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Blue Visby Solution – 運航スケジュール最適化による経済インセンティブ共有を通じた協業で海運業界の脱炭素化を図る

1.  脱炭素化社会への海運業界の役割

社会全体で脱炭素化の要請が高まるにつれ、海運業界も迅速に対応することが求められています。海運業界が排出する温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の量は、全世界の排出量の約3%程度と占める割合としては限定的ではありますが、海運業界はさまざまな産業をつなぐサプライチェーンを担っているため、各産業の関係者と脱炭素化に向けて協力し、持続可能なサプライチェーンのシステムを構築していく必要があります。

海運業界の脱炭素化の対応策としては、代替燃料の導入、消費エネルギー削減技術の進歩など設計面での対応と並んで、運航面での慣行を見直し運航スケジュールを最適化することも削減に対して重要な対応策です。

2.  脱炭素化に非効率な従来の運航方法

海運業界では従来、速く航行して、荷下ろしする港の沖合で停泊して待つ「SFTW:Sail Fast, Then Wait」という運用が一般的ですが、速度の増加はGHG排出を増加させ、沖合で待つアイドリング中もGHGを排出することになり、燃料消費としては非効率な慣行です。この慣行を見直し、低速で航行し沖合での停泊時間を削減することは、船舶の航行あたりのGHG排出量削減に有効です。

代替燃料や消費エネルギー削減の技術が進歩し船舶に実装されるまでには一定数時間を要しますが、今日のGHG排出量の環境への大きなインパクトと、炭素クレジットによる市場の通貨システムが発展しつつあることを考えると、業界関係者は設計技術の成熟だけを待っている余裕はなく、直ちに導入できる短期的対応策として運航を最適化することが大きな効果を発揮します。

3.  運航スケジュールの最適化を目指すBlue Visby Solution

GHG排出量削減に向けてこの燃料消費に非効率なSFTWという慣行に対して、デジタル技術を活用しながら運航スケジュールを最適化する取り組みが、Blue Visby コンソーシアムの提供するBlue Visby Solutionで、40を超える団体が参加しています。ビューローベリタスもこのコンソーシアムのメンバーで、Blue Visby Solutionでの船舶のGHG排出量の評価方法の妥当性を検証することで協力しています。

このソリューションでは、独自のアルゴリズムによって生成し最適化された運航スケジュールの提供により、船舶到着時間の最適化を目指します。各船舶の性能や天候などを考慮し、予定到着順を維持したまま各船舶に最適な目標到着時刻と航行速度を提供することで、効率的な航海による燃料消費量、ついてはCO2排出量の削減を目指します。
Blue Visby Solutionでは、燃料消費減少に伴う費用削減の経済効果を船主・用船者間で分配します。これによる効率化へのインセンティブ向上を通じ、SFTWの是正を目指していることが取り組みの特徴です。

Blue Visby SolutionでのGHG排出量の試算では、平均15%の排出削減効果が見込めることが示されており、海運業界の脱炭素化に向けて有効な手段となることが期待されます。

Blue Visby Solution での運航スケジュール最適化による燃料消費量削減予想

燃料消費量削減予想

出典:Blue Visby Solution 

4.  Blue Visby Solutionへのビューローベリタスのサポート

ビューローベリタスは独自のホワイトペーパー「脱炭素化への道筋」(2024年2月発行)のなかで、海運業界のGHG排出量削減に向けた詳細な分析を行い、航行の減速や沖合での待機時間削減などによる運航の最適化により、CO2排出量を約35%削減できる可能性を示しました。

この結果は、SFTWを排除し運航の最適化をさまざまな関係者と協力して目指すBlue Visbyコンソーシアムの取り組みの目的と一致しており、本コンソーシアムに参画し、Blue Visby Solutionが使用するデジタルモデルと計算手法の正当性の検証を実施することでこの取り組みを支援する運びになりました。

4-1.  Blue Visby Solutionの燃料消費量の評価方法

Blue Visby Solutionが採用する燃料消費量削減の評価方法は、船舶の実航海での観測数値による比較ではなく、デジタルツイン同士のモデル上の比較です。そのためには、精度の高いデジタルモデルと計算手法が必要です。

ビューローベリタスが検証したBlue Visby Solution の燃料消費量削減の評価手法フロー

燃料消費量削減の評価手法フロー

ビューローベリタスジャパン 船級部門作成

今回のビューローベリタスによる検証の対象となるBlue Visby Solutionのデジタルツインモデルでは、IMO番号*で検索可能な主要目を基にデジタルモデルを作成し、さらに、船主の協力によりヒアリングされた詳細データに基づきデジタルモデルを調整します。

燃料削減の計算はこれらのモデルを用い、最適化された運航と最適化されない運航の二つの航海シナリオでの燃料消費量とその差異を算出します。実航海による観測値とモデルとの比較ではなく、モデル同士を比較することにより、バイアスを排除し、特定の関係者に有利、不利が生じないよう計算の一貫性を確保することが狙いです。

*IMO番号:国際海事機関(IMO:International Maritime Organization)が発行する船舶固有の識別番号

4-2.  正当性の検証結果

これらの前提に基づき、約200隻のさまざまな船種と船型における多様な海象条件での約500航海について、実際のNoon Report(船舶が毎日正午に作成する日報)の燃料消費量データとモデルを用いた消費量計算データを比較し検証しました。
その結果、Blue Visby Solutionにおけるデジタルモデルの精度は約95%であり、十分に信頼できることを確認しました。また、船型、大きさ、速度や環境条件による偏りが認められませんでした。この結果は、モデルそのものの汎用性と公平性を示し、またこのモデルに基づき計算される燃料消費削減量の有効性を示しています。

ビューローベリタスはこの検証結果を、2025年5月に公表いたしました。

ビューローベリタスは引き続き、Blue Visby コンソーシアムメンバーとして透明性のあるデジタル技術を用いた運航スケジュールの最適化を、実用的かつ効果的な脱炭素化戦略の一つとして確立していくことを目指します。

参考:
Blue Visby Solution

ビューローベリタスのBlue Visby Solutionへの参加について
Bureau Veritas joins the Blue Visby Consortium to support Green House Gases emissions reduction of the shipping industry

ビューローベリタスによるBlue Visby Solutionの正当性の検証結果について
Bureau Veritas Validates the methodology used by the Blue Visby Solution to estimate its effect on Shipping Emissions

船級部門長 杉原 義之

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