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学校施設の非構造部材耐震点検について

2021-10-11

近年、大規模地震による学校施設での天井材の落下など、いわゆる「非構造部材」の被害が発生しています。文部科学省は、非構造部材の耐震対策の重要性とともに、その点検および対策方法に関する理解を深め・耐震対策を進めるよう、学校設置者・教職員向けに平成 22 年3月に「学校施設の非構造部材の耐震化ガイドブック」を作成し、取り組みを支援しています。

今回は近年実施が増えている、学校施設の非構造部材耐震点検(以下、非構造部材点検という)について、その必要性や点検方法などをお伝えいたします。

 

(目次)

  1. 学校施設の非構造部材とは
  2. 点検の考え方
  3. 点検の方法

 

1. 学校施設の非構造部材とは

学校施設における「非構造部材」の範囲

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非構造部材の例:教室、特別教室(理科室)

 

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非構造部材の例:屋内運動場、その他

出典: 文部科学省「学校施設の非構造部材の耐震化ガイドブック(改訂版)

  • 「非構造部材」は、一般的には天井材・外壁材などの建築非構造部材を指しますが、学校施設においては設備機器や家具などを含めます。
  • 地震時に子供たちの安全を確保し、また近隣住人の防災の拠点となるため、建物の構造体はもちろん、これら非構造部材の耐震対策も実施する必要があります。

 

地震による非構造部材の被害

地震時の非構造部材による被害には、非構造部材の頭上などへの落下や転倒による直接的な人的被害のほか、避難経路の通行阻害などの二次災害があります。

  • 直接的な人的被害
    - 天井材の落下、家具の転倒によるけが など
  • 二次災害
    - 避難経路の通行阻害
    - ガス・油などの漏れによる出火(火災の発生) など

天井、壁、ガラスなど、高所で重量があるものや、破損時に鋭利になるものは、落下などにより生命に危険を及ぼす可能性もあるため、学校施設における非構造部材検査の必要性がますます高まっています。

 

地震による被害事例

1978年6月宮崎県沖地震ガラス、ALCパネルなどの被害多数
1995年1月兵庫県南部地震天井などの被害多数
2001年3月芸予地震屋内運動場の天井落下など
2003年9月十勝沖地震空港ビルの天井落下
2004年10月新潟県中越沖地震学校施設の天井や外壁などの脱落
2005年3月福岡県西方沖地震SRC造オフィスビルで窓ガラスが大量に破損及び落下
2005年8月宮崎県沖地震スポーツ施設(温水プール)の天井落下
2007年3月能登半島地震天井の全面的な脱落など
2007年7月新潟県中越沖地震学校施設などの大規模空間で天井が脱落
2008年6月岩手・宮城内陸地震窓ガラス、外壁、天井などが破損及び脱落
2011年3月東北地方太平洋沖地震天井、窓ガラス、内外壁など様々な非構造部材の被害が発生

出典: 文部科学省「学校施設の非構造部材の耐震化ガイドブック(改訂版)」から抜粋

 

●非構造部材の被害事例

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非構造部材の被害事例:屋内運動場の天井材の脱落、他
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非構造部材の被害事例:ステージ前部の壁の脱落、他
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非構造部材の被害事例:天吊りテレビの落下、他事例

出典:文部科学省「学校施設の非構造部材の耐震化ガイドブック(改訂版)」

 

2. 点検の考え方

学校(教職員など)に求められていること

  • 施設を日常的に使用する者として、異常の早期発見のための点検
  • 主に目視により、異常箇所の発見およびその進行状況について点検
  • 学校設置者へ点検結果の報告 学校で対応可能な対策の実施

 

学校設置者(国、地方公共団体および学校法人)に求められていること

  • 点検の目的や点検方針、実施計画などの策定
  • 専門的な見地から点検を実施
  • 対策の必要性の判断が困難な場合や対策手法の選択が難しい場合は、専門家に依頼し、実施していくことが重要

 

