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カバー画像(匂い・検査)

臭気・異臭分析の流れと検査事例

2021-12-10

人間を含む動物の嗅覚は、不快な臭いに対して敏感に働きます。これは、危険な食べ物であるかどうかを臭いで認識し、生命を維持するのに必要な機能として獲得したものと考えられています。
今日では食の安全に対する意識の高まりから、食品から発生する異臭がクレームにつながることが少なくありません。
食品から異臭が発生する原因には、原料の劣化、外部からの移り香、細菌等による腐敗の進行等が挙げられます。ビューローベリタスエフイーエーシーの臭気・異臭分析では、食品から発生する臭いの成分を分析機器で検出し、その結果をもとに原因の特定を行います。

 

異臭検査の流れ

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異臭検査の流れ


図1 異臭検査の流れ

最初に、試料をバイアル瓶に測り取り、加熱してから揮発性成分のサンプリングを行います。
サンプリング方法の一つにSPME(固相マイクロ抽出)法があります。バイアル瓶内の揮発性成分をSPMEファイバーに吸着させ、そのファイバーをGC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)の試料注入部に差し、測定します。
GC/MSはガスクロマトグラフと質量分析部から構成されています。GC/MSの試料注入部に試料が注入されると、ガスクロマトグラフで複数の成分が一つひとつの成分に分離されます。分離された成分を、質量分析部で熱電子と衝突させて分解し、これにより生じた物質を検出します。

上記の測定により、クロマトグラムとマススペクトルのデータが得られます。
クロマトグラムは各成分が測定開始からいつ検出されたかをピークで示したものです。一方、マススペクトルは、各成分がどのように分解されたかを示したものです。クロマトグラムのピークには、それぞれマススペクトルの情報が含まれています。
成分の種類に応じてどのように分解されるかは決まっているため、測定により得られたマススペクトルがライブラリー内の化合物のマススペクトルのパターンと類似しているかどうかを照合し、具体的な成分の種類を特定します。

 

異臭検査の検査事例

事例①「冷凍ぶどうから異臭がする」

検体からはクロマトグラムの4:32と6:26に特に大きいピークが検出され、これらはヘキサナールと(Z)-3-ヘキセナールという青臭さをもつ成分と特定されました(図2)。この2つのピークは大きく、青臭さの成分が強く検出されたため、異臭として感じ取られたと推定される事例です。

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事例①のクロマトグラム

図2 事例①のクロマトグラム

 

事例②「フライドポテトからチーズのような臭いがする」

この事例では異臭品と正常品を比較して検査を行い、異臭品からは10:43と11:48、12:18にピークが検出されました(図3)。これはプロピオン酸、酪酸、4-メチル吉草酸というバター・チーズ臭や不快臭をもつ成分と特定されました。これらは有機酸類と呼ばれ、食品中の糖やタンパク質の発酵、または微生物分解により産生する成分です。官能的にも異臭品からはチーズ臭を感じられており、異臭品は発酵などが進行している可能性が挙げられました。

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事例②のクロマトグラム

図3 事例②のクロマトグラム

ビューローベリタスエフイーエーシーでは、ほかにもさまざまな食品検査を行なっております。
検査のご依頼、検査に関するお問い合せをお待ちしております。

参考文献
食品分析開発センター「食品の異臭原因について」(2009年9月発行)

 

ビューローベリタスエフイーエーシー株式会社 検査部 微生物課 岩谷 拓朗


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