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樹脂を例とした異物検査について

食品中の異物検査(樹脂の例)

食品の製造や流通、また販売や調理の過程で、異物が混入することがあります。異物混入は不衛生であるだけでなく、怪我に繋がる可能性もあり、対策をとることが必要です。ビューローベリタスエフイーエーシーでは混入した異物の同定検査を行なっております。その検査結果は異物の混入原因を調査する際の参考になります。 今回は、事例の多い樹脂の混入について、検査の流れを紹介します。 樹脂製品は食品製造に使用する機械・器具、容器や包材などさまざまな用途で使用されています。

目次

想定例① 


(1) 実体顕微鏡にて異物を観察する

まず実体顕微鏡で異物の表面や末端を確認します。異物の色調や表面の質感はどうか、刃物で切断されたのか千切れているのかといった特徴を見ていきます。写真2の異物表面には細かな傷の見られる平らな部分やざらざらとした部分、傷の見られない滑らかな部分が見られます。樹脂製品は劣化や圧力、熱が加わることで変形します。今回の場合、滑らかな部分やザラザラとした部分に黒いものが見られることから、異物は熱で溶けている可能性が考えられます。
 

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FEAC_異物検査_樹脂_外観および顕微鏡写真 (2)


(2) フーリエ変換赤外分光分析装置にて材質を確認する

次にフーリエ変換赤外分光分析装置を使用して異物の材質を確認します。フーリエ変換赤外分光分析装置は赤外線を使って化合物の構造を推定する装置です。物質は構成する分子の結合により、それぞれ違った赤外線の吸収をします。この性質を利用して異物の構造を推定し、保有しているデータから似ているものを検索します。今回の異物ではポリプロピレンが候補に挙がりました(図1)。
これらの結果から、異物はポリプロピレン樹脂製品の一部と推測され、また熱を受けている可能性が挙げられました。異物が熱を受けているということは、「製造の加熱工程の前に混入している、あるいは加熱調理の前に混入している」というように、混入したタイミングを絞ることができるかもしれません。

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異物およびポリ塩化ビニリデンの定性分析の比較

 

想定例② 混入した異物が、工場で使用しているラップフィルムの可能性がある例

(1) 実体顕微鏡にて異物を観察する

異物と比較品の表面はどちらも滑らかですが、比較品(工場で使用しているラップフィルム)の方がやや傷が目立ちます(写真4、5)。断面についてもどちらも滑らかで、刃物で切り取られている可能性が考えられます。

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FEAC_異物検査_樹脂_外観および顕微鏡写真


(2) フーリエ変換赤外分光分析装置にて材質を確認する

定性分析の結果、異物はポリ塩化ビニリデン、比較品はポリエチレンと推定されました(図2、3)。
これらの結果から、異物は刃物などで切り取られたポリ塩化ビニリデン製のラップフィルムのような薄い製品の一部である可能性が挙げられ、また材質の違いから比較品とは異なる物質と推測されます。材質がポリ塩化ビニリデンということは「工場で扱っている製品ではない」というように混入した場所を絞ることができるかもしれません。

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異物およびポリ塩化ビニリデンの定性分析の比較(2)

 

この他にポリエチレンテレフタレート(衣類の繊維など)やアクリル(塗料など)といった樹脂製品の混入事例もしばしば見られます。

ビューローベリタスエフイーエーシーの異物検査ではこれらの樹脂製品以外についても同定検査を行なっておりますのでご相談ください。
 
ビューローベリタスエフイーエーシーで検査可能な項目はこちらをご覧ください。
異物検査
 
【参考情報】 
食品衛生検査指針 理化学編 追補2019 第10章 異物(公益社団法人日本食品衛生協会)
【使用機器】 
実体顕微鏡(KEYENCE製 VH-Z100R/VHX-950F)
フーリエ変換赤外分光分析装置(PerkinElmer製 Spectrum3)

ビューローベリタスエフイーエーシー株式会社 検査部 微生物検査課 山根 昭紀 


【お問い合わせ】
ビューローベリタスエフイーエーシー(株) 食品検査事業部 横浜分析センター
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