事例紹介

CASE STUDY:サンハウス食品株式会社(FSSC22000)

2021-10-11

味づくりの固有技術をマネジメントシステムで補完し完璧に
食品製造の極みを目指してFSSC22000を運用

サンハウス食品株式会社:ロゴ

サンハウス食品株式会社(愛知県江南市)

 

■固有技術と機械化の融合を目指して

サンハウス食品株式会社(愛知県江南市)工場

サンハウス食品は、ハウス食品グループの関連企業だ。1970年に操業開始。ハウス食品グループで最初にレトルト食品製造を手掛けた工場である。ククレカレーやカレーマルシェ、フルーチェといったハウス食品ブランドの家庭用レトルト食品のほか、テーマパークのレストランや外食チェーンなどへの業務用食品の提供も積極的に手掛け、製造する食品は年間350アイテムを超える。年商約90億円、従業員330人、工場は愛知県江南市に所在。製造責任を徹底的に追及した体制で業務に取り組み、昨年創業50年を迎えたベテラン企業だ。 そんな同社が食品安全マネジメントシステムの国際規格であるFSSC22000を取得したのは5年前、2016年のことだった。 取得の動機について、小笠原徹哉取締役工場長は次のように語る。

 

取締役工場長の小笠原徹哉氏

「弊社が製造しているレトルト食品は中高価格帯のものが多いのですが、この種の製品は、中小量生産品であることが多く、したがって製造ラインの切り替え回数も多い。製造シーンにおいて人が関与する機会が多く、デリケートな製造条件もあることから、必然的に人為的ミスが起こる危険性が高まります。ハウス食品グループは“日本一の品質を作る”をスローガンにしていますので、その一員である弊社としては、この危険性を何とかゼロに低減したかった。そこでISO よりもさらに前提条件プログラムの手法を厳密に設定していて、追加の要求事項で食品安全対策などについて補完しているFSSC22000の取得を目指したのです」。

 

品質保証部次長の速水英人氏

マネジメントシステム認証の取り組みについては、1997年に食品業界では初期の段階で品質マネジメントシステムのISO9002を取得している。それからすでに25年近くが経過し、現在在籍している工場スタッフはほぼ全員、入社した時からISOの仕組みがあり、マネジメントシステムを活用しての業務に慣れている状況だ。そのため、ハードルの高いFSSC22000の取得や運用も「次にやるべきこと」と前向きに捉えられ、現場からの不満やクレームも出なかったという。

それどころか、一部からは真逆の声があがった。それは「もっとレベルアップしたいので、さらに建設的で厳しい指摘がほしい」「書類が整っているかどうかよりも、現場の運用に問題や課題がないかを重点的に見てほしい」という認証機関への要望だった。

こうした前向きな声を受けて、2年目(2回目)の維持審査時に認証機関の変更が行われた。現場での実務状況をよくチェックしてくれて、より実務的で厳しい指摘をしてくれる認証機関を求めたのだ。 その結果、同社の要望に添うプレゼンテーションがあったビューローベリタスが新たな認証機関に選ばれた。海外向け製品の生産を行っている背景もあり、ビューローベリタスが世界各国に拠点を持つグローバルな認証機関だったことは、アドバンテージが高かった。

 

■評価に励まされたビューローベリタスの審査

誰もが知っている名物レトルト食品も、実は同社の工場で生産されている

今回の維持審査が初となるビューローベリタスの審査について、感想を聞いてみた。

「ビューローベリタスの審査は、希望通り、指摘が本質的で実務的でした」と前出の小笠原工場長は言う。「経験値のある審査員が来てくれて、他社の例についても聞かせてもらいました。そのうえで自社のレベルがどれぐらいなのかを教えてもらったことで俯瞰的に見ることができ、とても勉強になりました」とも。
「また、努力して整えてきた品質に関わるいろいろな仕組みやシステムを評価してもらえたことも嬉しかったです」。

 

JAXAから宇宙日本食製造施設の認定を受けて、宇宙船内食用のレトルトカレーも製造している

同社の工場には、高度な品質管理システムがいくつも組み入れられている。
工場への不審者入場を防ぐため、入退出管理を徹底するための静脈認証システムや品質保証カメラを活用。従業員の体調・体温管理や備品管理などはもちろん、工場内の安全衛生を確保するための入場者把握も兼ねる。

