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IATF 16949認証ルール第6版のポイントを押さえる

2026-10-06

IATF 16949は、自動車産業の品質マネジメントシステムに関する国際規格です。
一方、IATF 16949認証の取得・維持に関する審査および認証手続きは、「IATF承認取得・維持ルール」に基づいて実施されます。

同ルール第6版は2024年4月に発行され、2025年1月1日から適用されています。認証審査の日程管理、審査前の情報提出、リモート支援事業所の取り扱い、不適合への対応など、認証を取得している組織にも関係する重要な要求事項が盛り込まれています。

本記事では、2026年7月時点で公表されていたIATF承認取得・維持ルール第6版、Sanctioned Interpretations(SI)およびFrequently Asked Questions(FAQ)に基づき、認証組織に関係する主な事項を解説したものであり、IATFが発行する正式文書に代わるものではありません。実際の対応にあたっては、IATFが発行する正式文書および最新版のSI・FAQをご確認ください。

認証ルールは認証組織にも関係する

IATF 16949認証に関するルールは、認証機関に対する要求事項だけでなく、認証を取得・維持する組織に求められる事項についても定めています。
認証組織に関係する主な事項として、次のものが挙げられます。

  • 認証審査に必要な情報を期限内に提出する
  • 組織、所在地、認証範囲、支援機能などに重要な変更がある場合は、認証機関へ通知する
  • 審査対象となる自動車向け製造工程を、審査中に稼働している
  • 顧客パフォーマンスやIATF OEMのスコアカードに関する情報を提供する
  • 不適合に対し、定められた期限内に対応する
  • リモート支援事業所と製造サイトとの相互作用を明確にする

そのため、認証維持を担当する部門は、IATF 16949規格の要求事項に加え、認証ルールのうち組織に関係する内容を理解し、年間の認証維持計画に反映することが重要です。

認証組織が確認すべき5つのポイント

1.審査期限を把握し、早期に日程を確保する

ルール第6版では、製造サイトのサーベイランス審査は原則として12ヶ月ごとに実施することが求められており、審査実施可能期間は基準日の前後3ヶ月とされています。
実施可能期間は従来より柔軟になった一方で、この期間内に審査を実施できなかった場合、認証の取り消しになります。

更新審査についても、前回のステージ2審査、認証機関変更審査または更新審査の最終日を起点として、定められた期間内に審査を完了しなければなりません。審査期限の直前に日程調整を開始すると、次のような理由により、期限内に審査を実施できないことがあります。

  • 必要な資格を持つ審査員を確保できない
  • 自動車向け製品の生産予定と審査日が合わない
  • 関連するリモート支援事業所の審査が完了していない
  • 審査に必要な事前資料がそろっていない
  • 追加の審査工数が必要であることが直前に判明する

特に、自動車向け製造工程が審査当日に稼働していない場合、その工程を審査できません。受注状況や顧客からの部品支給状況によって生産日程が左右される組織では、認証機関と早い段階から調整しておく必要があります。

【確認しておきたい事項】

  • 審査の基準日と最終審査可能日を把握しているか
  • 次回の審査日程について、認証機関との調整を開始しているか
  • 審査当日に自動車向け製造工程を稼働できるか
  • 製造サイトに先行して審査を実施すべきリモート支援事業所がないか
  • 通訳や技術専門家などの手配が必要ではないか

品質保証部門だけでなく、生産管理部門、製造部門、海外拠点、リモート支援事業所などの関係部門を含め、早い段階から準備と調整を進めることが重要です。

2.事前提出資料の期限と内容を確認する

認証機関が適切な審査計画を策定するためには、組織から必要な情報を事前に提出する必要があります。

ビューローベリタスジャパンでは、審査開始日の40日前を目安に事前資料の提出をお願いしています。提出された情報をもとに、審査対象、審査工数、審査員の構成などを検討し、原則として審査開始日の14日前までに審査計画を提供します。

事前提供資料には、主に次のような情報が含まれます。

  • 組織名、所在地および従業員数
  • 認証範囲
  • 製品、製造工程およびシフト体制
  • 自動車産業の顧客
  • 顧客パフォーマンスおよびIATF OEMのスコアカード
  • 顧客固有要求事項への対応状況
  • 外部委託プロセス
  • リモート支援事業所と支援機能
  • リモート支援事業所に関する審査資料(計画書、報告書、不適合報告書など)
    ※ビューローベリタスジャパンとの審査契約外の場合
  • 前回審査以降の重要な変更事項
  • 審査で使用する言語
  • 通訳または翻訳機器を必要とする従業員の状況
  • OEMによる特別な状態や監視状態の有無
  • 前回審査で指摘された不適合および是正処置の状況

全ての資料を一括で提出できない場合は、提出可能な資料を先に提出し、未提出資料の提出予定日を認証機関へ伝えることが重要です。また、資料提出後に、次のような変更や事象が判明した場合は、速やかに認証機関へ連絡してください。

