食肉の食味を構成する要素と分析
牛・豚・鶏・羊・馬など食肉の種類は豊富ですが、畜肉生産者は、食感、食味の良いおいしい肉を消費者へ提供するために、系統、品種改良、給餌や飼育環境、保存方法等を工夫して開発しています。
開発した食肉をより広く、より多くの人に知ってもらうためには、卸業者や販売者および消費者に商品を受け入れてもらう必要があります。紙媒体・ウェブ等での宣伝広告や、試食販売、口コミを増やすなど工夫が必要ですが、おいしさに関する科学的データ(エビデンス)を加え客観的なデータに基づく優位性を示すことで、商品価値を高めることができます。
本記事では、食肉の食味を構成する要素と分析についてご紹介します。
食感
食感は、食肉を喫食する際に口内で感じる「やわらかさ、しなやかさ、噛みごたえ、もろさ」を、食感測定機(テンシプレッサー)で圧力をかけて測定し評価します。
ジューシーさ
食肉の持つ水分量、加圧したときの食肉に占める肉汁の割合(圧搾肉汁率)、加熱したときに出る肉汁の量(加熱損失)を測定します。
脂肪融点
食肉の脂身が溶け出す温度を測定します。融点温度が低いほど、くちどけが良いと感じます。
遊離アミノ酸等24種
食肉(食品)内に存在しているアミノ酸を測定します。アミノ酸が結合してペプチドやたんぱく質が構成されますが、遊離アミノ酸は、食肉(食品)に単体で存在するアミノ酸を示し、味覚に関与するアミノ酸成分は遊離状態のものが作用しています。下表のとおり「うまみ・酸味」4種、「甘み」5種、「風味・苦味・無味」10種、「機能性成分」3種の遊離アミノ酸を確認することができます。
呈味 | 遊離アミノ酸 | |||
---|---|---|---|---|
うまみ・酸味 | アスパラギン酸 | グルタミン酸 | グルタミン | アスパラギン |
甘み・微甘み | グリシン | アラニン | トレオニン | セリン |
プロリン | ||||
風味・苦味・無味 | メチオニン | リジン | イソロイシン | ロイシン |
フェニルアラニン | チロシン | バリン | ヒスチジン | |
アルギニン | システイン | |||
その他アミノ酸(機能性) | タウリン | オルニチン | GABA(γ-アミノ酪酸) | |
ジペプチド (アミノ酸が結合したもの) | カルノシン | アンセリン |
ペプチド構成アミノ酸
食肉中に含まれるペプチドを構成するアミノ酸の総量を測定します。たんぱく質やペプチド(アミノ酸が結合したもの)は食品のコク(濃厚さ、広がり、持続性)、まろやかさに関与します。
脂肪酸組成
食肉(食品)の味評価では、不飽和脂肪酸はプラス要素になり、飽和脂肪酸とリノール酸(ω6脂肪酸)はマイナス要素となります。ビューローベリタスエフイーエーシーでは、下表の33種類の脂肪酸ごとの含有量を分析しています。
飽和脂肪酸 | 不飽和脂肪酸 | 不飽和脂肪酸 |
---|---|---|
一価不飽和脂肪酸 | 多価不飽和脂肪酸 | |
C4:0 酪酸 C6:0 ヘキサン酸 C8:0 オクタン酸 C10:0 デカン酸 C12:0 ラウリン酸 C14:0 ミリスチン酸 C15:0 ペンタデカン酸 C16:0 パルミチン酸 C17:0 ヘプタデカン酸 C18:0 ステアリン酸 C20:00 アラキジン酸 C22:00 ベヘン酸 C24:00 リグノセリン酸 | C14:1 ミリストレイン酸 C16:1 パルミトレイン酸 C17:1 ヘプタデセン酸 C18:1 オレイン酸 C18:1 cis-バクセン酸 C18:1 trans-バクセン酸 C20:1 イコセン酸 C22:1 ドコセン酸 C24:1 テトラコセン酸 | <ω6脂肪酸> C18:2(n-6) リノール酸 C18-3(n-6) γリノレン酸 C20-2(n-6) イコサジエン酸 C20-3(n-6) イコサトリエン酸 C20-4(n-6) アラキドン酸 C22-4(n-6) ドコサテトラエン酸 <ω3脂肪酸> C18-3(n-3) αリノレン酸 C20-4(n-3) イコサテトラエン酸 C20:5(n-3) EPA C22:5(n-3) ドコサペンタエン酸 C22:5(n-3) DHA |
核酸
うま味を感じる核酸としてイノシン酸、アデニル酸、グアニル酸の量を測定します。イノシン酸は動物性食品に多く、グアニル酸は椎茸等のきのこ類に多く含有しており、出汁のうま味成分として知られています。グルタミン酸(アミノ酸)との相乗効果により、うま味が強くなることが知られています。
おいしさ評価報告
検体の比較による「おいしさ評価」、畜肉は検体とビューローベリタスエフイーエーシーが持つデータベースとの比較による「おいしさ評価」を行います。例えば、新商品とすでに流通している商品のおいしさを比べ、新商品の位置づけを確認することができます。
下図のような視覚的に分かりやすい対比グラフを添付することもできます。
遊離アミノ酸量/うま味アミノ酸量(グルタミン酸+アスパラギン酸)
対比
ビューローベリタスエフイーエーシーの食肉 食味構成要素分析は、食肉の状態確認や、販売促進や開発途中での経過確認、食味要素の改良のためのデータとして活用いただけます。ご不明点や検査に関するお問い合わせ等、お待ちしております。
参考:
独立行政法人家畜改良センター「食肉の理化学分析及び官能評価」
山口静子監修「うま味の文化・UMAMIの化学」(書籍)
日本味と匂学会編集「味のなんでも小辞典」(書籍)
山本隆「おいしさとコクの化学」
日本うま味調味料協会ウェブサイト
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食感の検査について
ビューローベリタスエフイーエーシー株式会社 精査部 江田 有史
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