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カバー画像(校舎廊下)

令和3年4月1日施行 改正バリアフリー法
~公立小学校等を建築物バリアフリー基準への適合義務の対象へ~

2021-10-11

公立小学校等を建築物移動等円滑化基準(いわゆる建築物バリアフリー基準)への適合義務の対象となる特別特定建築物に追加等する 「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令の一部を改正する政令」が 、令和3年4月1日に施行されました。

一定規模以上の建築をしようとするときに建築物移動等円滑化基準適合義務の対象となる特別特定建築物の範囲が拡大されることに伴い、バリアフリー法(*1)および政令が改正され、令和3年4月に建築物移動等円滑化基準適合義務の対象となる建築物として「公立小学校等(*2)」が追加されました。
特別支援学校に加えて、公立小学校等においても2,000㎡以上の建築を行う場合に適合義務が発生します。

(*1)バリアフリー法:高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律
(*2)公立小学校等:小学校、中学校、義務教育学校及び中等教育学校(前期課程に係るものに限る。)で公立のもの

 

改正以前は、「特別支援学校」のみが2,000㎡以上の建築物で建築物移動等円滑化基準への適合義務がある「特別特定建築物(*3)」として令5条に定められていました。その他の学校は、建築物移動等円滑化基準への適合努力義務がある「特定建築物(*4)」に定められていましたが、改正により、学校のうち「公立小学校等」が新たに「特別特定建築物」に追加されました。2,000㎡以上の公立小学校等を建築する場合は、建築基準関係規定として建築確認において適合確認が必要になります(法14条4項)。

対象建築物である「小学校、中学校、義務教育学校及び中等教育学校(前期課程に係るものに限る。)で公立のもの」における「公立のもの」とは、地方公共団体の設置する学校のみをいい、国の設置する学校は除くとされています。

なお、バリアフリー法では、主に「不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する」建築物に対して移動等円滑化基準が定められています。特定の多数が利用する建築物である公立小学校等は、そのままでは規定の適用をさせることができません。そのため、令23条では「不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する」を「多数の者が利用する」と読み替えて適用する規定が置かれています。

(*3)特別特定建築物:不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する特定建築物その他の特定建築物であって、移動等円滑化が特に必要なものとして政令で定めるものをいう(法2条19号)。
(*4)特定建築物:学校、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、ホテル、事務所、共同住宅、老人ホームその他の多数の者が利用する政令で定める建築物又はその部分をいい、これらに附属する建築物特定施設を含むものとする(法2条18号)。

 

表1 バリアフリー法の対象となる建築物

特定建築物の「学校」のうち、「公立小学校等」が新たに特別特定建築物に追加された

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特別特定建築物に追加された建物一覧表

国土交通省資料「バリアフリー法の概要について」をもとに編集

 

令和2年12月9日に公布された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令の一部を改正する政令」では、条例による規模の引き下げが増えることが予想され、それにより適合義務対象の建築物が増えることになるので、単なる緩和とも違うような印象があるかもしれません。

内容としては、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の第14条第1項により、特別特定建築物の政令で定める規模(2,000㎡)以上の建築をしようとするときは、当該特別特定建築物を、政令で定める建築物移動等円滑化基準に適合させなければならないとされています。加えて、同条第3項により、「地方公共団体は、条例で適合義務の対象規模を引き下げ、又は建築物移動等円滑化基準に必要な事項を付加することができる。」となっています。

現行の建築物移動等円滑化基準は2,000㎡以上の大規模の建築物を想定して定められているため、小規模の建築物に当てはめた場合に建築主等にとって過度に負担の生じるものとなる場合も考えられ、条例制定が進まない一因となっています。 このため、政令を改正し、地方公共団体がより柔軟に条例による規模引き下げを行うことができるよう、500㎡未満の小規模の特別特定建築物についての建築物移動等円滑化基準を見直すことになっています。

具体的な内容としては、条例対象小規模特別特定建築物についての建築物移動等円滑化基準を新設し、地方公共団体が条例で適合義務の対象となる建築の規模を500㎡未満で定めた場合における500㎡未満の特別特定建築物を「条例対象小規模特別特定建築物」といい、

  • 道等から利用居室までの経路のうち一以上を移動等円滑化経路とし、当該経路を構成する出入口、廊下、傾斜路、エレベーター、敷地内通路等を高齢者、障害者等が円滑に利用することのできるものとすること
  • 移動等円滑化経路を構成する廊下等、傾斜路及び敷地内通路の幅を90㎝以上とすること
  • 移動等円滑化の措置が取られたエレベーター等にはその旨の標識を設けること

等が定められています。

これら以外の基準については、地方公共団体が規模等を勘案して条例で設定することができます。
施行は令和3年10月1日です。

 

図1 移動等円滑化経路とは

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移動等円滑化経路について

出典:国土交通省資料「バリアフリー法の概要について」

 

図2 東京都のバリアフリー条例(高齢者、障害者等が利用しやすい建築物の整備に関する条例)

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バリアフリー化が義務付けされる用途(特別特定建物)

出典:東京都都市整備局 建築物バリアフリー条例パンフレット

 

建築認証事業本部 本多 徹

 


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