  • OEMスコアカードの目標未達
  • 顧客からの特別な状態への指定
  • 製造工程の停止
  • 従業員数やシフト数の変更
  • その他、審査計画に影響を及ぼす可能性のある事項

これらの情報は審査工数や審査計画の見直しにつながる可能性があります。審査当日に初めて報告するのではなく、判明した時点で認証機関へ相談する必要があります。

3.リモート支援事業所との関係を明確にする

ルール第6版では、ひとつのリモート支援事業所を審査する認証機関は、原則として1社に限定されます。

ひとつのリモート支援事業所が複数の製造サイトを支援している場合でも、そのリモート支援事業所を審査する認証機関は1社のみです。支援先となる各製造サイトの審査では、その認証機関による審査結果が利用されます。

そのため、複数の国や複数の認証機関にまたがって認証を受けている企業では、次の事項を整理しておく必要があります。

  • どのリモート支援事業所が、どの製造サイトを支援しているか
  • 提供している支援機能は何か
  • どの認証機関がリモート支援事業所を審査するか
  • 審査報告書や不適合情報を各製造サイトへ提供できるか
  • 製造サイトとの相互作用が審査報告書に記録されているか

また、他の認証機関がリモート支援事業所を審査している場合、製造サイトの審査前に、その審査報告書や不適合報告書などを提出する必要があります。

■“リモートのリモート”にも注意

製造サイトを支援するリモート支援事業所が、さらに別の場所や機能から支援を受けている場合があります。

例えば、製造サイトを支援する試験所が、別の事業所にある校正機能を利用しているケースです。この場合、直接の認証範囲に含まれていない支援先であっても、その支援内容や結果が適切に管理されているかを確認される場合があります。そのため、次の事項を説明できるようにしておくことが重要です。

  • 支援を依頼する仕組み
  • 支援業務の実施内容
  • 結果の報告方法
  • 結果を確認する責任者と確認方法
  • 問題が発生した場合の対応
  • 支援活動の有効性を評価する方法

リモート支援事業所や支援機能を登録するだけでなく、製造サイトとの具体的な相互作用や、その支援が有効に機能しているということを説明できるようにしておきましょう。

4.追加審査工数が必要となる条件を把握する

ルール第6版では、審査に必要な時間が、基本となる「審査工数」と、特定の活動に対して追加で必要となる「追加審査時間」に区分しています。製造サイトでは最小審査工数が設定されており、審査時間の少なくとも30%を製造工程の審査に充てることが求められています。
さらに、組織の状況によっては、次のような追加審査時間が必要となる場合があります。

■通訳または翻訳が必要な場合

製造工程の審査では、審査員が作業者へ直接質問し、工程管理や作業内容を確認します。
審査で使用する言語を作業者が十分に理解できず、通訳や翻訳機器を介してコミュニケーションを行う必要がある場合は、通常より多くの時間を要するため、追加審査時間が必要となる場合があります。

判断のポイントは国籍ではなく、作業者が審査員の質問を理解し、審査で用いる言語で直接回答できるかどうかです。

■前回審査のマイナー不適合を検証する場合

前回審査で指摘されたマイナー不適合について、次回審査で是正処置の有効性を検証するための追加審査時間が設定されます。
書類上の確認だけではく、現場で是正処置が実施されているか、類似工程への水平展開が行われているかなどを確認する場合があります。

■IATF OEMの目標を達成していない場合

IATF OEMが定める品質目標または納入実績の目標を達成していない場合は、関連する問題への対応状況を確認するための追加審査時間が必要となります。追加審査では、スコアカードに示された具体的な問題を起点に、根本原因の分析、是正処置および再発防止策の有効性などが確認されます。 

また、目標未達が審査直前に判明し、予定していた審査時間内で必要な確認を行えない場合には、別途特別審査が必要となる可能性があります。

■重大な変更があった場合

所在地、製造工程、認証範囲、マネジメントシステム、外部委託プロセスなどに重大な変更があった場合は、その変更内容と品質マネジメントシステムへの影響を確認するため、追加審査時間が設定されることがあります。

追加審査時間の必要性が審査当日に初めて判明することがないよう、認証組織は最新かつ正確な情報を事前に認証機関へ提供することが重要です。

5.不適合対応では内容と期限の両方を管理する

ルール第6版では、不適合対応に関する期限が明確に定められています。適切な是正処置を実施するだけでなく、期限内に必要な情報を提出することが認証維持において重要です。

■メジャー不適合への初動

メジャー不適合が発行された場合、組織は審査終了日から15暦日以内に、主に次の内容を提出する必要があります。

  • 封じ込め処置
  • 修正
  • 封じ込め処置および修正の実施証拠
  • 根本原因分析
  • 是正処置計画
  • 是正処置の有効性を検証する方法

15暦日以内に、恒久的な是正処置を全て完了させる必要はありません。しかし、影響の拡大を防止するとともに、不適合を修正したうえで、根本原因の分析結果と今後の是正処置計画を具体的に示す必要があります。

