務をこなしながら一気に2つの認証を取得できた。
取得したメリットについて尋ねると、「元々、工場はJIS基準でつくっており自信があったが、ISOに照らし合わせるといろいろな不備や不足が見つかったことをはじめ、いろいろな気づきがあったこと」という答えが返ってきた。
また社員のメンタルにも作用しているようで、「お客様の求めているものを、トータルな視点から提案できるようになってきたと感じる」と吉田智典技術営業部長は言う。
総務部の緑川課長も「実はエアコンの管理が法律化されていることを知りませんでした。指摘を受けて、今では必ずしています。総務部として法改正や要求事項についてしっかりと対応しなくてはいけないという意識が生まれました」と話してくれた。
このように、今は、認証を取得した2つのマネジメントシステムを部署ごとにどう取り入れるかを工夫している段階だ。 「こうした取り組みの結果、仕事の仕方や職場環境が変わり、それを評価してさらに優秀な人材が入社してくれるようになるといいのですが。それにすごく期待しています」と清水副社長は言う。
「北海道ではどこにも負けない基礎下工事の技能集団になる。そしてシェアで測れないステイタスを獲得する」それが同社の志すところだ。
2023年2月27日取材
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