ケーススタディ:新電元工業株式会社(IATF16949・ISO9001)
2つの品質認証を相次ぎ移行
新電元工業株式会社は、エネルギーの変換効率の向上を、半導体技術・回路技術・実装技術の3面から探求し、脱炭素社会の実現に貢献する、まさに「これからの企業」だ。
同社の将来性を象徴するように、2021年4月には、研究開発・事業運営・本社機能などほぼすべての企業組織を集約した事業所を、埼玉県朝霞市に開業した。 そんな同社が2021年、2つの品質管理認証について大きな決断をした。
まずは2021年3月に、国内電子デバイス事業本部が取得していたIATF16949(自動車産業品質認証)の認証機関をビューローベリタスに変更。続いて4月に、2009年から継続していたISO9001の認証機関もビューローベリタスに変更したのだ。
相次ぐ認証機関の変更について、電子デバイス事業本部品質保証部の福村昌己品質管理課長はこのように言う。 「認証機関を変えた第一の理由は、車載用の電子デバイスの供給拡大に注力しようというわが社の企業戦略にあります。現在、車載デバイスの製造に対応する品質認証(IATF16949)を取得している生産拠点は国内の秋田と山形にある工場ですが、今後は海外の生産拠点においても車載用製品の生産を拡大する必要があり、その海外拠点でもIATF16949を取得する必要が出てきました。それを考えると、今後ずっとドメスティックな認証機関にお願いし続けることは難しいのではないかという議論が起こりました。それでグローバルな認証機関への移行を考え始めたのです」。
移行先の認証機関については、コストはもちろんだが、審査内容やグローバル拠点の強さなど、さまざまな面から慎重に精査された。
ここでビューローベリタスにちょっとした追い風が吹いた。海外の生産拠点の一つ、タイ工場のISO9001の認証機関がビューローベリタスだったのだ。そこで福村課長はタイ工場の審査内容を事前に把握することにした。そして「こういう審査をする認証機関なら安心だと踏んだ」のだという。
こうした経緯もあり、数社の認証機関の比較と検討を経て、新たにIATF16949認証の認証機関として選ばれたのがビューローベリタスだった。 さらにこの移行にともない、ISO9001についてもビューローベリタスに移行したほうがいいのではないかという意見が出た。
「ISO9001とIATF16949はどちらも品質に関する認証なので、同じ認証機関で統一した見解のもとで審査や指摘を受けたほうがいい、同じ箇所を指摘されてもその内容や視点が認証機関によって違って混乱するという事態になるのは避けたいという意見でした。さらに、認証機関を揃えると手続きや審査の日程も一元化でき、いろいろな場面で審査時の負担が減るだろうという予測もありました」と、品質管理部品質管理課の瀬田葉子氏は言う。
刺激し、気付かせてくれる審査
こうしてビューローベリタスは、昨春より同社の2つの品質マネジメントシステムの審査をする第三者認証機関となったのだが、新たなパートナーとなったビューローベリタスの審査について、感想と評価を聞いてみよう。
まず先に審査を受けたIATF16949については、「30余件と、十分すぎるほど十分な指摘を受けました。なかには、現場からするとその指摘はちょっと違うと思う案件もありましたが、概して今までになかった視点からの指摘で、とても参考になり、また刺激にもなりました。今までのレベルをもう一段上げるための機会にできた審査だったと思います」と品質管理部の藤井元統部長は言う。
今までになかった指摘を受けたことで、「ではなぜ今まではそうしていたのか?」ということについて改めて考える機会になり、慣れやマンネリに知らないうちに侵食されていたことに気付いたこともよかったという。
また今までと違った指摘を受けたことにより、現場の品質担当者と頻繁にコミュニケーションを取って、改善したり見直したり、勉強したりするようにもなった。 ビューローベリタスの審査を、「いろいろな意味で、刺激を受け、気付きをもらった審査でした」と評価する藤井部長だ。
翌月行われたISO9001の審査については、「悪いところを見つけるための審査ではなく、気付かせ、導くための審査だという印象を受けた」と、品質管理課の瀬田葉子氏は言う。「『これはダメです、こうしなさい!』ではなく、『こうしたらどうなるか?』という思考を、誘発するようなインタビューの仕方だった」とも。 また「これは裏話ですが、『認証機関が変わりますよ!』というのは現場をピリッとさせるためにとても効果的で、社員の意識が変わり、内部監査もしやすくなったし、実際に改善もぐっと進みました」と苦笑する。
福村課長も触れていたことだが、新しいものに対する緊張感や警戒心は時に絶好のカンフル剤となるということだろう。
パンデミック時代の品質管理
さて、最後に今後の課題について聞くと、考えさせられる答えが返ってきた。
それは新型コロナウイルスを含むパンデミックに対応できるよう、リモート審査の体制と設備を進化させることだという。 「今回の新型コロナウイルスの流行を見ていて、これからパンデミックは特別なことではなくなるかもしれないと思いました。ではパンデミック下での品質管理はどうしたらいいのか。これはメーカーとして、特に品質の門番である品質管理部としては考えざるを得ない重要なテーマです」と藤井部長は言う。
海外拠点の審査は、認証機関をグローバルなビューローベリタスに移行したこともあり、現地対応で行えるが、それを日本からリモートでサポートする体制を組まなくてはならない。システム審査は何とかできるだろうが、現場審査のサポートはどうすればいいのか。また、得意先の監査にもリモートを活用した監査が実施方法の一つとして認識され始めたので、リモートという手段を我々としてどう活用して実施していくかも大きな課題だ。
その解決は品質管理の技術や知識だけではできず、別の分野の専門家の力も借りる必要がある。今まで以上にコミュニケーション力や構築力が試される局面が多くなるだろう。
パンデミックはこうして品質管理の世界にも新たな闘いを強いている。パートナーとなる認証機関にも、それに伴走できる力強い対応力と知性が求められている。
(2022年1月12日取材)
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