■是正処置と有効性確認

メジャー不適合およびマイナー不適合については、審査終了日から60暦日以内に、是正処置および組織による有効性確認の結果を提出することが基本となります。

提出内容が不十分な場合は再提出が必要となります。再提出にも期限が設定されているため、認証事務局は認証機関からの連絡内容を確認し、社内の対応責任者と期限を共有する必要があります。

期限までに必要な情報を提出しなかった場合や、定められた期間内に不適合を解決できなかった場合は、認証の取り消しになります。

■メジャー不適合に対する特別審査

メジャー不適合については、現地での有効性を検証するため、特別審査が実施されます。
ただし、審査終了日から60暦日以内に提出された内容が不十分なまま、「残りは特別審査で確認する」という進め方は認められません。まず書面上で是正処置の内容が受け入れ可能と判断された後、特別審査で実施状況および有効性が確認されます。

■封じ込め、修正、是正処置を区別する

不適合対応では、次の3つを区別する必要があります。

  • 封じ込め:
    不適合による影響の拡大を防止するための一時的な処置です。対象ロットの隔離、出荷停止、在庫品の選別などが該当します。
  • 修正:
    発見された不適合そのものを取り除く処置です。不適合品の手直し、誤った帳票の修正、設備設定値の修正などが該当します。
  • 是正処置:
    不適合の再発を防止するため、根本原因を除去する恒久的な処置です。工程や管理方法の変更、誤設定を防止する仕組みの導入、承認プロセスの見直し、類似工程への水平展開などが該当します。

不適合への回答では、それぞれの目的を理解し、実施した内容とその証拠を区別して示すことが重要です。

■審査前のセルフチェックリスト

次回の審査に向けて、以下の項目をご確認ください。

【審査日程】
  • 審査の基準日と最終審査可能日を把握している
  • 認証機関と早期に審査日程を調整している
  • 審査当日に自動車向け製造工程を稼働できる
  • 関連するリモート支援事業所の審査時期を確認している
【事前提出資料】
  • 認証機関が指定する提出期限を把握している
  • 従業員数、シフト数および製造工程を最新情報に更新している
  • 顧客スコアカードを確認している
  • 顧客から指定された特別な状態を報告している
  • 前回審査以降の重大な変更を整理している
  • 外部委託プロセスの変更を確認している
【審査工数】
  • 通訳または翻訳機器を必要とする工程を把握している
  • 審査言語で直接回答することが難しい従業員の状況を確認している
  • 前回の不適合に対する有効性検証の準備ができている
  • 追加審査工数に影響する顧客問題や変更がないか確認している
【リモート支援事業所】
  • 全てのリモート支援事業所を把握している
  • 支援機能と支援先を明確にしている
  • 製造サイトとの相互作用を説明できる
  • 必要な審査計画書、審査報告書と不適合報告書を入手し、内容を確認している
  • 「リモートのリモート」に該当する支援関係を確認している
【不適合への対応】
  • 封じ込め、修正、是正処置を区別している
  • メジャー不適合に対する15暦日の期限を管理できる
  • 60暦日以内に是正処置と有効性確認結果を提出できる
  • 再提出を含めた期限を管理する責任者を定めている
  • 類似工程や他拠点への水平展開を確認している

まとめ

IATF 16949認証ルール第6版への対応では、規格要求事項に適合した品質マネジメントシステムを運用するだけでなく、審査日程、事前提出資料、リモート支援事業所、審査工数、不適合対応などを計画的に管理する必要があります。

  • 認証組織が押さえておきたいポイントは、次の5つです。
  • 審査期限を把握し、十分な余裕を持って日程を確保する
  • 事前提出資料を期限内に提出し、変更が生じた場合は速やかに認証機関へ通知する
  • リモート支援事業所と製造サイトとの相互作用を明確にする
  • 通訳・翻訳、顧客パフォーマンス、不適合、重大な変更など、追加審査時間が発生する要因を事前に確認する
  • 不適合への対応では、実施内容だけでなく提出期限も確実に管理する

ルール第6版への対応は、審査直前の準備として捉えるのではなく、年間の認証維持計画に組み込み、関係部門や海外拠点を含めて継続的に管理することが重要です。

また、SIやFAQの追加・改訂により、ルールの解釈や運用が明確化される場合があります。IATFが発行する正式文書の最新版を確認するとともに、不明な点がある場合は、早めに認証機関へご相談ください。

ビューローベリタスジャパンでは、IATF 16949認証に関するご相談を承っています。
認証取得、認証機関の変更、リモート支援事業所の取り扱い、事業所の移転、認証範囲の変更などをご検討の場合は、システム認証事業本部までお問い合わせください。

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