環境不動産の種類と認証取得の推移
脱炭素社会の実現やSDGsの達成、ESG投資への取り組みが広がり、環境配慮活動が経済的観点で評価される社会に変化しています。環境配慮活動の一環として、エネルギー性能や建物利用者の健康・快適性等に優れた性能を有する建物への取り組みが、重要となりつつあります。
建築物の評価・認証・表示は各国に存在し、以下のとおり特徴ごとにグループ化することができます。
- エネルギー性能に特化して建築物を評価
- 建物の総合的な環境性能を評価
- 建物の環境性能に加え、快適性や健康性に主眼を置いた評価
- 建築物を取り扱う不動産会社やファンド等の取り組みを評価
環境性能やエネルギー性能の高い建物への取り組みを推進するには、建築物の供給者と利用者が制度について理解し、供給者が情報を開示、取得した評価に基づいて利用者が目的に応じ選定することが重要です。
評価対象 | 日本 | 米国 | 英国 | オーストラリア | シンガポール | |
---|---|---|---|---|---|---|
個別建築物 | エネルギー性能 | BELS | ENERGY STAR (建築物評価は米国のみ) | EPC | Green Star (欧州各国でそれぞれ独自に策定) | ― |
総合環境性能 | CASBEE | LEED (全世界で使用可能) | BREEAM (全世界で使用可能) | NABERS | BCA Green Mark | |
快適性・健康性 | CASBEE-ウェルネスオフィス | WELL (全世界で使用可能) | ― | ― | ― | |
不動産会社・ ファンド | GRESBE | GRESBE | GRESBE | GRESBE | GRESBE |
参照:環境省 ZEB PORTAR(ゼブ・ポータル)「評価・認証・表示制度」
以下、代表的な制度をご紹介します。
■BELS
BELS(Building-housing Energy-efficiency Labeling System:建築物省エネルギー性能表示制度)は、国土交通省が定めた「建築物の省エネ性能表示のガイドライン」の一つで、省エネ性能に特化した評価・表示制度です。
BELSはエネルギー性能のみを評価する制度です。諸外国のエネルギー性能評価制度は、エネルギー消費量の実績値を評価しますが、BELSは設計時点の性能を評価する点が特徴です。
BELSの評価は、BEI(Building Energy Index:基準一次エネルギー消費量に対する設計一次エネルギー消費量の割合)を指標として用います。BEI値によって星の数で5段階評価が行われます。
※2024年1月現在の認証物件総数:住宅用途506,329件、非住宅用途4,561件、複合用途32件
一般社団法人住宅性能評価・表示協会ウェブサイトを参考に、ビューローベリタスジャパンにて作成
■CASBEE
CASBEE(Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency:建築環境総合性能評価システム)は、建築物の環境性能を評価するシステムです。
評価対象は建築物から都市まで幅広く、評価対象に応じて分けられた各評価ツールを総称して「CASBEEファミリー」と呼ばれています。
CASBEEはエネルギー性能だけではなく、室内環境などを含めた総合的な環境性能を評価するシステムです。L(Load:環境負荷)とQ(Quality:環境品質)の2つを評価軸とし、Lを分母、Qを分子にとったBEE(Built Environment Efficiency:環境性能効果)によって、Cランク(劣っている)から、B-、B+、A、S(大変優れている)の5段階で評価が行われます。
※2024年2月現在の認証物件数:3,034件
一般財団法人住宅・建築SDGs推進センターウェブサイトを参考に、ビューローベリタスジャパンにて作成
■CASBEE‐ウェルネスオフィス
CASBEE‐ウェルネスオフィスは室内空間の快適性・健康性に対するWELL Beingに基づく要求の高まりに対応するため、Q(Quality:環境品質)の健康に関する評価項目を拡大して評価するシステムです。
※2024年2月現在の認証物件数:137件
一般財団法人住宅・建築SDGs推進センターウェブサイトを参考に、ビューローベリタスジャパンにて作成
■LEED
LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)は、米国非営利団体USGBC(U.S. Green Building Council)によって開発された、建築物の総合的な環境性能を評価するシステムです。
評価対象は建築物から都市まで幅広く、評価対象に応じて5種類の異なる認証カテゴリーが設けられています。評価項目には必須項目と加点項目が設定されており、加点項目を満たすことで得られたポイントの合計によってCertified、Silver、Gold、Platinumの4段階で評価が行われます。
※2024年2月現在の日本国内認証物件数:258件
USGBCウェブサイトを参考に、ビューローベリタスジャパンにて作成
■WELL
WELLは、公益企業IWBI(International WELL Building Institute)によって創設された、健康、快適性に重点を置いた環境認証制度です。
WELLの評価項目は、人の健康・快適性に焦点をあてています。環境工学だけではなく医学的観点から検証される点が特徴です。WELLの評価項目は、空気や水などのコンセプトから構成されています。各コンセプトはFeatureという複数の評価項目に分かれており、必須項目をすべて満たしたうえで加点項目を一定以上満たすことで、点数に応じ、Silver、Gold、Platinumの3段階で評価が行われます。
※2024年2月現在の日本国内認証物件数:48件
IWBIウェブサイトを参考に、ビューローベリタスジャパンにて作成
■認証取得推移
各認証の取得件数推移をみると、BELSおよびCASBEE建築の取得件数が年々増加していることが見て取れます。カーボンニュートラルや脱炭素社会の実現において、建築物にも環境性能・エネルギー性能への取り組みが推進されています。
CASBEE-ウェルネスオフィスについてはWELL Beingの考え方が徐々に普及しており、今後、建築物に対し快適性や健康性を求める考えが広がることが予想されます。
LEED、WELLは、アメリカの認証制度であることから、BELSやCASBEEのような広がりは今のところありませんが、今後外資企業の日本参入や、国際基準での評価を求めるグローバル企業への訴求が考えられます。
ビューローベリタスでは、BELS評価、CASBEE評価認証、CASBEE適合性検証、CASBEEウェルネスオフィス評価認証、LEED認証適合性検証、WELL認証適合性検証など、環境認証に関するサービスを提供しています。ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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