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建築図面

平成30年改正建築基準法 令和元年6月25日施行の内容について~規制緩和

2019-08-09

平成30年改正建築基準法で令和元年6月25日施行の内容について、2019年6月10日に国土交通省が開催した説明会の資料より規制緩和となる部分を抜粋し、ご紹介します。この規制緩和により、木造建築物における設計の自由度が広がります。

1. 主要構造部規制の見直しについて

(1)木造建築物等に対する基準

中層建築物の壁、柱等についてはすべて耐火構造とすることが必要ですが、木造の場合は石膏ボード等の防火被覆により耐火構造としなければならず、木の良さが実感できないといった指摘がありました。今回、木造建築物に対する基準が見直され、燃えしろ設計により木材をあらわしのまま設計できることとなりました。
例えば、4階建ての事務所は一定の区画ごとにスプリンクラーを設置し、75分準耐火構造とするなどの燃えしろ設計が可能となりました。
また、耐火構造としなくてよい木造建築物の範囲が拡大され、改正前は高さ13m以下かつ軒高9m以下だった規定が、改正後は高さ16m以下かつ3階以下で、延焼防止上有効な空地を確保すれば耐火構造としなくてよいとなりました。

改正後の法第21条第1項の規定に適合する建築物の具体例です。
① 4階建ての木造建築物の場合
主要構造部等への要求性能は主要構造部の壁、柱などは75分準耐火構造、階段室の壁90分準耐火構造とし、外壁開口部(他の外壁の開口部から火炎が到達するおそれがある開口部に限る)は20分防火設備、内部の区画開口部は75分防火設備が必要です。
条件となる仕様は

  • スプリンクラー設備や自動火災報知設備の設置
  • 床面積の合計200㎡以内ごとに75分準耐火構造の床、壁または随時閉鎖の75分防火設備による区画がされていること(但し、常時閉鎖の場合は500㎡以内ごとの区画でよい)
  • 天井の仕上げは準不燃材料にする

などです。
ただし、可燃物の多い倉庫や、自動車車庫などは除かれます。

防火・準防火地域における延焼防止性能の高い建築物の技術的基準を新たに整備

② 3階建ての建築物
高さ16mを超える木造建築物については改正前の令第129条の2の3の基準(1時間準耐火構造、敷地内通路3mの確保など)と同一です。

③ 2階建て・平屋の建築物
高さ16mを超える木造建築物については改正前の令第129条の2の3の基準(防火構造、内装制限など)と同一です。

(2)法第21条第1項の規制対象外となる「空地」

【背景】

① 法第21条第1項は、大規模の木造建築物で火災が発生し、火災の最中に当該建築物が倒壊することにより周囲へ延焼することの防止を目的としています。

② 建築物の周囲に延焼防止上有効な空地がある場合には、同項の規定は適用しないこととしており、火災時に建築物が倒壊した場合に周囲に加害を生じない範囲として、「空地」の具体的な範囲を定める必要があります。

【見直しの考え方】

倒壊の際に影響のある最大の範囲は、建築物がそのまま真横に倒壊した場合における範囲であり、建築物の各部分からその「高さ」と同じ長さの「水平距離」で囲まれた範囲となります(図1)。

倒壊の際に影響のある範囲


【見直し内容】

法第21条第1項ただし書に基づき政令で定める延焼防止上有効な空地に関する技術的基準は、①敷地内に設けられた空地であること、②建築物の各部分からの水平距離が当該各部分の高さに相当する距離以上であることとされています。

(3)防火地域等における建築物に対する規制

① 防火・準防火地域における延焼防止性能の高い建築物の建蔽率が緩和されました(図2)。

防火・準防火地域における延焼防止性能の高い建築物の建蔽率緩和


② 防火・準防火地域における延焼防止性能の高い建築物の技術的基準が新たに整備されました(図3)

防火・準防火地域における延焼防止性能の高い建築物の技術的基準

(4)防火・準防火地域における延焼防止性能の高い建築物の技術的基準を新たに整備

改正前はすべての壁・柱等に対し、一律に耐火性能を要求されていましたが、外壁や窓の防火性能を高めることにより、内部の柱等に木材を利用できる設計が可能となりました。
法第61条では、「壁、柱、床、その他の建築物の部分及び防火設備について、通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない」とされています。

① 3階建ての耐火建築物相当(防火地域/準防火地域の1,500㎡超)の建築物
共同住宅、ホテル等の場合、主要構造部等への要求性能について、外壁は90分準耐火構造、外壁開口部は20分防火設備、間仕切壁、柱などは60分準耐火構造が求められ、条件となる仕様は、延べ面積3,000㎡以下、外壁の開口部はセットバック距離に応じた開口率算定やスプリンクラー設備の設置などその他告示で定められています。
セットバック距離に応じた開口率の算定については告示に定められており、各階における外壁の開口部の面積の合計の当該外壁の面積に対する割合が、告示の表の区分に応じて、それぞれ同表に定める数値以下であることとされています。
またセットバック距離とは、当該外壁の開口部から隣地境界線、当該建築物と同一敷地内の他の建築物(同一敷地内の建築物の延べ面積の合計が五百平方メートル以内である場合における当該他の建築物を除く。)との外壁間の中心線又は道路中心線までの水平距離を表すものとする、とされています。

防火・準防火地域における延焼防止性能の高い建築物の技術的基準を新たに整備

② 3階建ての準耐火建築物相当(準防火地域)の建築物

準防火地域における3階建ての建築物(延べ面積500㎡以下)については、改正前の令第136条の2の基準(防火構造等)と同一です。

(5)区画材としての「防火床」の追加

【改正前】

延べ面積が1,000㎡を超える建築物について、耐火建築物や準耐火建築物である場合等を除き、防火上有効な構造の防火壁によって有効に区画し、かつ、各区画の床面積の合計をそれぞれ1,000㎡以内としなければならないとされていました(図4)。

