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LNG船

脱炭素化に向けて海運業界がとるべきアプローチ:実用的かつ野心的な取り組みを

Bureau Veritas, Marine & Offshore 部門のPresidentであるMatthieu de Tugny (以下、MdT)は、世界海事デーにおいて、海運業界が脱炭素化の目標を達成し、さらなる透明性をもって社会から理解を得ながら業界水準の向上を保つといった未来を実現するには、実用的かつ野心的な取り組みが必要だと述べています。MdTが示した海運業界がとるべきアプローチについてご紹介します。

Matthieu de Tugny / Bureau Veritas, Marine & Offshore 部門 President
Matthieu de Tugny / Bureau Veritas, Marine & Offshore 部門 President

新型コロナウイルス流行が残した2つの教訓

第一の教訓として、海運業界は新型コロナウィルス流行という状況下でも社会に不可欠な産業として活動を続けており、主要エネルギー、食料、その他の社会に必要な物資をグローバルに輸送することにより社会に貢献してきました。しかし、第二の教訓として、海運業界は重要な労働者である船員に十分な配慮をすること、船員の利益を守ることに関しては道半ばであるということです。
そのため、海運業界の必要性にもかかわらず、私たちは船員に十分な配慮を行うことができませんでした。この問題は今変えなければならず、私たちは緊急の優先事項として早急に解決する必要があります。この点でのこの不十分な対応の原因を特定し、それを改善するための目標を設定し社会に対し明確に説明しなければなりません。

1. 海運業界の脱炭素化に向けて、業界を超えたパートナーシップを

海運業界の脱炭素化という課題に直面し、私たちの十分な対応が業界の命運を大きく左右していくでしょう。海運業界は今、自らの行動力を見直し、より良い結果を得るために、政府やすべての利害関係者と、業界を越えて働く方法を見つけなければなりません。現在、いくつかの素晴らしいイニシアティブが存在しています。例えば、“Maersk Mc-Kinney for Zero Carbon Shipping Moller Center”、“Global Maritime Forum”、“Getting to Zero Coalition” などが挙げられます。私たちは皆、より良い結果を出すために協力してくれるPartnerと海運業界を越えて手を携える必要があります。

2. 鍵となるのは野心的かつ実用的な取り組み

このPartnershipに基づく野心的な取り組みが鍵となりますが、燃料としてのLNG(天然ガス)推進派と反LNG派に分かれている現在の状況は、実用主義的な解決の必要性も示しています。この点において、海運業界の脱炭素化には複数のアプローチが必要であることを理解することが大事です。ゼロ炭素の外航船輸送には、船舶推進のためにアンモニア等の燃料が必要となり、再生可能エネルギーによる水素製造技術の開発を必要とします。しかし、あらゆる革命は実用的な第一歩から始まります。私たちは今、これらの一歩を踏むことができます。

現在、世界の造船業は過去30年で最低の受注残という状況になっています。しかし近い将来、新規発注が始まるでしょう。そうなれば、LNGは最もクリーンで利用可能な選択肢であり、少なくとも今後10年は活用が可能となるでしょう。私たちは二酸化炭素ネットゼロの目標を見失ってはならず、代替燃料や推進システムを開発しなければなりませんが、同様に、私たちはすべての可能性を利用する必要があります。

3. 脱炭素化に向けて開発が進む舶用エンジン

新たに市場に出ている2ストロークLNGエンジンは、これまでフェリーやオフショアで多くのガス燃料船に使用されてきた中速4ストロークエンジンとは全く異なり、より改善された排出ガス特性を有しており、現在も改善されつつあります。
新しい2ストロークエンジンは外航船のエネルギー転換のきっかけとなります。CMA-CGMの23,000 TEU大型船舶のような先取的なプロジェクトは、エンジンの開発が既に現実となっていることを示しており、2030年および2040年の目標を満たすための新たな船舶の設計の基礎になるといえます。

4. 業界の水準を引き上げる役割を担う船級協会

船級協会は継続的に水準を引き上げる努力をしなければなりません。私たちの責任は拡大しています。Bureau Veritasは、データの正確性やサイバーレジリエンスなどの問題、および1828年の創業以来取り組んできた従来の船舶の物理的な安全性の課題に確実に対処するためにも重要な役割を果たす必要があります。


船級部門  山下 和夫

 


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