Image
Case Study:正田醤油株式会社(RTRS CoC)

Case Study:正田醤油株式会社(RTRS CoC)

2023-02-10

2025年1月の欧州での完全移行に備えて日本初のRTRS CoC認証を取得

Image
正田醤油ロゴ

正田醤油株式会社(群馬県館林市)


情報皆無のスタート

2022年11月、群馬県館林市にある正田醤油が日本で初めての「RTRS CoC」認証を取得した。この認証は、サプライチェーンとの協力とステークホルダー間のオープンな対話を通じて責任ある大豆の成長と使用を促進することを目的とし、さらに大豆の生産現場における社会的・環境的課題の解決を図ることまでを目指す規格である。
ちなみに、RTRS CoCは、それまでに日本国内で取得している企業は一社もないという非常にニッチな認証規格であり、今回の正田醤油の取り組みも、まずは国内でこの規格を審査できる認証規格を探すところから始まった。情報も皆無に近く、プロジェクトリーダーを務めた須永浩将氏が「本が一冊書ける」と言うぐらい暗中模索したが、苦労した分、学ぶことが多い認証取得となったようだ。

2つのコンタクト先

ことの起こりは2年ほど前に正田醤油が英国ウェールズに置いている子会社「SHODA SAUCES EUROPE」から、欧州の市場動向に鑑み、親会社である正田醤油へ認証取得の要請があったことだった。
そこで、RTRS CoC認証取得のためのプロジェクトチームが結成されることになり、そのリーダーとして特命を受けたのが、須永氏だった。世界的コロナ感染拡大初期、ウェールズにある子会社での任務を終了し、帰国してすぐの頃であった。

「驚いて躊躇しました。というのは、ウェールズに赴任していた時は財務を担当しており、帰国後は国際業務部長としての業務が中心で、認証取得についてはまったくの素人だったからです」。
加えて須永氏を戸惑わせたのは、RTRS CoCについての情報がどこからも得られなかったことだった。
「国内営業の時の人脈をたどって数えきれないほどの人に話を聞いて情報を得ようとしましたが、誰も知らなかったですね。認証機関にも数々アプローチしましたが、どこも“うちではできない”という返事でした。本当に困りました。当時、仕事の半分くらいはこの認証に費やしていました」。

それでも諦めずに必死で道筋を探していた須永氏の探索網にようやく引っ掛かったのがビューローベリタスだった。
「ビューローベリタスはグローバルな認証機関だったので、まずはここの日本法人とコンタクトしてサポートを受けようと考えました」。

「認証するのはビューローベリタスアルゼンチンでしたが、日本の窓口を得たことで格段にコンセンサスが取りやすくなり、相談もしやすくなりました。日本語で話せるし、細やかなやり取りができることがありがたかったです。グローバルな認証機関の強みを実感しました。日本ではまだ前例のない認証取得だったにも関わらず予想外にスムーズに進んだのは、そのおかげが大きいですね」と須永氏は言う。
それと同時に須永氏は「責任ある大豆に関する円卓会議」と邦訳されるRTRS本体であるRTRS-Technicalにコンタクトして情報を得ることにもトライした。その結果、RTRS-Technicalのコーディネーターに知己を得て、審査直前までアドバイスを受けられたことが大きな助けとなった。

審査までのハードル

こうして審査に向けて須永氏をリーダーとするプロジェクトメンバーの奮闘が始まったわけだが、メンバーがいちばん悩んだのは原料の量と製品の量の差引きに関するコンバージョンファクター(変換率)の計算式の根拠の構築だった。これは一種の企業秘密ともいえる計算式で、それをどのような考え方と精度で打ち出すかは非常に重要な課題だったが、品質保証の責任者である天海伸生氏をはじめとするメンバーの協力でこの難題を乗り越えることができた。

次に議論されたのはプレ審査の開催とコンサルタントの指導を受けるべきかどうかという点だった。これについては両方ともRTRS CoC認証の特殊性のため、諦めるしか選択肢がなかった。
そして最後のハードルは審査への対応をどうするかという点だった。

コロナ禍での審査は、当初はリモート審査の予定だったが、日本の水際対策が緩和されたことを受けて審査を行うビューローベリタスアルゼンチンからは、オンラインではなく実地審査の要望が来ていた。

現地で現状をつぶさに検分され、細かく質問されることが予想される実施審査はリモート審査に比べて負担が大きく感じられたが、取得もさることながら今後の運用を重視していた須永氏たちは審査の様子や審査員の言葉が体感できるほうがいいと判断し、サプライヤーである商社2社と一緒に3社合同で実施審査を受けることを決めた。

ここでも力になってくれたのは前出のRTRS-Technicalのコーディネーターだった。須永氏は当初から定期的に彼女とメールのやり取りを続けていたが、審査前に改めてオンラインミーティングを申し入れ、審査書類についての判断とアドバイスを仰いだのだ。

その結果、彼女からは「Perfect!」というお墨付きをもらうことができた。「それを聞いた時に、よしこれで行けると確信しました」と須永氏は言う。
この自信をもって、正田醤油とサプライヤー2社は2022年9月下旬、5日間にわたる審査に臨み、無事に認証を取得した。

Image
正田醤油株式会社 須永浩将氏、ビューローベリタスアルゼンチン Ignacio Daffunchio、ビューローベリタスジャパン 岡崎久喜

 

取得から運用へ

日本初のRTRS CoC認証取得という快挙を遂げた同社プロジェクトチームだが、「これはまだライセンスを取得したというだけで、本当の勝負は2023年以降の運用をどうするかという点です」と言う。
「もちろん英国を含むヨーロッパ諸国への販路拡大のためにも役立てたいですが、せっかく先駆けたのだから国内における正田醤油のステータス向上にも役立てて、業界のイニシアチブを取ることを志したいと思います」とも。
取得だけでなく運用においても先駆者であり続けたいという思いと姿勢が正田醤油を力強く支えてくれることだろう。

Image
RTRSプロジェクトチームの皆さん

(取材:2022年12月28日)

 

【お問い合わせ】

ビューローベリタスジャパン(株) システム認証事業本部
TEL:045-651-4784(代表) FAX:045-641-4330
ウェブサイト
お問い合わせフォーム

【ビューローベリタスのサービス】

食品認証