延べ面積が1,000㎡を超える建築物


【改正後(追加)】

① 防火上有効な構造の防火床による区画も可能となりました(図5・図6)。

② これにより、同一階での壁の区画ではなく、1階RC造・2階木造といった床による区画の形成が認められることとなるため、同じ延べ面積の建築物であっても、ひとつのフロアを広く利用することができるようになることが期待されます。

防火上有効な構造の防火床による区画も可能
 

上階延焼を防止するために必要な具体的な装置

区画材としての「防火床」の追加
※1:防火床の中心線から5メートル以内の範囲。
※2:屋外側の部分の仕上げを準不燃材料とする。
※3:屋外側の部分の仕上げを不燃材料とする。
※4:裏側の部分の仕上げを不燃材料とする。

防火床は耐火構造とすること(防火床を支持する壁・柱・はりを含む)

分類① 突出タイプ:床を突出(1.5m)させ、床の上方5mの外壁を防火構造+防火設備(20分)とする等の上階延焼防止措置を行う

分類② 耐火帯タイプ(下階強化):耐火構造の外壁(防火床から下方5m)+防火設備(20分)

分類③ 耐火帯タイプ(全体強化):準耐火構造の外壁(防火床から上方および下方5m)+防火設備(20分)

(6)法第6条の改正により建築確認の特例の対象となる、法第6条第1項4号の建築物

法第6条の改正により、建築確認の特例の対象となる法第6条第1項4号の建築物の対象面積も100㎡から200㎡となりました。なお、法第6条第1項第1号の改正に関しては、以下の点に留意してください。1号建築物として確認済証を交付されたが、4号建築物として中間検査または完了検査を申請するケースで、施行日以前にいわゆる1号建築物であったものについて、中間・完了検査においていわゆる4号建築物として審査の特例を受けようとする場合には、設計が建築士によって行われ、工事が法第7条の5に基づき、建築士である工事監理者によって設計図書のとおりに実施されたことを確認する必要があります。

(7)耐火建築物等とすることを要しない小規模建築物に関する基準について

法第27条第1項の規定に基づく建築物で、3階建・200㎡未満の建築物であって耐火構造としないものについては、建築物の利用状況に応じて、以下の対策が必要となります。

① 就寝利用する建築物の場合は、警報設備の設置

② 就寝利用する建築物や自力避難困難者が利用する建築物の場合は、竪穴部分への間仕切壁・戸(竪穴区画)の設置

【警報設備の設置を要する用途】
警報設備の設置を要する用途

【消防法令上の警報設備の区分】
消防法令上の警報設備の区分

【見直し内容】

① 警報設備の設置・構造に関する基準について、下記の項目に関する基準が定められました。
・警戒区域 ・感知器の設置箇所
・非常電源
・天井高等に応じた感知器の種別など

② 具体的には、消防法令における自動火災報知設備に関する技術的基準(消防法施行令第21条)、特定小規模施設用自動火災報知設備に関する技術的基準(特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令)などを踏まえた内容となっています。


特定の小規模な特殊建築物のうち、法別表第一い欄(二)項のうち一部の用途については、警報設備を設けることで主要構造部の規制を受けないこととすることができるものとしています。
「児童福祉施設等」のみは就寝利用するものと通所利用するものが混在しているため、「入所する者の利用する寝室」がある場合をもって就寝利用するものとして指定することとしています。
なお、ここでいう「入所する者」とは、対象用途の本来目的に応じて施設を利用する者のことを意図しており、具体的には、老人ホーム等の居住型の入所施設や、老人短期入所施設(ショートステイ)等の短期宿泊型の入居施設などを想定しています。
令第112条第11項および第12項の規定は、特定の小規模な特殊建築物のうち一定の用途については、避難に要する時間を考慮してさらなる安全措置を求めることとし、避難経路となる階段等の竪穴部分について、一定の区画を求めることとしたものとして新設されました。
具体的には、病院や診療所(患者の収容施設があるものに限る)や児童福祉施設等(入所する者の寝室があるものに限る)など避難に時間を要する用途として、もっぱら高齢者等の自力避難困難者が就寝利用するもの(第11項)と、それ以外の用途であってホテルや旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎や児童福祉施設(通所用途)など就寝利用するものおよびもっぱら高齢者等の自力避難困難者が通所利用するもの(第12項)とを対象として、表のとおり、それぞれに必要な区画の性能が定められています。
これらの規定における「間仕切壁」や「戸」については、特定の時間を要求していませんが、ふすまや障子などのように火災時の接炎によって直ちに火炎が貫通するおそれのあるもの(厚さ3㎜程度の合板等で造られた壁や普通板ガラスの扉など)は対象外としており、例えば、両面に厚さ9.5㎜以上の石膏ボードを張っている間仕切壁や、フラッシュ戸などを用いることが想定さます。
さらに、第11項・第12項で区画として用いる防火設備・戸については、竪穴部分が火煙によって汚染されることを防ぐためのものであることから、第18項の規定に基づき、煙感知による自動閉鎖機構と遮煙性能の確保を求めることとしています。

【用途ごとに求められる区画等】
用途ごとに求められる区画等

 

今回の説明内容は、検討案の情報ですので、内容が変わる場合もあります。最新情報を確認のうえ、設計または工事施工されますようご注意ください。
 

【参考資料】
国土交通省 平成30年改正建築基準法に関する説明会(第3弾)(審査者向け)資料
「平成30年改正建築基準法・同施行令等の解説」
「平成30年改正建築基準法・同施行令等の解説 補足説明資料」

建築認証事業本部 本多 徹

 


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