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2024年施行:建築基準法の改正内容について

2023-12-05

令和4年6月17日に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)」から、2024年に施行される建築基準法のなかで、お問い合わせの多い項目をピックアップしてご紹介します。

引用:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料」

 

防火規制に係る別棟みなし規定の創設

【建築基準法第21条、第27条、第61条ほか関係】防火規制に係る別棟みなし規定の創設

<現行>

混構造建築物や複合用途建築物の場合、防火規制については一部の構造や用途に引きずられ、建築物全体に厳しい規制が適用されている。

<改正概要>

  • 延焼を遮断できる高い耐火性能の壁等(火熱遮断壁等)(法第21、27、61条)や防火壁(法第26条)で区画すれば、建築物の2以上の部分を防火規制の適用上別棟とみなすことを可能とする。(区画された部分ごとに規制を適用する。)
法第27条 法第26条

 

<改正の効果>

火熱遮断壁等で区画することにより防火規制を一部適用除外することが可能となることで、混構造建築物や複合用途建築物において、木造化等の設計を採用しやすくなる効果が見込まれる。

 

【建築基準法第21条、第27条、第61条】【建築基準法施行令第109条の8】火熱遮断壁等の基準

<改正概要>

  • 火熱遮断壁等(令第109条の8)(=延焼を遮断できる高い耐火性能の壁や部材で構成されるコア)の基準は以下のとおり。(壁等(現行の法第21条第2項第2号、令第109条の7)をベースとして、合理化)
改正概要


(補足)【建築基準法施行令第109条の2の2第2・3項、第112条第22・23項】別の建築物とみなす部分に対する規定の適用

<改正概要>

主要構造部が準耐火構造等の建築物を対象とした防火上の性能を補足する規定を火熱遮断壁等で区画することにより分離された「建築物の部分」にも適用することとする。

【対象】防火上の性能を補足する以下の規定

  • 令第109条の2の2(層間変形角)
  • 令第112条第1、4、5項(面積区画)
  • 令第112条第11項(竪穴区画)

【令第109条の2の2第2・3項、令第112条第22・23項の適用イメージ】

<例:竪穴区画に関する規定(令第112条第11項関係)>

例:竪穴区画に関する規定(令第112条第11項関係)


(補足)【建築基準法施行令第112条第22項、第114条第6項】政令上の防火規制(防火区画、隔壁)に係る別棟規定の整備

<改正概要>

第36条に基づく政令の規定(防火区画、隔壁)について、火熱遮断壁等で区画された建築物の部分を別棟とみなすことができることとし、それぞれの部分で規制の適用の有無を判断する。

【対象】 第112条第12項・第13項(建築物の面積・階数・用途等に応じて規制の適用の有無が分かれる規定)

(例)第112条第12項の場合

3階を病院等とした建築物で、階数が3で延べ面積が200㎡未満 のものの竪穴部分については、第112条第12項において、所要の 防火区画をすべきとされている。 火熱遮断壁等で区画した2階建部分には、竪穴部分の防火区画を不要とする。

【対象】 第114条第3項・第4項(主要構造部の耐火性能等によって適用除外を受けることができる規定)

【対象】第114条第3項・第4項(主要構造部の耐火性能等によって適用除外を受けることができる規定)


(補足)【建築基準法施行令第113条第3項】火熱遮断壁等の防火壁・防火床みなし

<改正概要>

火熱遮断壁等を法第26条の「防火壁・防火床」とみなすことができることとする。(令第113条第3項。現行の「壁等」と同じ扱い)

○防火壁・防火床(令第113条第1項) 火熱遮断壁等(令第109条の8)

 

【関連改正/建築基準法施行令第126条の4第2項、第128条の6】避難関係規定(非常用照明装置及び内装制限)に係る別棟みなし規定の拡充

<改正概要>

  •  避難関係規定においては、建築物の部分が、相互に火熱・煙による防火上・避難上有害な影響を及ぼさない構造である場合には、廊下、避難階段及び出入口に係る規定(令第5章第2節)について、規定の適用上別棟とみなすことができることとしている(避難別棟、令第117条第2項)。
  • 非常用照明装置及び内装制限に係る規定についても、避難別棟と同様に別棟とみなすことができることとする。

    避難規制に係る別棟規定の整備状況

※第5章第3節(排煙設備)については、令第126条の2第2項に別途別棟みなし規定(相互に煙による避難上有害な影響を及ぼさない構造)を整備済。

<改正の効果>

内装制限の緩和等(例:小規模非特殊用途部分をあらわしで施工)を可能とする。

 

既存不適格建築物の増築等に係る規制の合理化

【建築基準法第86条の7、施行令第137条~137条の15】既存建築物の増築等に係る既存遡及の緩和(防火・避難規定)

<現行>

防火・避難規定における既存不適格遡及の緩和措置は限定的にしか設けられておらず(※)、原則遡及適用されるため、ストック活用が困難な場合がある。
※法では小規模増改築に係る第26条、第27条、第61条の緩和措置 

