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米国におけるPFAS規制の動向

2021-08-06

近年、米国連邦政府と複数の州で、フッ素系界面活性剤PFAS(per-and polyfluoroalkyl substances)の規制に動きがあります。すでに規制に関する法律がEPA(United States Environmental Protection Agency:米国環境保護庁)や複数の州で制定され、また法案提出中の州もあります。

PFASはフッ素系化学物質の総称で、PFOA、PFOSなどの物質が含まれます。 EPAは、人体がPFASにさらされることで健康被害を招くおそれがあり、PFOAやPFOSは、動物実験で生殖や発達過程、肝臓、腎臓、および免疫系に影響を及ぼすことが分かっていると注意喚起しています。PFASは、耐グリーズ性の食品容器や包材、こびりつき防止加工の調理器具、カーペット・布張り家具・その他ファブリック素材のシミ防止処理剤や撥水性衣類などに使われています。

日本においては、2021年4月21日に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令」が公布され、「PFOA又はその塩」が、第一種特定化学物質に指定されました(2021年10月22日より施行)。また、欧州においては、REACH規制のもと、PFOAとその塩およびPFOA関連物質はSVHC高懸念化学物質の候補物質として登録されていましたが、2020年6月にRegulation (EU) 2019/1021 POPs規則のAnnex I(禁止物質リスト)に移行し、ひきつづき規制対象となっています。

本稿では、米国の最近のPFAS規制の動向をご紹介します。

 

EPA/TSCA

EPAは、2011年以降米国で製造または輸入されたPFASについて報告義務を課すよう提案しています。この法律により、EPAは、これら化学物質についてより多くのリスクの可能性を把握できると期待されています。法案が可決すれば、法律発効から1年後にはEPAへのPFASに関する報告が開始されます。

EPAは、事前にEPAの審査と承認を経なければ成形品の表面塗膜に含まれる特定の長鎖PFASの輸入を禁じるとした、2020年7月重要新使用規則(SNUR:Significant New Use Rule)の規制を弱める2021年1月付適合ガイダンスを撤回しました。これにより、2021年1月の適合ガイダンスは失効し、2020年SNUR規制が継続して有効となっています。成形品の表面塗膜に含まれる特定の長鎖PFASは、EPAの審査なしには輸入することはできません。成形品の輸入事業者(成形品の処理業者を除く)は、SUNRに従う義務があります。

2021年6月3日、EPAは毎年更新している毒物排出インベントリ(TRI:Toxics Release Inventory)にあらたにPFASを追加する最終規定を発表しました。有害物質規制法(TSCA:Toxic Substance Control Act)にもとづきSNURで規制対象となる3つのPFASが 2021年度のTRI報告のため、国家防衛承認法(NDAA:National Defense Authorization Act)によってTRIリストへ追加されました。PFAS追加は2021年1月1日から適用されています。2021年度のPFAS関連データの申告書類は2022年7月1日までにEPAへ提出しなければなりません。

 

食品包材へのPFAS使用禁止

コネチカット州・メーン州・ニューヨーク州・バーモント州・ワシントン州は、食品包材へのPFASの使用を禁じる法律を制定しました。メーン州とワシントン州の州法では、PFAS禁止が発効する前に、より安全な代替物質の特定が求められています。

 

コネチカット州

PFASを故意に添加した食品包材と包装材料を販売・流通させることを禁じる法律Public Act No.21-191を可決しました。同法は、PFASと同等以上の害を与える代替化学物質についても同じく規制しています。また、食品包材以外に泡消火剤へのPFASの使用も禁じられています。同法は、2024年1月から適用されます。

 

メーン州

カーペット・敷物類、繊維処理剤、食品包材ほかを対象とするPFAS規制法案が州議会を通過しました。

 

ニューヨーク州

食品包材のPFAS規制法を制定。
2021年6月現在、一般アパレル製品について、PFASの使用を禁止する法案を提出中です。制定されれば2023年12月31日から発効します。

 

バーモント州

2021年5月18日に州知事が法案に署名しました。
個人用防護具(PPE)、泡消火剤(クラスB)、食品包材、敷物・カーペット類、スキーワックス、子供用製品が対象です。

 

ワシントン州

食品包材4種類(ラップ類・ライナー類、皿、舟形食品容器、ピザボックス)のPFASの使用を禁止し、代替物質を提示。2023年2月から発効します。

 

マサチューセッツ州

2021年6月現在、子ども用カーシート、調理用具、繊維処理剤、パーソナルケア製品、敷物・カーペット類、布張り家具を対象に、PFASの総フッ素量の限界値1 ppmを提案中。制定されれば、2023年1月1日から発効します。

上に挙げた州以外にもPFAS規制の動きは広がっています。
ビューローベリタスはウェブサイトで随時、関連情報を掲載してまいります。

 

消費財検査部門 金盛 葉子

 


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