エンタープライズリスク

AIの急速な拡大への備え「AIガバナンスとISO42001」の最前線

2025-11-18

近年、生成AIが進化を続け、業務効率化から戦略的活用まで、企業のAI導入は加速度的に進んでいます。しかしその裏で、情報漏洩、差別、説明責任の不在など、見過ごせないリスクが浮上していることも事実です。

AI時代におけるリスクマネジメントとガバナンス構築の重要性について、国際規格ISO42001と国内外の法制度を軸に、AI活用の「守り」と「攻め」を解説します。

ガバナンスは「ブレーキ」ではなく「ガードレール」

 AIガバナンスは「挑戦を支える枠組み」であり、企業が安心してAIを活用するためには、事故を未然に防ぐガードレールのような仕組みが必要です。

経済産業省が発行した「AI事業者ガイドライン」では、AIガバナンスは“リスクを受容可能な水準で管理し、便益を最大化する技術的・組織的・社会的システムの設計と運用”と定義されています。つまり、リスクをゼロにするのではなく、リスクと便益のバランスを取ることが本質です。

日本企業のAI活用は「効率化」重視

PwC Japanグループの調査によると、2025年春時点で日本企業の76%が生成AIを活用中または推進中です。業務効率化を目的とした導入が多く、人手不足や働き方改革への対応が背景にあるといえます。

一方、米国企業ではAIを業界構造の変革手段と捉え、戦略的な活用が進んでいます。ガバナンス体制についても、「十分に機能している」と回答した日本企業が14%だったことに対し、米国や欧州では50%を超えており、日本企業の対応の遅れが懸念されます。

参考:PwC Japanグループ「生成AIに関する実態調査2025 春 5カ国比較」 

ISO42001で「守りの仕組み」を整える

ISO42001は、AIマネジメントシステムの国際規格として2023年に発行されました。PDCAサイクルに基づき、AIの利活用に伴うリスクと機会を体系的に管理する仕組みを提供しています。

特徴は、附属書Aに記載された39の具体的な管理策で、企業は自社の状況に応じて「適用宣言書」を作成し、リスク対応計画を策定します。これは、単なるチェックリストではなく、AI活用の「設計図」として機能します。 

AI推進法とEU規制法の違い

国内では2025年5月に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(通称:AI推進法)が参議院本会議で可決、成立しました。研究開発と活用の促進を目的としつつ、悪質な利用に対しては調査・指導を行う枠組みを整備しました。
一方、欧州のAI規制法(EU Artificial Intelligence Act)はリスクベースアプローチを採用し、違反には最大60億円の制裁金が科される可能性があります。

日本企業がグローバル展開する際には、欧州のAI規制法が適用対象となる可能性があるため、海外拠点のモニタリング体制の整備が必要です。 

リスクと求められる対策

リスク

主な対策:技術的

主な対策:組織的

個人情報や
機密情報の流出

・セキュアな環境の構築
・情報漏洩がないか、の確認

・組織の役割分担、ガバナンス体制の構築
・方針、ガイドライン等のルール策定

誤情報の提供や
著作権侵害

・誤った学習データに基づき事実と異なる情報を提供していないか
・既存の著作権物を学習し、類似した作品を生成していないか、の確認

・社員研修
・利用ログのモニタリング

不適当、不適切な表現

中傷や差別など倫理に反した使用をしていないか、の確認

 


事例として、AIの誤認識による自動車減速、匿名アカウントの特定によるプライバシー侵害、クレジットカードの与信枠における性別差別など、AIが引き起こすリスクは多種多様です。これらは、AIの判断根拠の不透明性や、学習データの偏りが原因であり、説明責任や公平性の確保が重要であることを示しています。 

横断的組織の体制構築が鍵

AIガバナンスの推進には、経営企画、法務、IT、サステナビリティ、広報、内部監査など、複数部門の連携が不可欠です。特に、AIの設計・開発だけでなく、教育・リテラシー向上、外部委託管理、ステークホルダーへの説明責任など、全社的な取り組みが求められます。

まとめ

AIの利活用は、企業の競争力強化や業務効率化に大きな可能性をもたらします。しかし、リスクを軽視すれば、情報漏洩や差別、説明責任の欠如など、深刻な問題につながりかねません。

ISO42001の導入やAI推進法の活用を通じて、企業はAIを「管理可能なテクノロジー」として社会と協調しながら発展させていくことが求められています。 

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