ISO 20400 「持続可能な調達に関するガイダンスの利用方法」

2017年11月国際標準化機構(ISO)の新規格ISO 20400「持続可能な調達に関するガイダンス(Sustainable procurement - Guidance)」が、正式発行されました。
同規格はすでに施行されているISO 26000「社会的責任に関する手引」を補完し、企業や団体が調達を通じて持続可能な開発に寄与するための指針を示すものとして位置づけられています。
調達活動において、環境・法令・倫理・人権等の観点で将来にわたり持続可能な活動であることに貢献する目的で作成されています。
調達の仕方は会社の活動だけでなく、社会・経済・環境に影響を与え、持続可能な調達をすることで、世界が変えられるという考えが根底にあります。
サプライチェーンマネジメントは今まで業界団体の主導した規格、RBA監査やSEDEXのSMETA監査が中心で、要求事項を満たしているのか項目ごとの確認がされていましたが、ガイドラインが提示されたことでマネジメントシステムの観点で運用ができるようになりました。

グローバル社会の目で見ると、日本は人権というテーマでは一般的に、「ジェンダー平等が進まない国」として映りますが、サプライチェーンマネジメントの人権問題にも課題を残しています。ISO20400を通じてデューデリジェンスを実施し、サプライチェーンマネジメントの持続可能性への悪影響を取り除くことは組織の責任です。サプライヤーには大手だけでなく多くの中小企業も含まれます。各種のコスト負担も含めて、それら中小企業へ配慮するからこそ、持続可能な調達を要求しないという話をよく聞きますが、実際には持続可能な調達をしないことで、その組織で働いている従業員の人権が守られていない現実を放置しているということを正しく理解する必要があります。

世界では、法制度として英国の現代奴隷法(UK Modern Slavery Act 2015)や、カリフォルニア州サプライチェーン透明化法(CATSCA 2012)が施行されています。

ISO20400を利用してサプライチェーン全体の運用を正しく理解し、課題がある場合はその課題を取り除くこと、課題がない場合は適切に管理されている組織活動の証明としての利用を検討してみてはいかがでしょうか。

ISO20400規格の概要

Figure 1 - Schematic view of the content of ISO20400

Schematic view of the content of ISO20400
出典:「ISO 20400:2017(en) Introduction Figure 1 - Schematic view of the content of ISO 20400」

1.範囲

2.参照規格

3.用語と定義

4.基本の理解

持続可能な調達の概要を示し、持続可能な調達の範囲と原則を説明し、なぜ持続可能な調達を推進するかを考察
 4.1持続可能な調達の概念
 4.2持続可能な調達の原則
 4.3 持続可能な調達の中核主題
 4.4 持続可能な調達の推進
 4.5 持続可能な調達の重要な考慮事項

5.組織の調達方針と戦略に持続可能性を統合する<トップマネジメント>

持続可能な調達のすべての関係者が意図、方向性、および優先事項を文書化し、調達機能と戦略に持続可能性を統合する方法のガイダンスを提供
成果物は持続可能な調達の戦略
 5.1 持続可能な調達にコミットする
 5.2 説明責任の明確化
 5.3 調達を組織の目標とゴールに合わせる
 5.4 調達慣行とサプライチェーンを理解する
 5.5 運用管理

6.持続可能性に向けた調達機能の編成 <調達管理>

持続可能な調達を実施し、継続的に改善するために必要な組織条件と管理技術の説明
 6.1調達管理
 6.2 人員の有効化
 6.3 利害関係者の特定と関与
 6.4 持続可能な調整の優先順位の設定
 6.5 パフォーマンスの測定と改善
 6.6 苦情メカニズムの有効化

7.調達プロセスへの持続可能性の統合 <調達に責任を持つ個人>

持続可能性の考慮事項を既存の調達プロセスに統合する方法の説明
成果物は持続可能性も含めた調達戦略
 7.1既存のプロセスに基づく
 7.2 計画
 7.3 仕様書に持続可能性の要件を統合
 7.4 サプライヤーの選定
 7.5 契約の管理
 7.6 契約のレビューと学習

システム認証事業本部 岡崎 久喜

 


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