省エネ適合性判定基準の変更について
~大規模非住宅建築物に係る省エネ基準の引き上げ~
2030年度以降新築される建築物について、ZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能を確保するとの政府目標を踏まえ、適合義務化が先行している大規模非住宅建築物(床面積2,000㎡以上)の省エネ基準が引き上げとなりました。本記事では、「大規模非住宅建築物に係る省エネ基準の引上げ」について紹介いたします。
大規模非住宅のBEI基準の引き上げ
大規模非住宅建築物(床面積2,000㎡以上)の省エネ基準について、 2024年4月1日以降、用途に応じてBEI=0.75~0.85に引き上げとなりました。(※1)増改築については、増改築後の床面積の合計が2,000㎡以上となる建築物が対象となります。
大規模非住宅建築物の省エネ基準が厳しくなったことで、今までの設計仕様で省エネ基準を満たすことができなくなる可能性があります。設計者は基本設計の段階から省エネ基準を意識して設計を進めることで、実施設計段階での設計変更を少なくし、円滑な申請を行うことができます。
※1 出典:国土交通省住宅局「大規模非住宅建築物に係る省エネ基準の引上げ 及び分譲マンションに係る住宅トップランナー基準の設定について」
大規模非住宅建築物とは
大規模非住宅建築物は、非住宅部分の床面積が2,000㎡以上の規模が該当します。床面積は開放部分を除いた床面積となります。(※2、※3)すなわち、省エネ適合性判定計画書の第五面の開放部分を除いた床面積が2,000㎡以上の場合に大規模非住宅建築物となります。
※2 出典:e-Govポータル「平成二十八年経済産業省・国土交通省令第一号 建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令」
(特定建築物の非住宅部分の規模等)
第四条 法第十一条第一項のエネルギー消費性能の確保を特に図る必要があるものとして政令で定める規模は、床面積(内部に間仕切壁又は戸を有しない階又はその一部であって、その床面積に対する常時外気に開放された開口部の面積の合計の割合が二十分の一以上であるものの床面積を除く。第十一条第一項を除き、以下同じ。)の合計が三百平方メートルであることとする。
※3 出典:e-Govポータル「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律施行令」
省エネルギー基準に準拠したプログラムの更新
2024年4月1日から非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム(国立研究開発法人建築研究所)が更新(ver3.6)され、最新のプログラムで出力された計算書で大規模非住宅建築物の省エネ基準が明示されるようになりました。(※4、※5)
大規模非住宅建築物の適合性を最新の計算書で確認することができますので、省エネ適合性判定を申請する際は最新のプログラムで出力した計算書を提出してください。
※4 モデル建物法(プログラムVer3.6 出力例)
(6)判定 | BPIm≦1.00 | 達成 | BEIm≦1.00 | 達成 |
BEIm≦0.80(大規模基準) | 達成 | |||
誘導BEIm>0.8 | 非達成 |
※5 標準入力法(プログラムVer3.6 出力例)
適用する基準 | 一次エネルギー消費量 | [GJ/年]([MJ/(延床m2・年)]) | 判定結果 | |
設計値 | 基準値 | |||
建築物エネルギー消費性能基準 | H28年4月以降 | 1,905.1(1,231.48) | 3,302.3(2,134.65) | 達成 |
H28年4月現存 | 3,582.1(2,315.51) | 達成 | ||
大規模建築物エネルギー消費性能基準 | R6年4月以降 | 1,905.1(1,231.48) | 2,784.2(1,799.74) | 達成 |
R6年4月現存 | 3,302.3(2,134.65) | 達成 | ||
H28年4月現存 | 3,582.1(2,315.51) | 達成 | ||
建築物エネルギー消費性能誘導基準 | R4年10月以降 | 2,023.3(1,307.89) | 2,266.0(1,464.77) | ・・ |
R4年10月現存 | 3,302.3(2,134.65) | 達成 |
増改築の大規模非住宅の基準引き上げに伴う経過措置
既存建築物の竣工年月日(完了検査年月日)に応じて基準引き上げに伴う経過装置(※6)があり、2024年3月31日までに検査済書が交付された建築物に増改築する場合は改正前の基準となります。2024年4月1日以降に検査済書が交付された建築物に増改築して大規模非住宅(床面積2,000㎡以上)になる場合は、基準引き上げが適用されるので注意が必要です。
※6 出典:国土交通省住宅局「大規模非住宅建築物に係る省エネ基準の引上げ 及び分譲マンションに係る住宅トップランナー基準の設定について」
建築認証事業本部 省エネ判定部 鈴木 英俊・織田 悠志