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建築戸建

「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律案(「パリ協定」の目標達成等に向け、住宅・建築物の省エネルギー対策を強化)」の概要

2019-04-10

平成27年(2015年)7月に平成27年法律第53号「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(以下「建築物省エネ法」)が制定、平成31年(2019年)2月15日に衆議院にて閣法第27号「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律案」が国会提出・閣議決定されました。その概要についてご紹介します。
法施行は交付日から6ヶ月以内(一部2年以内)となっているため、詳細については、公表され次第解説いたします。

1. 特定建築物の範囲の拡大

建築物エネルギー消費性能基準への適合義務等について、非住宅部分のエネルギー消費性能を特に確保する必要があるとして、対象となる特定建築物の範囲が拡大されます。
平成31年2月14日現在で特定建築物は大規模建築物に分類される「一定規模以上の非住宅建築物(政令:2,000㎡)」となっておりますが、法改正により中規模建築物(延べ面積300㎡以上2,000㎡未満)まで拡大されます。

2. 複数建築物の連携による取り組みの促進

省エネ性能の向上に資する建築物の新築又は増築・改築・修繕・模様替え、もしくは建築物への空調設備等の設置・改修(「新築等」)について、当該計画が一定の誘導基準に適合していると判断できる場合、当該計画の認定を行うことができるようになっています。また認定を取得した場合、建築物の容積率算定基礎となる延べ面積には、性能向上計画認定に係る基準に適合させるための措置をとることにより、通常の建築物の床面積を超えてしまう場合には施行令第13条で定める床面積(省エネ性能向上のための設備について、通常の建築物の床面積を超える部分(建築物の延べ面積の10%を上限))は算入しないことができます。(第35条)
改正法律案では、申請に係る建築物(「申請建築物」)以外の建築物(「他の建築物」)のエネルギー消費性能の向上にも資するよう、当該申請建築物の自他供給型熱源機等を設置しようとするときは、建築物エネルギー消費性能向上計画に国土交通省令で定める事項等の事項を記載することができる、とされました。(第29条)
これは「複数の建築物の省エネ性能を総合的に評価することで高い省エネ性能を実現しようとする取組を促進」することが目的とされています。複数の建築物で連携した、地域冷暖房などの大規模な高効率熱源システムなどを計画する場合などで優遇されていくものとみられます。

3. 計画の届出制度の合理化

建築物エネルギー消費性能基準への適合性に関する審査であって、建築物エネルギー消費性能適合性判定に準ずるものとして国土交通省令で定めるものの結果を記載した書面を併せて提出する場合においては、建築主による建築物のエネルギー消費性能の確保のための構造及び設備に関する計画の所管行政庁への届出期限を3日以上21日未満の範囲内で国土交通省令で定める日数前までとする、とされています。
届出は、住宅では300㎡以上、非住宅は300㎡以上(基準適合義務対象を除く)の新築・増改築において行いますが、その工事に着手する21日前までに所管行政庁へ届け出ることとなっていました。改正では、所管行政庁の業務負担軽減と基準不適合物件等への対応強化を目標とし、この届出前に民間審査機関で評価を行うことができるようになります。

4. 小規模建築物のエネルギー消費性能に係る評価および説明

小規模建築物の新築等に係る設計を行う建築士は、当該小規模建築物の建築物エネルギー消費性能基準への適合性について評価を行うとともに、当該設計の委託をした建築主に対し、当該評価の結果(基準に適合していない場合にあってはエネルギー消費性能の確保のためとるべき措置を含む)について書面を交付して説明をしなければならないものとすること、とされています。
小規模建築物とは延べ面積300㎡未満の建築物を指します。建築士に対して、建築主の意向を把握し建築主に省エネ基準への適否等の説明をすることを義務付ける制度が創設されます。建築主の行動変容を促すことが目的とされています。

5. トップランナー制度の適用範囲の拡大

「住宅事業建築主」規定は削除され、新たに「特定建築主」及び「特定建設工事業者」が追加されました。これはトップランナー制度への対象拡大を図るものと考えられ、「トップランナー制度の対象に、注文戸建住宅・賃貸アパートを供給する大手住宅事業者を追加」と説明されています。

[削除]
住宅事業建築主:住宅の建築を業として行う建築主(第6条第1項)

[追加]
特定建築主:自らが定めた一戸建ての住宅の構造及び設備に関する規格に基づき一戸建ての住宅を新築し、これを分譲することを業として行う建築主であって、その新築する当該規格に基づく一戸建ての住宅(分譲型一戸建て規格住宅)の個数が政令で定める数以上であるもの(第26条の2)
特定建設工事業者:自らが定めた住宅の構造及び設備に関する規格に基づき住宅を新たに建設する工事を業として請け負う者であって、その新たに建設する当該規格に基づく住宅の戸数が政令で定める住宅の区分ごとに政令で定める数以上であるもの(第28条の2)

建築認証事業本部  江口 悠貴

 


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