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「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方に関するロードマップ」の解説(2024年・2025年の予定)

2023-08-01

2020年10月、国の方針として「2050年カーボンニュートラル」の宣言がなされました。最終エネルギー消費の約3割を占める民生部門(業務・家庭部門)の活動が展開される住宅・建築物において、省エネルギー化や脱炭素化に向けた取り組みの一層の充実・強化が不可欠です。
中期的には2030年、長期的には2050年を見据えて、今後脱炭素社会の実現に向けた住宅・建築物におけるハード・ソフト両面の取り組みと施策が展開される予定です。
今回は、ロードマップに示された2030年までの大まかな流れと2024年・2025年の施策予定についてご紹介します。

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(参考)脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方に関するロードマップ(2021.8)

 
参照:脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方に関するロードマップ(国土交通省・経済産業省・環境省)

 

2030年までの流れ

2030年までに新築される住宅・建築物についてZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保されているとともに、新築戸建住宅の6割において太陽光発電設備が導入されていることを目指す、としています。
2030年度以降については以下の目標が設定されています。

  1. 新築される住宅については、ZEH基準の省エネ性能(強化外皮基準および再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量を現行の省エネ基準値から20%削減)に適合させること
  2. 新築される建築物(非住宅)については、ZEB基準の省エネ性能(再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量を現行の省エネ基準値から用途に応じて次のとおり削減)に適合させること
    ・ホテル、病院、百貨店、飲食店、集会所等:現行の省エネ基準値から30%削減(BEI=0.7)
    ・事務所、学校、工場等:現行の省エネ基準値から40%削減(BEI=0.6)
    ・小規模建築物:再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量を現行の省エネ基準値から20%削減

 

2024年:建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度

2022年6月に建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(平成27年法律第53号。以下「建築物省エネ法」)が改正され、建築物の販売・賃貸時における省エネ性能表示について制度が強化されました。

これを受けて、改正法に基づく表示ルール、制度の施行に向けた表示の促進方策として「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」が2024年4月1日より施行される見通しです。詳しくは国土交通省「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度に関する検討会」のサイトをご覧ください。
※本件は最終決定事項ではなく、今後議論によって変更される内容も含んでおります。あらかじめご承知おきください。
また、2,000㎡以上の建築物(非住宅)における適合義務基準が引き上げ(BEI=0.8程度)となります。

 

■今後のスケジュール

2023年7月上旬頃:関連告示*1の公布、ガイドライン*2(第1版)の公表
2023年7月下旬以降:ガイドライン(第1版)を用いた事業者向け周知を開始

*1 告示:勧告等の措置に関わるもので、建築物の販売・賃貸に係るさまざまな表示の場面で共通的に必要な内容が定められます。
*2 ガイドライン:建築物の省エネ性能表示の普及拡大の観点から望ましいあり方が示されます(消費者等向け追加情報の内容等)。

 

■表示する内容

必須項目:省エネ性能を多段階に評価した結果を、評価時点と併せて表示します(予定)

【住宅(戸建・共同)】
  • 外皮性能:断熱等性能等級(住宅品確法)等級1~7により段階的に表示
  • 一次エネルギー消費量の性能:省エネ基準から0~30%削減まで段階的に表示
  • 再エネ利用設備を設置している場合、最大50%削減まで表示
    (この場合、再エネによる削減効果を加味した性能を、区別できるように表示)
【非住宅建築物】

一次エネルギー消費量の性能:省エネ基準から0~50%削減まで段階的に表示(住宅と同様、再エネも表示)

追加項目:住宅、非住宅ともに以下事項の付加が可能です(予定)

  1. 再エネ利用設備(太陽光発電設備等)が設置されている場合
  2. 第三者評価(BELS)を受けている場合
  3. 住宅の目安光熱費(設計上のエネルギー消費量を年額の光熱費の目安額に換算)
  4. 消費者等に対する追加的な情報提供(予定)
    ・一次エネルギー消費量の性能や外皮性能に関する性能値
    ・建築物省エネ法の各基準への適否
    ・ZEH・ZEBに関する情報(各性能値と要件の関係を補足)

 

■表示方法

国が様式を定めるラベルによる表示となります。ラベルは、販売・賃貸時の広告に掲載するほか、広告を行わない場合は、事業者のウェブサイトや建築物に関する調査報告書等に掲載が必要となります。

