製品認証

製造業の品質保証を支える EN 10204 Type 3.2 ― その本質と実務対応のポイント

2026-03-18

欧州を中心に広く採用される材料証明書規格 EN 10204ですが、なかでもType 3.2 Inspection Certificateは最も厳格な位置づけにあります。
製造業、とりわけ重工業、鉄鋼、エネルギー、化学プラント、輸送機器といった産業では、近年このType 3.2証明書の重要性が増しています。

本記事では、なぜType 3.2が求められるのか、Type 3.1との違い、実務対応のポイント、複雑商流における注意点などを解説します。

EN 10204とは

EN 10204は、金属製品を中心とした材料に対し、購入者へ提供すべき検査文書の種類と内容を体系化した欧州規格で、対象となる製品は以下のとおりです。

  • プレート(鋼板)
  • バー材
  • 鍛造品
  • 鋳造品
  • パイプ・チューブ
  • ワイヤー
  • 溶接棒 など

非金属材料にも適用されるケースがある一方、配管ユニットや圧力容器などの組立品には適用されません。
EN 10204は、製品仕様書(Product Specification)とセットで運用されます。つまり、単体で品質要求を完結させるのではなく、規格や顧客要求と整合しながら材料の適合性を証明するための仕組みです。

Type 2.1, 2.2, 3.1, 3.2 の違い

EN 10204には、4つの文書ランクがあります。

タイプ検査区分誰が検証するのか実務上の特徴
2.1非特定検査製造者書類のみの最も簡易な証明
2.2非特定検査(簡易試験含む)製造者メーカーの標準試験結果を添付
3.1特定検査製造部門から独立した検査担当者製品固有ロットの試験結果を証明
3.2特定検査(第三者立ち合い)製造者+購入代表、または第三者機関最も厳格で、第三者検査の署名が必須

Type 3.2は、検査結果が正しいだけでなく、その検査プロセスを第三者が監査・立会いした事実そのものも価値となるため、欧州向け化学プラント、圧力設備、エネルギー設備(火力・原子力)、大規模インフラなど、高い安全性が求められる分野で多く採用されています。

Type 3.2の本質 — 信頼性の外部証明

Type 3.2が3.1と根本的に異なる点は、文書の信頼性が製造者の自己完結で終わらないことです。

Type 3.2 = 製造者の検査 + 第三者または購入者代表の検証

このダブルチェックが国際取引において強い効力を持ち、海外案件では、以下の理由でType 3.2が求められます。

  • 製造国が異なる・・・信頼確保のため第三者を介在させたい
  • 装置の故障が重大事故につながる・・・リスク低減策として厳格な証明書を要求
  • 国際規格・プロジェクト仕様で明記されている

特に、CE MarkingやNotified Bodyの関与が必要な案件では、第三者検査機関による立会いの有無が文書の有効性に直結します。

実務対応のポイント — 3.2は後付けできない

実務でよく発生するトラブルのなかで、特に重要なポイントは以下のとおりです。

  • 在庫品にType 3.2証明書は発行できない
    EN 10204の証明書は、購入者の注文を受けて発行されるため、顧客が定まっていない在庫品には原則Type 3.2証明書の発行は不可となります。
  • 出荷済みの材料にType 3.2を後付けることはできない
    すでに製造・出荷された製品に第三者が関与しても、元の3.1証明書が3.2に書き換わることはありません。
  • 中間業者(商社)がType 3.2文書を発行することはできない
    Type 3.2を発行できる主体は製造者のみであり、商社や卸業者は提供されている文書の複製配布しかできません。

マルチサプライチェーンでの注意点

大型プラント案件では、複数の加工会社やサプライヤーが関わることが通例であり、この場合Type 3.2発行において重要となるのはトレーサビリティの確保です。

  • 加工が材料特性に影響する場合
    加工業者は “製造者”として新たに材料証明書を発行する必要があります。
  • 加工が特性に影響しない場合
    加工業者は製造者とは見なされず、Type 3.2証明書の新規発行・書き換えはできません。

また、複数の業者を経由するほど、ロット番号、ヒート番号、ミルシート原本、追加試験データの紐づけが失われやすくなります。
そのため、マルチサプライチェーンでは事前に第三者検査機関へ相談することが重要です。

Type 3.2発行までのプロセス

Type 3.2証明書発行フローをわかりやすく記載します。
このプロセスを欠くと、文書が形式的に3.2であっても有効な3.2と見なされませんので注意が必要です。

  1.  購入者から製造者へ材料発注(Type 3.2指定)
  2. 同時に 第三者検査機関へ検査発注
  3. 製造開始前/製造中に第三者が立会い
    ・試験片採取
    ・機械試験
    ・外観検査
    ・マーキング確認
    ・寸法検査
    ・非破壊検査
    ・耐圧試験
  4. 合格品に第三者スタンプ(例:BVマーク)
  5. 製造者と第三者の署名入り Type 3.2証明書を発行

材料スペック記載のルール — 顧客要求が絶対

  • 証明書に記載できるスペックは 顧客要求のみ
  • 顧客がJISのみ要求した場合、ISOを併記することは不可
  • 複数スペック併記の場合は 全ての規格に適合した試験結果が必要

スペック欄は単なる情報記載ではなく、適合性証明の根拠となるため、規格運用上きわめて重要です。

EN 10204とISO 10474の違い

両規格は目的・運用上ほぼ同等で、実務レベルでは高い互換性があります。ただし、プロジェクト仕様書でいずれかが指定されている場合は、明確な区別が必要です。

  • EN 10204:EU圏向け、またはEU圏外からEU圏へ供給する際に使用
  • ISO 10474:国際規格として世界中で使用、主にEU圏外での採用が多い

まとめ

Type 3.2文書は、単なる書類ではなく製品安全と国際取引の信頼性を担保するための最終証明です。

現場の実務では、

  • 在庫品への後付け不可
  • 中間業者は発行不可
  • トレーサビリティの確保が最重要
  • 仕様変更は顧客要求が絶対
  • 複雑商流ほど事前調整が必須

といったポイントを押さえることで、トラブルを未然に回避し、スムーズな案件進行が実現できます。

Type 3.2やそのほか製品認証について、ご不明点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

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