電波の免許制度と登録検査等

電波は限りある資源であり、複数の利用者が同じ周波数を利用すると混信が生じ、製品やシステムの障害を引き起こします。こうした障害の発生を防ぎ利用者が互いに円滑に利用できるよう、日本では総務省が電波法を基に電波を管理し、電波の利用に対し原則として免許取得を義務付けています。今号ではこの電波の免許制度と免許取得に必要な登録検査等(登録点検と登録検査)についてご紹介します。

電波法と無線局開設の免許

電波を利用するうえでのルールを定めた、基本的な法律が電波法です。電波法では無線局の利用、つまり無線局の開設には、総務大臣の免許が必要とされています。ここでいう無線局は送信機のみが対象で、受信機は含まれません。
私たちに身近な無線機器、IoT製品の多くは特定無線設備に分類され、技術基準適合証明や工事設計認証、いわゆる技適マークの認証を受けることにより、免許は不要とされています。一方、試験実験局や業務用無線、移動体通信の親局などの基地局をはじめとする無線局は免許が必要です。

1. 開設に免許が不要な無線局(特定無線設備)

  • 市民ラジオ
  • 微弱無線局(発射する電波が著しく微弱なもの) 例)自動車のキーレスエントリー、盗難防止装置
  • コードレス電話、PHS、特定小電力無線局など例) Bluetooth機器、Wi-Fi®機器、ワイヤレスマイク、トランシーバー
  • 登録局

2. 開設に免許が必要な無線局

1 基幹放送局(衛星基幹放送局及び衛星基幹放送試験局を除く。)
2 地上一般放送局、非常局、気象援助局、標準周波数局、特別業務の局、海岸局、基地局、携帯基地局、無線呼出局、陸上移動中継局、陸上局、移動局、特定実験試験局及び実験試験局
3 固定局
4 航空局、無線標識局、無線航行陸上局、無線標定陸上局、無線標定移動局及び無線測位局
5 海岸地球局、航空地球局、携帯基地地球局、携帯移動地球局及び地球局
6 船舶局(特定船舶局を除く。
7 船舶地球局(電気通信業務を行うことを目的とするものに限る。)
8 航空機局
9 航空機地球局
10 衛星基幹放送局、衛星基幹放送試験局、人工衛星局及び宇宙局
11 簡易無線局、構内無線局、陸上移動局、携帯局、遭難自動通報局(携帯用位置指示無線標識のみを設置するものに限る。)及び船上通信局
12 特定船舶局、船舶地球局(電気通信業務を行うことを目的とするものを除く。)、遭難自動通報局(携帯用位置指示無線標識のみを設置するものを除く。)及び無線航行移動局
13 アマチュア局
14 特定無線局

出典: 総務省 電波利用ウェブサイト https://www.tele.soumu.go.jp/j/download/proc/

免許を受けずに電波を利用した場合は電波法上違反とみなされ、厳しく罰せられます。免許は無線局、つまり無線機器ごとに取得するものですが、携帯電話の端末やMCA無線と呼ばれるデジタル業務用無線は、ひとつの免許で複数の局を利用できる包括免許が適用され、個別に免許を受ける必要がありません。携帯電話の端末は、通常移動体通信事業者(携帯電話会社)が包括免許を取得しているため、ユーザ側が免許を意識することなく使用できます。

3. 無線局開設の免許取得

無線局開設の免許を取得するには、まず総務省の各総合通信局に申請を行います。申請から免許取得までの流れは以下のとおりです。

無線局 申請から免許取得までの流れ

  1. 申請書は、総務省の地方支分部局である総合通信局を経由して総務大臣に提出します。個人、法人、任意団体のいずれも申請可能です(ただし、日本国籍を有する方である必要があります)。
  2. 提出された申請書類は、総合通信局で審査を受け、電波法令に適合すると判断されれば予備免許が交付されます。
  3. 予備免許を受ければ無線局開設の工事が可能となりますが、工事完了後落成検査を受けます。
  4. 落成検査に合格後、免許状が交付されます。

■ 登録検査と登録検査等事業者制度

登録検査等事業者制度により総務大臣の登録を受けた登録検査事業者および登録外国検査事業者が、無線設備等の検査を行い、所定の時期までに総務省に対して検査結果証明書または点検結果通知書を提出することで定期検査を省略することができます。また新設、変更に係る手続きも同様です。ただし、以下のものは、人の生命または身体の安全の確保のため、その適正な運用の確保が必要な無線局として、登録検査等事業者は検査できません。

登録検査等事業者等規則(平成9年郵政省令第76号)

第十五条 法第七十三条第三項の総務省令で定める無線局は、次の各号のいずれかに該当する無線局とする。

一 法第百三条の二第十四項各号に掲げる者が専ら当該各号に定める事務の用に供することを目的として開設する無線局その他これらに類するものとして電波法施行令(平成十三年政令第二百四十五号)第十二条各号に掲げる無線局
二 法第百三条の二第十三項第一号及び第二号に掲げる無線局
三 地上基幹放送局
四 船舶局(旅客船の船舶局に限る。)
五 航空機局
六 地球局(放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第三号に規定する一般放送及び同条第十三号に規定する衛星基幹放送の業務の用に供するものに限る。)
七 航空機地球局
八 船舶地球局(旅客船及び第一号の無線局を開設する船舶の船舶地球局に限る。)
九 人工衛星局(放送法第二条第三号に規定する一般放送の業務の用に供するものに限る。)
十 衛星基幹放送局
十一 前号までに掲げる無線局の他、無線局の目的及び利用方法を勘案して、総務大臣が別に告示する無線局

無線局の登録検査には、無線局新設時の落成検査をはじめ以下のようなものがあります。

落成検査 無線局の新規開設時の検査
変更検査 無線局変更時の変更検査
定期検査 無線局が免許の内容および電波法令の事項に適合しているかどうかを定期的に確認する検査。無線局の種別により5年、3年、2年、1年の周期が決まる。
臨時検査 無線局が違法又は違法のおそれがあるような場合に、国(検査職員)が直接無線局の設置場所等に立ち入り、無線局が法令に定める事項に適合しているかを確認する検査

上記のうち国が行う臨時検査以外の検査は登録検査等事業者が実施できますが、登録検査等事業者には測定器を利用して電気的特性等の確認を行う点検だけが行えるものと、点検のみならず点検後の判定を行う検査までを行えるものがあります。

実験試験局・特定試験局の免許取得

実験や試験、調査を目的に無線を利用したい場合、実験試験局の制度があります。実験計画に応じて使用周波数や使用地域等の選択が可能で、通常の無線局開設と同じ手続きで免許が取得できます。「他の無線局の運用に妨害を与えない」ことが運用の条件となります。
こうした実験試験局の制度を柔軟に運用可能にしたのが特定実験試験局です。無線局が、総務省が公示する周波数・地域・空中線電力の範囲で開設する等の一定の基準を満たした場合は、審査が簡素化されるほか、予備免許と落成検査が省略され(ただし、登録検査等事業者による事前点検が必要)、申請から免許取得までの期間を大幅に短縮できるため、大学やメーカーの研究機関等での迅速な技術開発や製品化を促進するメリットがあります。

ビューローベリタスは、総務省関東総合通信局長の登録を受けた登録検査等事業者として、全国の無線局を対象に登録点検および登録検査を実施しています。イベント等を目的とした周波数の、一時使用の免許取得のための特殊な点検および検査や総務省との調整でも実績が豊富です。また用語の説明やコード表の解釈、総務省との相談等申請に関するサポートを承っております。

消費財検査部門 EAW事業部 小倉 富規子

 


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