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(参考)ラベルのデザインイメージ(募集要領にデザイン例として掲載したもの)

出典:国土交通省
住宅・建築物の省エネ性能ラベルのデザイン募集に係る審査要領・審査結果の概要
建築物省エネ法について
建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度に関する検討会

 

2025年:建築物省エネ法適合性判定の手続き・審査の合理化

2022年6月に建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(平成27年法律第53号。以下「建築物省エネ法」)が改正され、建築物の販売・賃貸時における省エネ性能表示について制度が強化されました。
これを受けて省エネ基準適合義務の対象が大幅に拡大します。

2025年にはすべての住宅において「省エネ適合基準」が義務化されます。また建築物(非住宅)においても、現在は適合義務から除外されている300㎡以下の建築物が適合義務化となります。

現行の中・大規模の非住宅建築物に対する適合義務では、所管行政庁または登録省エネ判定機関による省エネ基準に関する適合性判定を受け、判定通知書の写しを建築主事または指定確認検査機関に提出しなければならないとされています。
今回、適合義務対象がほとんどの建築物に拡大されることに伴い、対象件数の大幅な増加、申請側・審査側双方の負担の増大が見込まれています。
さらに、省エネ基準には、計算によらず基準への適合性を確認できる「仕様基準」が定められていること等も踏まえ、負担増大に配慮し、手続き・審査を簡素かつ合理的なものとする必要があります。

 

改正の概要

1. 省エネ基準への適合性審査を不要とする建築物が以下に限定されます

  • 建築確認の対象外の建築物(第12条改正)
    都市計画区域・準都市計画区域の外の建築物(平屋かつ200㎡以下)
  • 建築基準法における審査・検査省略の対象である建築物(第11条第2項改正)
    都市計画区域・準都市計画区域の内の建築物(平屋かつ200㎡以下)で建築士が設計・工事監理を行った建築物

2. 省エネ基準への適合性審査が容易な建築物の省エネ適判手続きが省略されます(第12条改正)

※仕様基準による場合(省エネ計算なし)等

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【適合義務対象建築物における手続き・審査の要否】

出典:国土交通省「【建築物省エネ法第11・12条】 適合性判定の手続き・審査の合理化について

 

省エネ基準への適合審査の流れ

省エネ適合性判定が必要な場合と、判定を要しない場合で、審査の流れが異なります。

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省エネ適合性判定が必要な場合

 

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省エネ適合性判定が要しない場合

 出典:国土交通省「【建築物省エネ法第11・12条】 適合性判定の手続き・審査の合理化について

 

省エネ適合性判定を要しない仕様基準

仕様基準を用いるなど、審査が比較的容易な場合について2022年11月に基準の見直しがありました。
仕様基準を用いれば省エネ適合性判定は不要となります。仕様基準の見直しポイントは以下のとおりです。

  • 外皮面積の計算は不要、断熱材・開口部の性能値のみで判断可能です(外皮面積に占める開口部(窓・ドア)面積の割合の区分を廃止)。
  • RC造の戸建住宅、木造の共同住宅にも対応した外皮の仕様基準が新たに設定されています。
  • 一次エネルギー性能基準について、設備ごとに効率値等の基準を満たすものを選択すればよく、計算は不要です。
  • 給湯設備にエコキュートを追加するなど、対象設備の種類が拡大されました。

 

「使用基準ガイドブック」(現行は木造およびRC造の戸建て住宅のみ発行済)

2025年の省エネ基準への適合義務化において、本ガイドブックで紹介する仕様基準*3によって省エネ基準への適合を確認可能とされています。(この場合、省エネ適合性判定は不要となります。)

*3 省エネ計算を行わずに断熱材の種類や厚さ等の仕様で省エネ基準への適否を確認できるもの。

木造戸建住宅では、仕様基準ガイドブックを用いることで、省エネ性能への適合を簡単に確認できます。

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国土交通省 資料ライブラリー「仕様基準ガイドブック」

出典:国土交通省「資料ライブラリー「仕様基準ガイドブック」

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省エネ基準への適否の確認方法

出典:国土交通省
長期優良住宅認定基準の見直しに関する検討会
住宅の質の向上および円滑な取引環境整備のための長期優良住宅の普及の促進に関する法律等の一部を改正する法律(概要)
建築物省エネ法について」 

建築認証事業本部 住宅性能評価営業部 井上 卓也

 

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