「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方に関するロードマップ」について
2020年10月、日本は「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。最終エネルギー消費の約3割を占める民生部門(業務・家庭部門)の活動が展開される住宅・建築物において、省エネルギー化や脱炭素化に向けた取り組みの一層の充実・強化が不可欠となっています。
このため、中期的に2030年、長期的には2050年を見据えて、今後脱炭素社会の実現に向けた住宅・建築物(非住宅)におけるハード・ソフト両面の取り組みと施策が展開される予定です。
今回は、ロードマップに示された2022年度の改正予定と、2030年までの大まかな流れについてご案内します。
参照:脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方に関するロードマップ(国土交通省・経済産業省・環境省) |
1. 2022年度の住宅における施策
① 支援措置における省エネ基準適合要件化
2022年度「こどもみらい住宅支援事業」での補助金や金融支援機構等での融資条件、ローン減税等の施策において省エネ基準(断熱等性能等級4、一次エネルギー消費量等級4 以上)が要件化されます(2022年4月~)。
等級の詳細はこちら「2022年4月1日より日本住宅性能表示基準が改正されます」
② 省エネ誘導基準をZEHレベル(強化外皮基準&BEI=0.8)に引き上げ
低炭素建築物、長期優良住宅の認定基準はZEHレベル(強化外皮基準&BEI=0.8 )に引き上げになる予定(2022年10月~)です。また住宅性能表示制度においてZEHレベル以上の多段階の等級(断熱等性能等級6&一次エネルギー消費量等級7)が設定される予定です(2022年10月~)。
等級の詳細はこちら「2022年4月1日より日本住宅性能表示基準が改正されます」
③ ZEH等の住宅に対する融資、税制による支援
これまでもZEH住宅における優遇措置がありましたが、引き続きZEH住宅への融資や税制における優遇措置が実施されます。
2. 2022年度の建築物(非住宅)における施策
① 支援措置における省エネ基準適合要件化
住宅と同じく、補助金や金融支援機構等での融資条件等において省エネ基準(断熱等性能等級4、一次エネルギー消費量等級4 以上)が要件化されます(2022年4月~)。
② 誘導基準等をZEBレベル(用途によりBEI=0.6または0.7)に引き上げ
住宅と同じく、低炭素建築物の認定基準がZEBレベル(同上)に引き上げになる予定です(2022年10月~)。
3. 2023年度以降の施策<住宅・建築物(非住宅)とも>
① 2024年までに、新築住宅の販売・賃貸時における省エネ性能表示が始まる予定です。また2,000㎡以上の建築物(非住宅)における適合義務基準が引き上げ(BEI=0.8程度)となります。
② 2025年には、すべての住宅において「省エネ適合基準」が義務化されます。また建築物(非住宅)と現在は適合義務から除外されている300㎡以下の建築物も同様に適合義務化となります。
③ 2030年までに新築される住宅・建築物については、ZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保されているとともに、新築戸建住宅の6割において太陽光発電設備を導入することを目指すとしています。
2030年度以降については、以下の目標が設定されています。
④ 新築される住宅については、ZEH基準の省エネ性能(強化外皮基準および再生可能エネルギーを除いた(*)一次エネルギー消費量を現行の省エネ基準値から 20%削減)に適合させること
⑤ 新築される建築物(非住宅)については、ZEB基準の省エネ性能(再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量を現行の省エネ基準値から用途に応じて次のとおり削減)に適合させること
- ホテル・病院・百貨店・飲食店・集会所等:現行の省エネ基準値から 30%削減(BEI=0.7)
- 事務所・学校・工場等:現行の省エネ基準値から 40%削減(BEI=0.6)
- 小規模建築物:再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量を現行の省エネ基準値から 20%削減
(*)再生可能エネルギーを導入した場合であっても、それに伴うエネルギー消費量の削減分を含めないで、一次エネルギー消費量の削減量を現行の省エネ基準値から20%削減するものを意味する。
出典:
令和3年8月「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の 省エネ対策等のあり方検討会資料」
建築認証事業本部 住宅性能評価業務部 井上 卓也