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フットウェア

「AFIRM~アパレル・フットウェアの規制物質マネジメント」

2020-08-07

AFIRM RSLとは?米国で生まれた安全自主基準

人気のアパレルブランドやシューズブランド、それらのトップブランドが加盟するAFIRM:Apparel and Footwear International RSL Management Group (RSL=Restricted Substances List) という団体をご存じでしょうか。
AFIRM(アファーム、またはエイファーム)は、環境安全衛生と持続可能性を推進する専門家集団であるフィルマー・グループPhylmar Groupによって2004年に米国で設立されました。
AFRIM は、アパレル・フットウェア製品に使用される化学規制物質のリスト(Restricted Substances List, RSL)を管理する国際的な枠組みを意味します。リーバイスやナイキといったアパレル・フットウェアの世界的ブランド多数がメンバーとなり、グローバルサプライチェーンにおける化学物質の管理・削減・規制に取り組んでいます。

AFIRMにはいくつかの委員会があり、規制物質リストRSLの管理・更新以外にも、製品に含まれる化学物質に関する法規制の監視、化学物質規制の法制化に向けた提言やアパレル・フットウェア業界への化学品管理の啓蒙活動、加盟企業へのガイダンス・ツールと研修サービスの提供などをおこなっています。
AFIRMの活動を技術的にサポートするものとして、ラボラトリー・テクニカル・アドバイザリー・コミッティー(Lab Technical Advisory Committee、以下「LabTAC」)があります。世界各国に展開する国際的検査機関5社に所属する専門家各1名がこの委員会のメンバーとなり、検査方法や年1回のRSL更新時の諸問題について技術的アドバイスを行なっています。ビューローベリタスも、このLabTACの一員です。

規制物質とは?

アパレル製品やフットウェア製品は、消費者が日常的に身に着けるものであり、もっとも安全性に配慮する必要があるもののひとつです。製品に使用される染料・顔料・接着剤などには人の健康に害をおよぼす恐れのある有害物質が含まれている可能性があります。また、材料となる皮革の処理に使用される薬品や、PVC・ポリウレタン・ゴムなどの可塑剤、繊維の難燃剤・撥水剤にも生殖毒性・発がん性・生物蓄積性が指摘され、人体への影響が懸念されています。
AFIRMの規制物質リストRSLには、このようなアパレル・フットウェア製品に関連する化学物質29種類、約353物質の素材ごとの危険度・制限値・検査方法が記載されています。その手法はアパレル・フットウェア製品に限らず、アクセサリー・スポーツ用品用具・ウェアラブル製品・ホームテキスタイルに応用できるとされています。

AFIRM RSLのおもな規制物質と、特に注意すべき素材

酸性とアルカリ性物質(pH) 繊維(合成・天然・混紡)、皮革材料(合成・天然)
アルキルフェノール(AP)とアルキルフェノールエトキシレート(APEOs)(すべての異性体を含む) すべての素材(金属をのぞく)
アゾ‐アミン類とアリルアミン塩 繊維全般・天然皮革・染色色付けした合成皮革材料・染色色付けしたフェザー/ダウン・コーティング/プリント
ビスフェノール類 ポリカーボネート製材料
塩素化パラフィン類 天然皮革・ポリウレタン・ゴム・PVC
染料(禁止染料と分散染料) 合成繊維・混紡繊維・合成皮革
ホルムアルデヒド 繊維全般・天然皮革・木材・紙・藁材料・コーティング/プリント・接着剤
重金属、六価クロム ウール・溶出クロムが約1ppmを超える合成繊維・天然皮革
重金属、溶出 繊維全般・天然皮革
重金属、ニッケル リリース 金属
重金属、総含有量 合成皮革・金属・EVA・ポリウレタン・ゴム・ポリカーボネート・ABS・PVC・その他のプラスチック発泡剤/プラスチック/ポリマー・コーティング/プリント
モノマー、スチレンと塩化ビニル 合成皮革(PVC)・PVC・プリント
有機スズ化合物 合成皮革・ポリウレタン・ゴム・PVC・その他のプラスチック発泡剤/プラスチック/ポリマー・コーティング/プリント・接着剤
過フッ素化合物とポリフッ素化合物(PFCs) フッ素加工された全素材
フタル酸エステル類 合成皮革・EVA・ポリウレタン・ゴム・PVC・その他のプラスチック発泡剤/プラスチック/ポリマー・コーティング/プリント・接着剤
多環式芳香族炭化水素(PAHs) EVA*・ポリウレタン*・ゴム*・PVC・その他のプラスチック発泡剤/プラスチック/ポリマー*・コーティング/プリント*・接着剤*
(*)はゴム、または黒色の高分子素材の場合。
溶剤 /残留物、DMFa 合成皮革・ポリウレタン・ポリウレタン関連のコーティング/プリント・ポリウレタン系接着剤
溶剤/残留物、DMAC and NMP 合成皮革
揮発性有機化合物(VOCs) 接着剤

上記のほかにも、中程度の危険性とされる素材があります。また、次の物質は、いくつかの素材に対して中程度の危険性があるとされています(アセトフェノンと2-フェニル-2-プロパノール、クロロフェノール類、有機塩素化キャリア、フマル酸ジメチル(DMFu)、染料(ネイビーブルー)、難燃剤、オルトフェニルフェノール(OPP)、キノリン、溶剤/残留物・ホルムアミド、紫外線(UV)吸収剤/安定剤)。

各ブランドの規制基準

AFIRM RSL規制物質リストは、最新の化学情報と最適な検査方法をふまえて検討され、毎年更新されます。加盟する各ブランドは、AFIRM RSLの推奨する有害物質基準にもとづき、それぞれ自社製品のタイプに即した独自のルールを構築しています。したがって、サプライヤーは取引先ブランドの基準を理解して適切に対応することが求められます。また複数のブランドと取引をする場合は、各ブランド間で規制内容が受け入れられるように交渉し調整する必要があります。

ビューローベリタスの取り組み

ビューローベリタスは、AFIRMのLabTAC 5社のうちの1社として、長年におよぶブランド企業への検査サービスの提供とグローバルに培った専門知識を通じて『アパレルおよびフットウェアのサプライチェーンから有害物質の使用と影響を減らす』というAFIRMグループの使命に貢献しています。
また、米国アパレル・フットウェア協会(AAFA)のプライマリー・スポンサーとして、毎年AAFA主催セミナーで提言を行なっています。
ビューローベリタスは、世界ではもちろんのこと、日本のお客様にもすでに顧客のニーズに合わせた管理プログラムを構築し、世界各地のサプライヤーからの検査申し入れに対して対応可能なグローバルなラボのネットワークを生かして、迅速で的確な検査を提供しています。

化学物質規制は、今や各国法令のみならず世界のサプライチェーンにおいても避けて通れない喫緊の課題です。AFIRM RSLを通じて、規制物質への理解を深めることは未来への備えにもなることでしょう。AFRIMのガイダンス資料には日本語版もあります。ご興味のある方は、ぜひ一度ご覧ください。

参考資料:

消費財検査部門 金盛 葉子


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