学校施設の維持管理の重要性とは?対象の学校や実施すべき点検について解説
学校設備の維持管理は、学校の教職員や設置者である教育委員会の務めです。法令で定められた定期点検等を実施したり、日常的に目視点検したりして、学校設備の安全性確保に努めましょう。
本記事では、学校設備の維持管理の重要性や建築基準法に基づく法定点検、施設管理者が行なうべき点検の内容などについて解説します。学校設備を維持管理している方は、この記事を参考に、学校設備点検を進めてみてください。
学校施設の維持管理の重要性
学校施設は、児童や生徒の学習・生活の場であると同時に、地震などの災害時には、避難所として地域住民の安全を守る役割も担います。したがって、学校施設はいつなんどきも、十分な安全性・機能性を保っていなければなりません。
学校施設の管理者は、設備の経年劣化などをできる限り防ぎ、常に健全な状態を維持すべく、適切な維持管理に努める必要があります。法令に定めた定期点検等を実施するほか、定期的に見回りを行うなどして、建物の機能を保ちましょう。
学校施設の維持管理が注目される背景
近年、学校施設の老朽化によって引き起こされた安全面の不具合が増加しており、日本全国で事故が発生しています。特に、地震などが起きた際に、非構造部材(天井材、外壁材、設備機器、家具など)の落下による直接的な被害のほか、瓦礫が避難経路を塞ぐといった二次災害が相次いでいます。
学校施設での被害事例
発生年 | 被害事例 |
---|---|
平成31年 |
・校舎出入口の庇が落下(大阪府) |
令和元年 | ・外壁の下端(窓枠上部)モルタルの一部が落下(京都府) ・校舎(最上階)、天井裏のコンクリート片が落下(香川県) ・校舎2階の天井(階段裏)モルタルの一部が落下(佐賀県) ・校舎1階の引き違い窓の障子が建物の外壁に落下(長崎県) |
参考:
学校施設の維持管理の徹底に向けて―子供たちを守るために―|文部科学省
こういった状況を背景に、令和4年3月、「第3次学校安全の推進に関する計画」が閣議決定され、学校施設の管理者による点検・対策の強化が求められています。
参考:
学校施設の非構造部材の耐震化ガイドブック(改訂版)|文部科学省
建築基準法に基づく法定点検義務のある学校とは
建築基準法第12条第1項の規定により、床面積の合計が100㎡を超える建築物(国、都道府県および建築主事を置く市町村の建築物を除く)であって、特定行政庁(※1)が指定(※2)するものの管理者は、有資格者による建築物の調査を定期に実施し、その結果を特定行政庁に報告することが義務付けられています。
上記の条件に当てはまらない学校施設については、点検義務はありません。しかし、すべての学校施設は、建築基準法第8条第1項により、建築物を常時適法な状態に維持するよう努めることが義務付けられています。
したがって、建築基準法第12条に該当しない学校施設であっても、経年劣化などにより生じた修繕が必要な箇所を把握し、当該箇所に対して早期に対処することが重要です。
なお、消防法第17条第1項および第17条の3の3の規定により、消防用設備等については、すべての学校で定期点検が義務付けられています。
※1 特定行政庁とは、建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長を、その他の市町村の区域については都道府県知事をいいます。
※2 特定行政庁が規則において、調査・報告すべき建築物の用途や規模を定めています。
学校施設の維持管理について、施設管理者がすべき点検
学校施設の維持管理には定期的な点検が欠かせません。実施すべき点検を、具体的に紹介します。
◇設備や家具の耐震性の点検(年1回程度実施)
設備や家具が、壁にしっかりと固定してあるか、地震に耐えうる転倒・落下防止対策がとられているか、といった点を確認します。
点検項目
- テレビ本体は天吊りのテレビ台に固定されているか
- テレビ・パソコン等の転倒・落下防止対策を講じているか
- テレビ台や電子黒板、キャスター付きの台などの移動・転倒防止対策を講じているか
- 書棚、薬品棚、ロッカー等は取付け金物で壁や床に固定しているか
- ピアノなどに滑り・転倒防止対策を講じているか
◇非構造部材の劣化点検(毎学期1回程度実施)
非構造部材の素材や構造は多種多様であり、部材によっては耐震対策が十分になされていないものもあります。建物や設備に、経年劣化による錆やひび割れが発生していないかなど、異常箇所の有無を定期的に点検しましょう。
点検項目
- 天井(天井仕上げボード、モルタル等)にずれ、ひび割れ、しみ等の異常は見当たらないか
- 照明器具に変形、腐食等の異常は見当たらないか
- 窓ガラスにひび割れ等の異常は見当たらないか
- 窓やドアの開閉時に、引っかかる、著しく重いなどの異常がないか
- 教室の扉など、内部建具に変形、腐食、ガタつき等の異常は見当たらないか
- 外壁に浮き、ひび割れ等の異常は見当たらないか(庇や軒、バルコニー等を含む)
- 内壁に浮き、ひび割れ等の異常は見当たらないか
- 本体の傾きや取付け金物の腐食、破損等は見当たらないか
- 空調室外機は傾いていないか
- エキスパンション・ジョイントのカバー材が変形または外れていないか
- 塀に傾き、ひび割れ等の異常は見当たらないか
◇設備や家具の使用方法の点検(日常的に実施)
適切な転倒・落下防止対策がとられていても、上に重いものを置くなど不適切な使用方法によって、災害時に危険が生じるケースもあります。設備や家具の使い方が適切かどうか、日常的に点検しましょう。
点検項目
- 開閉可能な窓のクレセントはかかっているか
- 地震時に衝突するおそれがあるものを窓ガラス周辺に置いていないか
- 棚の上に重量物を置いていないか
- 薬品の容器等の破損・飛び出し防止対策を講じているか
- エキスパンション・ジョイントおよびその周辺に物を置いていないか
点検項目引用:
学校施設の非構造部材の耐震化ガイドブック(追補版)|文部科学省
学校設備の維持管理について、教職員が心がけること
教職員は、施設を日常的に使用する者として、児童・生徒の安全を守るためにも、日頃から目視での点検を行いましょう。異常を発見した場合には、学校設置者に速やかに報告し、より詳細な点検を求め、状況の改善に努めてください。
法定点検の実施にあたっては、専門業者に点検を依頼してください。点検や修繕では国からの助成制度などを活用できる場合もあります。
「少しくらいなら問題ないだろう」「次の年次点検で調べればいい」といった安易な考えは、大事故につながります。大きな事故の発生を防ぐためにも、計画的に点検・修繕を実施していきましょう。
まとめ
学校施設は児童や生徒が学ぶ場であるだけでなく、非常時には避難所として活用される重要な施設です。施設の安全性を確保するためには、日常的な点検が欠かせません。点検すべきポイントを知って、異常の早期把握に努めましょう。
ビューローベリタスでは、学校施設の非構造部材耐震点検を承っています。文部科学省が作成した「学校施設の非構造部材の耐震化ガイドブック」に基づき、学校設置者が行う点検をおもに実施いたしますので、点検でお困りの方は、ぜひお問い合わせください。
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