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ISO20400の活用について~持続可能な調達に関するガイダンス(Sustainable procurement - Guidance)

1.サプライチェーンを取り巻く環境変化

「サプライチェーン」という用語は、ほぼ日本語として使用されるようになってきました。これは、設計・製造・販売・物流といった組織のコアプロセスが全世界へ展開されるようになったこと、また日本企業にとっては、垂直統合型の組織形態から水平分業の取引の連鎖へと変化してきたことに起因しています。ビジネスの立ち上げ時期からサプライチェーンを考慮した製品開発・製造・販売は常識化しており、迅速かつ最大限、効率的に運用することが、ビジネスの上で競争優位となることは明白です。
また、SDGsの浸透により、サプライチェーンにおける環境配慮や人権への取り組みも、企業の評価軸として取り上げられるようになりました。グローバル展開する企業にとって、外部の評価はさまざまな利害関係者の代表的な声としてとらえられるようになっているといえるでしょう。

 

2.ISO26000の誕生

1990年代頃から、企業の社会的責任(CSR)が世界的な関心事になった背景に、経済のグローバリゼーションの急速な進展がありました。多国籍企業が巨大化する一方、低コストを求め、途上国に伸長するサプライチェーンのなかで、強制労働・児童労働などに代表される人権問題、貧富の格差拡大、環境問題などが深刻化しました。

また、NGO・消費者・株主などが企業行動への関心や監視を強めたこともCSR推進の大きなきっかけとなり、企業の不祥事も世界的に頻発しました。企業には、財務面だけでなく、社会や環境に対する責任が強く求められ、企業経営にとってもCSRは重要なテーマとなり、ISO26000の規格発行へと進展していきます。

当初ISO26000はCSR規格として議論が行われていましたが、持続可能な社会づくりのためには企業以外の組織にも社会的責任が求められること、また幅広い組織への適用がこの規格の重要度と意義を増すであろうといった理由から、CSR規格ではなく、あらゆる組織を対象としたSRの規格として開発することになりました。
ISO26000の主旨は、下記の3点に集約されます。

ISO26000開発の背景

  • CSRではなくサスティナビリティ
    当初はCSR規格として議論が行われていたが、持続可能な社会づくりのために企業以外の組織にも社会的責任が求められること、また幅広い組織への適用がこの規格の重要度と意義を増すであろうといった理由から、CSR規格ではなく、あらゆる組織を対象とした社会的責任の規格を開発することに。
  • 第三者認証を必要としない手引書
    ISO26000は、組織が社会的責任を実現するための推奨事項を「パッケージ」にして提供する手引書(ガイダンス文書)として策定。
  • マルチステークホルダーの関与
    作業部会は、産業界、政府、労働者、消費者、NGO、その他有識者等の6つのカテゴリーからなるステークホルダー・グループによって構成され、どのグループも優越的な地位を占めることがないように特別な配慮がされた。

ISO26000では7つの中核課題である、組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者に関する課題、コミュニティ参画および発展が提議され、この考え方はその後発行されることになったISO20400の基本理念にも引き継がれています。

 

3.人権意識の高揚と外部評価

2011年に米国の国際政治学者、ハーバード大学ジョン・ラギー教授が主導した国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」によって、ビジネスの世界においても人権尊重の概念が重要視されるべきとの意見が高揚してきました。これはSDGsやESGといった考え方の中でも取り上げられ、改めて事業活動における人権を考えるきっかけとなりました。

また21世紀に入り、さまざまな団体・NPO・金融機関などが企業を多方面から評価するようになりました。その代表格として、企業のCO2排出量の報告を受け、その取り組みについて評価する機関であるCDP(Carbon Disclosure Project)、ダウジョーンズ(DJSI)、MSCI(モルガン・スタンレー社関連会社)があり、経済・環境・社会面の評価軸を公表してESG投資のベースとなる企業評価を実施しています。その他、企業が自己評価に使用するためのツールを提供するエコバディスやWBA(World Business Alliance)といった団体も存在感を持つようになっています。

 

4.ISO20400の発行

2017年11月発行された同規格は、すでに施行されているISO26000「社会的責任に関する手引」を補完し、企業や団体が調達を通じて持続可能な開発に寄与するための指針とされています。
ISO20400はISO26000同様ガイドライン規格であり、認証規格・マネジメントシステム規格ではありません。社会的責任に関する包括的な規格であるISO26000(2010年発行)に含まれている内容の実践と普及を、サプライチェーン全体に展開するための規格と位置づけられています。

 

5.ISO20400規格概要

ISO20400は持続可能な調達の原動力として下記を挙げています。マルチステークホルダーの考え方が反映されており、顧客・市場・行政・サプライチェーン・評価機関といったさまざまな利害関係者のニーズと期待に応える姿勢を求めています。

利害関係者

概要

顧客

サプライチェーン全体での安全性、環境上の利点、消費者の期待 など

競争利益

競争市場におけるサプライチェーンが支持する持続可能な価値提案

イノベーション

共有値によって、また市場開拓のため、イノベーションを刺激

ステークホルダーの期待

環境、社会的要因への考慮に対する期待に対応

規制及び規則

サプライチェーンにおける法令順守

公共政策

競争力の促進、公共資源の効率的マネジメント

サプライチェーンのセキュリティ

製品のリコールの回避など

投資の信頼

格付け機関のスコア向上

労働者

ディーセントワークの推進など

ISO20400は、構造の理解を求め、組織の方針に整合させた状態で、組織内の各機能・プロセスに調達活動を統合していくことを要求しています。

ISO20400の骨格

 

持続可能な調達への配慮として、以下を挙げています。

  • リスク管理(サプライチェーン全体での持続可能な調達に与えるリスクの分析)
  • デューデリジェンス(サプライチェーン全体の活動・設計・購入・使用・処分の分析)
  • 優先順位の設定(関連性・中心的活動・法規制・サプライチェーンなど)
  • 重要性(持続可能性への影響度・社会的期待など)
  • 検討課題(必要な努力・法令順守・目的への貢献・影響力など)
  • 影響力の行使(管理関係の度合い)
  • 契約条件(販売の比率など)
  • 加担の回避(直接的加担・利益をもたらす加担・暗黙の加担)

特に最後の暗黙の加担には、意識せずとも間接的に加担してしまう危険性を認識するよう警鐘を鳴らしています。

また、人の教育の条項では「組織文化の醸成」の重要性を説いており、単純な教育、訓練以上の深いレベルでの組織的な自覚を促しています。
規格の構造はPDCAアプローチに基づいており、供給者の選定や評価について7.4条、7.5条で具体的な実務要求事項にまで及んでいます。
そして、従来のコストや納期だけの評価軸に加えて、ライフサイクルコストや社会への外部費用まで考慮に入れるべきとしています。

PDCAサイクルとリスクに基づく考え方を含むアプローチの採用

 

ISO20400は、組織の戦略や方針だけでなく、マルチステークホルダーを意識し、供給者の選定・評価・コスト概念の転換までを意図した実務的参考書といえるでしょう。
ご興味を持たれた方はぜひISO20400を活用してみてはいかがでしょうか。

 

システム認証事業本部 水城 学


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