また、生産管理システムを活用し、生産計画が作成されると一元化された生産情報からQRコードを使った原料計量システムに指示が出される。この仕組みには配合情報はもちろんのこと、原料形態に付随する袋の糸やリングなどの附属品情報も組み入れ、異物混入を防ぐ回収チェックシステムを兼ね備えている。仕上げソースの製造条件もQRコードを活用したレシピシステムを採用。製造する釜のモニターに表示された原料のQRコード照合で投入原料の重量確認を実施し、システムに組み込まれた条件通りの加熱や攪拌を自動で行うことができ、常に安定した品質の生産を行なっている。他に各製造工程で使用されるチェックシートの発行も生産計画と連動させるなど、品質と安全を担保するためのITシステムが独自で構築されているのだ。

「ビューローベリタスの審査員は、こうした独自のシステムや仕組みにちゃんと気付き、評価してくれました。それがとても励みになりましたし、現場もプライドを高めたのではないでしょうか」。

 

■“自分で考える習慣”を身に付ける

しかし、「今回の審査でいちばん良かったことは、実は他にある」と小笠原工場長は言う。
それは、「なぜこの要求項目があるのか、なぜ必要なのかについて、従業員が自ら再確認したこと」だそうだ。

つまり、トップ陣はルール通りの手順を踏んだり、プロセスや結果を残したりする“作業”をする以前に、「なぜそうしないといけないのか?」について“自分で考える”ことを、FSSC22000認証に関する一連の活動の最重点課題に据えたのだが、それをクリアすることに成功したのだ。

「今までも、自律・自責をずっと唱えてきたし、自分たちで考えて行動できるようになることが重要だと現場に何度も言ってきたが、FSSC22000 の構築や今回の維持審査を通して、それを従業員一人一人が実現・実践できるようになったことがいちばんの収穫だった」と小笠原工場長は言う。

たとえば、要求事項に取り上げる項目の洗い出しをしてみたら、冷凍営業倉庫から原料運搬にかかる時間や温度の管理、運搬前後の原料の管理など、予想を超える多くの管理項目が出てきた。
これら一つひとつに要不要の評価を与え、取り決めが必要だと判断した項目にはどのようなチェックが必要か、出た結果をどう判断するかなどをつぶさに決めていく。この作業について最初から最後まで、スタッフが取り組み、やり遂げた。

「こうした複雑で根気のいる作業に関わることで、スタッフはたくさんのことに気付き、見逃していたことを発見できた。その結果、なぜ品質管理がそんなに大事かがよく分かり、さらには一連の作業をやり遂げたことで自分の判断軸ができ、自信にもつながったはずだ」と小笠原工場長は誇らしげだ。

 

■FSSCを、未来を拓く一助に

こうして同社の進化に一役も二役もかったFSSC22000だが、運用のなかで出てきた問題・課題もある。 それは、今後新たに入社する工場スタッフにも、この高度なFSSC22000を定着させていくための方法の模索だ。

またFSSC22000の本質や要求事項の背景を理解し、自分でどうするべきか考えて取り組むというボリュームのある活動を、限りのある雇用人数で、オーバーワークになることを避けながら、どう定着、維持していくかについても、頭を悩ませるところだ。

さらに、技術伝承にFSSC22000をうまく活用していきたいという意向もある。(速水英人品質保証部次長) というのは、現在、工場内に30歳代~40歳代の中間層が非常に少なく、圧倒的な人員数を誇った団塊の世代からこの少ない中間層への技術伝承に厳しさを感じているからだ。

最初にも述べたように、固有技術が必要とされる同社の製品の質と量の維持は、機械化を進めるだけではできない。そこでFSSC22000の構築方法を応用して「過去の失敗集」を作り、それをテキストに技術伝承をしていきたいと考えているそうだ。

新ラインで製造開始した製品

同社では、7月から新たに大容量業務用ラインを稼働させてコンビニエンスストアなどの大型需要にも応えられる体制を作りつつあるが、この新ラインを含む生産増大と環境負荷の軽減を同時に達成する取り組みにも注力する予定だという。

コロナ禍で大きく減った外食需要。そして、不安定になった家庭需要、まだ結果が見えないコンビニ需要―複雑なバイアスがかかる食品製造の現場で、FSSC22000を多彩な糧にしようとしている同社の戦略に、今後も注目していきたい。

(2021年8月5日取材)

 



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