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カバー画像(クリーンオフィス)

WELL Building Standard評価項目の設定内容

WELL認証について話題に上る機会が増えてきています。
WELL認証はWELL Building Standardに基づき評価が行われますが、設計や建設に関して、どのような内容が盛り込まれることを期待しているのか、評価項目の内容を通してご紹介します。

 

WELL Building Standardのコンセプト

WELL Building Standardは「人間の健康を増進し、健康と幸福の文化を育むこと」を目的に、評価項目や評価ポイントが定められています。
より良い建物を通して、人の健康をサポートし向上させるための10のコンセプト(空気・水・食物・光・運動・温度快適性・音・材料・心・コミュニティ)から構成され、あらゆる用途のプロジェクトに評価を使用することが可能です(ただし、テナントビルのコア(共用)部分を主対象とした場合は「WELL core」を評価システムとして使用する必要があります)。

WELL Building Standard:10のコンセプト
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WELL Building Standard:10のコンセプト


評価項目(Feature)は、必須項目と加点項目から構成されています。評価項目(Feature)のなかには、パートに分けられた要件があります。プロジェクトは、必須パートの全てを満たしたうえで加点パートを満たして点数を獲得します。

 

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評価項目(Feature)

 

審査には書類審査以外に、現地審査があります。現地審査では、空気・水・光・音・温熱快適性に関する測定や、その他の項目も含めたスポットチェックを行います。

 

評価項目の内容-「Air(空気)」の場合

評価項目の「Air(空気)」の例で説明します。
Airは建物のライフステージごとに、物質発生源の除去や削減、受動的・能動的な建物の設計・運用、人間の行動へ関与することで、高いレベルの屋内空気質の実現を目標としています。
Air(空気)は14の評価項目から構成されています。

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評価項目の内容-「Air(空気)」

 

この中からA01 Air quality の評価設定内容を見てみましょう。
評価設定内容は項目の設定に関し、意図・概要・問題点・ソリューション・特定部分の閾値について記載されています。

■ 意図
建物利用者の健康と福祉に寄与する基本的なレベルの空気環境を提供する

■ 概要
要求事項はパブリックヘルスオーソリティーによって定められた許容可能な空気レベルを提供すること

■ 問題点
揮発性有機化合物(VOC)、オゾン、粒子状物質、一酸化炭素などの大気汚染物質への曝露は、呼吸器疾患や心血管疾患のリスクを高めるだけでなく、毎年数千人もの癌死亡者を出す原因となっていることが明らかになっています。汚染物質を吸い込むと、頭痛、喉の乾燥、目の炎症、鼻水などの症状が現れ、後に喘息発作や癌などの深刻な健康被害に発展する可能性があります。さらに、ラドンへの曝露は、タバコの使用に次いで肺癌の第2の原因となっています。

■ ソリューション
世界保健機関(WHO)や米国環境保護庁(EPA)などの規制機関では、「基準」となる大気汚染物質のリストを定めています。これらの規制機関は、基準汚染物質の濃度、曝露時間、健康リスクの関係を示す疫学研究に基づいて、基準汚染物質の許容レベルを設定しています。許容レベルで定義された室内空気の清浄化という目標を達成するには、適切なアプローチを実施し、専門家と建物の利用者の両方が共同で努力する必要があります。室内空気の質は、WELL Airのコンセプトに挙げられている、発生源の制御、パッシブおよびアクティブな建物の設計・運用、人間の行動への関与など、さまざまな機能によって適切に管理することができます。効果的な機械的換気は、ラドンを許容範囲内の閾値以下とすることが特に効果的です。

■ 特定部分の閾値
商業用厨房(飲食テナント)、工業用(製造用途)を除くすべての空間への対応

オプション1:  受け入れ可能な閾値
居住可能な空間では、以下の閾値を満たしています。
a. PM2.5 : 15 μg/m3以下であること
b. PM10 : 50 μg/m3以下であること
オプション2:  汚染地域における閾値の変更
この地域を採用したプロジェクトは、達成した合計ポイントに関わらず、WELL認証レベルがゴールドに制限されます。
年平均屋外PM2.5レベルが35μg/m3以上のプロジェクトについては、以下の閾値を満たす。 
a. PM2.5 : 25 μg/m3以下であること
b. PM10 : 50μg/m3以下(以下省略)

上記のような評価設定内容(意図・概要・問題点・ソリューション・測定のための閾値)が、評価項目ごとに示されています。

 

まとめ

WELL認証取得を目指す場合、項目ごとの評価内容を把握し、どのような背景で要求事項として設定されているかを理解したうえで、仕様設計に反映させることが求められます。
今回、10のコンセプトのうち”Air(空気)”について解説いたしました。    
残りのコンセプトについては、今後技術監査部のコラムにてご紹介いたします。ご興味のある方はぜひコラムをお読みください。

技術監査事業部 佐々木 輝

 


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