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カバー画像(脱炭素)

脱炭素社会に向けて ~ISO50001:エネルギーマネジメントシステムの活用~

1.地球温暖化の現実

地球が危機に瀕している、そんなニュースを何度耳にしたことでしょうか。パリ協定の発効によって各国の脱炭素に向けた取り組みが本格化されているように思われますが、ウクライナでの戦争も相まって、全世界で考えると充分な対策が進んでいるとはいえません。日本国内では2030年のCO2削減目標を掲げていますが、依然ゴールは遠い状況です。IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)では気温の将来予測について、21世紀半ばに実質CO2排出ゼロが実現する最善シナリオ(SSP1-1.9)においても2021~2040年平均の気温上昇は1.5℃に達する可能性があると発表しています。化石燃料依存型の発展の下で気候政策を導入しない、最大排出量のシナリオ(SSP5-8.5)においては、今世紀末までに3.3~5.7℃の昇温を予測しています。

また、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)によれば、2040年の世界のエネルギー消費量は、2014年と比べておよそ1.3倍に増加し、増加分の多くを占めるのが、中国やインドなどのアジアを中心とした新興国だと予測しています。これら新興国は、近年大きな経済発展を遂げており、今後ますますその成長は加速していくでしょう。これに伴い、経済を支える石油や石炭、天然ガスといった化石燃料の需要も増加していくとみられています。

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世界の1次エネルギー消費の推移と見通し


出典:IEA「WORLD ENERGY OUTLOOK 2016」

 

2.各国の政策

これらのことを受け止め、各国、地域ではさまざまな政策を提議し、民間部門へのインセンティブとともに実行に移されつつあります。以下、各国の状況を外観します。

  • EU
    欧州グリーンディールを掲げ、10年間で官民1兆ユーロ(130兆円)をカーボンニュートラルに充当することを表明しています。グリーンディール産業計画によると、予測可能で簡素な規制環境(蓄電池、風車、ヒートポンプ等)の鍵となる技術の製造強化を目指す「ネットゼロ産業法」の策定、レアアース等の重要原材料へのアクセスを確保するため供給源の多様化等を図る「重要原材料法」の策定などが進められています。
  • 米国
    インフラ投資雇用法によって総額1.2兆ドル、脱炭素関連で800億ドル(8.8兆円)の超党派予算で成立させました。5年間で、全国500,000か所のEV充電施設整備等に150億ドル、電力網整備に650億ドルを拠出する予定です。また、米国インフレ抑制法(IRA:Inflation Reduction Act)(2022年8月)によって今後10年間で3,690億ドル(約49兆円)を気候・エネルギー対策に支出することも決めています。
  • 日本
    菅内閣で「2013年度比46%削減」目標が発表されました。政府のグリーン成長戦略によれば、エネルギー、輸送・製造、家庭・オフィス関連産業の重点14分野を定め、10年間で2兆円の「グリーンイノベーション基金」で開発から実装まで支援し、民間企業の開発・設備投資15兆円を誘発するとしています。また、「GX実現に向けた基本方針」(2023年2月閣議決定)、エネルギー安定供給の確保を大前提としたGX「徹底した省エネルギー推進、製造業の構造転換」、「再生可能エネルギーの主力電源化」、「原子力の活用」の他、水素・アンモニアの導入促進、カーボンニュートラル実現のための電力・ガス市場整備等を推進するとしています。また、「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行によって、今後10年間で150兆円超の官民GX投資を実現させるため、20兆円規模の「GX経済移行債」等を活用した大胆な先行投資支援、カーボンプライシング(GXリーグ排出量取引制度・炭素賦課金)によるGX投資先行インセンティブ、ブレンドファイナンス等の新たな金融手法の活用の3つの措置を講じるとしています。

 

3.SDGs達成とISO50001の活用

21世紀の現在においても、世界で数十億人が最も基本的なエネルギーサービスを享受できていない憂慮すべき事実があります。「14億人が、電気を使用できない。27億人が、調理に従来型のバイオマスエネルギーを用いている」のです。近代的なエネルギーサービスを利用できないことは、経済・社会的な発展のための深刻な障壁になっている一方で、地球温暖化は加速しています。持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)を達成するために、克服しなければならない問題です。官民をあげて脱炭素に取り組むことは必至で、その急先鋒として提案され、国際規格化されたシステムが「エネルギーマネジメントシステム:ISO50001」です。政府の政策や法規制の順守だけではなく、民間企業が率先して脱炭素に取り組むためのツールで、国際的にコンセンサスが得られている標準です。このマネジメントシステムの活用が先進事例となって産業界に普及し、また、政府は政策面でサポートする、また、技術革新を進める原動力にもなっていくと考えられています。

 

4.ISO50001の構造

環境管理の分野では世界で最も先進的とされている日本企業はISO14001(環境マネジメントシステム)の認証取得件数もトップクラスです。すでにISO14001の認証を取得している組織では、ISO50001のシステム導入に困難を要することはないでしょう。規格自体の親和性が高いこともありますが、省エネ活動が環境マネジメントの一部であることは明解であり、ISO14001とうまく融合した仕組みを構築することにより、効果的、効率的なマネジメントが可能となります。

キーワードの一つは「3.4.7エネルギーベースライン,EnB(Energy Baseline)」です。エネルギーパフォーマンス(3.4.3)の比較のために設けられた定量的な基準で(複数の場合もある)エネルギーベースラインは、組織(3.1.1)に定められた特定の期間および/または条件からのデータに基づいていること、一つまたは複数のエネルギーベースラインが、エネルギーパフォーマンスの改善活動の導入前後、またはその実施有無の基準として、エネルギーパフォーマンスの改善(3.4.6)の決定に際して使用されるとしています。 

このベースラインをしっかりとエネルギー管理のスタート地点として把握すること、また、エネルギー使用に際して鍵となる「変数」をKPIとして設定し、パフォーマンスを監視することによってその変数の妥当性も確認していくシステム構成になっています。

下記に概要図を掲載します。ISO50001の活用によって脱炭素への取り組みの証明が可能となり、コストの削減や企業評価の向上といった副次的効果も期待できます。マネジメントシステムの導入にチャレンジしてみませんか。

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図2 ISO50001規格より要点抜粋


図―2 ISO50001規格より要点抜粋

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