<改正概要>

  • 既存不適格建築物の増築等における既存遡及を緩和する規定を大幅に拡充する。
    改正概要

<改正の効果>

増築等に当たっての防火・避難規定における現行規定の適用範囲を規定の趣旨上適用させるべき最低限の部分に限定することで、一定の安全性向上を図りつつ、増築等による建築物の省エネ化やストックの有効活用を円滑化する。

 

【建築基準法第86条の7第3・4項、施行令第137条の15】既存建築物の増築等に係る既存遡及の緩和(防火・避難規定)①増築等を行わない部分

①増築等を行わない部分は、廊下幅(令第119条)、非常用照明(令第5章第4節)、非常用進入口(令第5章第5節)及び内装制限(法第35条2)に係る規定の遡及対象外とする。
※無窓居室の主要構造部(法第35条の3)については従来から措置済

増築等を行う部分:遡及対象
増築等を行わない部分:遡及対象外
※増築等をする階など、避難経路に供する部分は付随して基準適合が必要

【対象とする改修イメージ】

(例) 廊下幅が基準(令第119条)を下回る場合

(例) 廊下幅が基準(令第119条)を下回る場合

 

【建築基準法第86条の7第1項、施行令第137条の2の2~第137条の11の2】既存建築物の増築等に係る既存遡及の緩和(防火・避難規定)②小規模増改築

➁小規模増改築(増改築に係る対象床面積※1が50㎡以下かつ基準時における延べ面積の1/20である場合)については、主要構造部規定、防火区画規定、避難関係規定を遡及対象外※2とする。

※1 増改築に係る床面積の算定から火災の発生のおそれの少ない用途(階段室、機械室、便所、浴室、昇降路等)に供する部分を除く。
(防火・避難規定の既存遡及の緩和に係る対象床面積の算定に関してのみの特例であることに留意。)

※2 既存部分に遡及等を求める規定

  • 直通階段の竪穴区画(令第112条第11項等)

  • 2方向避難(令第121条)(ただし、退避区画の設置による代替措置を許容することを想定)

<性能要件>

当該増改築が既存部分の危険性を増大させないこと

対象とする改修イメージ

 

【建築基準法第86条の7第1項、施行令第137条の2の2~第137条の12】既存建築物の増築等に係る既存遡及の緩和(防火・避難規定)②別棟増築・大規模修繕模様替

②防火別棟・避難別棟を増築する場合においては、主要構造部規定、防火区画規定、避難関係規定を遡及対象外とする。(令第137条の2の2~令第137条の11)
※ 既存部分に遡及を求める規定

  • 竪穴区画(令第112条第11項等)
  • 屋根等関係の規定(法第22条・第62条等)

 <性能要件>

増築部分は現行基準の要求性能を有すること(告示で各基準を規定)

対象とする改修イメージ

②屋根・外壁の大規模修繕・模様替については、建築物の内部構造に係る規定(防火区画規定、避難関係規定)を遡及対象外とする。 (令第137条の12)
※ 既存部分に遡及等を求める規定

  • 直通階段の竪穴区画(令第112条第11項等)
  • 2方向避難(令第121条)(ただし、退避区画の設置による代替措置を許容することを想定)

※ 屋根等関係の規定(法第22条・第62条等)や 外壁に関係のある規定(法第21条・第23条等)も法令の規定に基づき遡及対象となる。

 
<性能要件>

避難の安全上支障とならないこと

対象とする改修イメージ

 

【建築基準法第86条の7第2・4項、施行令第137条の14第2号】既存建築物の増築等に係る既存遡及の緩和(防耐火関係規定)③火熱遮断壁等で区画された別棟部分

③火熱遮断壁等で区画された別棟部分が増築等の前から2以上存在する場合、区画された別棟部分のうち、増築等を行う別棟部分のみ現行基準適合を要求し、増築等を行わない別棟部分は主要構造部規定、防火区画規定の遡及対象外※1とする。
※1 既存部分に遡及を求める規定

  • 竪穴区画(令第112条第11項等)
  • 屋根等関係の規定(法第22条・第62条等)

※ 避難別棟、排煙別棟についてはすでに同様の措置を措置済(令第137条の14第3・4号)

火熱遮断壁等で区画された別棟部分のうち、増築等を行う別棟部分:遡及対象
増築等を行わない別棟部分:遡及対象外

対象とする改修イメージ

 

【建築基準法施行令第137条~第137条の15】

(参考)防火規定における既存遡及緩和措置の適用範囲

(参考)防火規定における既存遡及緩和措置の適用範囲 
(参考)防火規定における既存遡及緩和措置の適用範囲 
(参考)防火規定における既存遡及緩和措置の適用範囲

 

【建築基準法第86条の7】一定範囲内の増築等において遡及適用しない規定・範囲の追加(接道規制・道路内建築制限)

<現状・改正主旨>

  • 接道義務や道路内建築制限の既存不適格となっている建築物については、大規模修繕等となる省エネ改修等を行う場合には現行規定が適用されてしまうため、省エネ改修等自体を断念せざるを得ない。

<改正概要>

  •     既存不適格建築物について、安全性等の確保を前提に接道義務・道路内建築制限の遡及適用を合理化

改正概要

建築認証事業本部 本多 徹

 

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