点検の種類・頻度

点検内容に応じ、耐震性に関するもの、劣化状況に関するものがあり具体的には以下の3つに分類されます。

  1. 耐震性一斉点検(計画的に一度全校で実施)
  2. 定期的に行う劣化点検(3年に1回程度実施)
  3. 臨時に行う劣化点検(学校の報告に基づき随時実施)

 

建築基準法 第12条 定期報告(特定建築物定期調査)の活用

学校の規模などにより建築基準法第12条に基づく調査・検査(定期報告)の実施が必要な場合があります。これは、安全上(避難)、防火上、衛生上の観点から調査・検査を行うため、構造の耐震化とは観点が異なります。しかし、建物の劣化状況の調査については同じく一級建築士などが実施するため、非構造部材点検(学校設置者に求められる点検)は、定期報告と併せて実施することやこの結果を活用することも考えられます。

 

3. 点検の方法

学校(教職員など)が行う内容

  • 家具などの耐震性点検(年1回程度実施)
    身の回りの家具や設備などについて、壁に固定するなどの転倒・落下防止対策がとられているかを点検します。
    (内容) 家具、設備、ピアノなどについて、転倒・落下防止などの耐震対策がとられているか確認
  • 非構造部材の劣化点検(毎学期1回程度実施)
    経年による錆さびやひび割れなどが発生し、耐震性能が低下するものがあるため、異常箇所の発見及びその進行状況について定期的に点検します。
    (内容) モルタルのひび割れなど、非構造部材の劣化状況と進行状況を確認
  • 家具などの使い方点検(日常的に実施)
    転倒防止対策などがとられていても、高所に重いものを置くなど、使い方によっては地震時に危険が生じることがあるため、日頃から家具などの使い方を点検します。
    (内容) 高所に重量があるものを置いていないかなど、日常的な使い方を確認

 

学校設置者(国、地方公共団体および学校法人)が行う内容
(内容により専門家に依頼するのが望ましい)

  • 耐震性一斉点検(計画的に一度全校で実施)
    非構造部材の中には、耐震性が低い工法や材料で設置されているものもあるため、設計図書や現地調査により、一度全ての非構造部材を点検します。
    (内容) 天井の落下防止対策や外壁の工法など、専門家による耐震性能の確認
  • 定期的に行う劣化点検(3年に1回程度実施)
    経年による錆さびやひび割れなどが発生し、耐震性能が低下するものがあるため、学校からの点検結果も踏まえて、定期的に劣化状況について専門的な見地から点検します。
    (内容) モルタルのひび割れなどの劣化状況およびその危険性などの確認
  • 臨時に行う劣化点検(学校の報告に基づき随時実施)
    学校の点検で見つかった劣化状況について、特に緊急を要するものについては、定期的な点検を待たずに臨時で詳細な点検を行います。
    (内容) 学校の報告または要請に基づき劣化状況およびその危険性などを確認

点検は点検チェックリストを活用して実施します。
チェックリストは過去の被害状況を踏まえ、一般的な学校施設において特に点検を実施することが望ましいと考えられるものを項目として示していますが、必ずしも網羅的ではないため、学校施設に応じてアレンジすることが重要となります。

点検チェックリストは文部科学省ウェブサイトに掲載されています。

ビューローベリタスは設備点検の専門家として、学校設置者が行うこれらの点検業務を承っております。 事前相談で、ご要望に合わせた点検項目の取捨選択などを行います。

 

ビューローベリタスの提案

ビューローベリタスでは、検査員教育を受けた特定建築物調査員、建築設備検査員、防火設備検査員が多数在籍し、高い業務品質を確保し、非構造部材点検をはじめ、建築基準法第12条定期報告業務防災・消防点検報告業務電気保安点検業務など、各種サービスを提供しております。

  • バリュー価格
  • 全国どこでも対応
  • 年間実績 8,500件
  • 大規模建築物も対応

実施に向けた予算確保のためのお見積作成もしておりますので、ぜひご用命ください。

インサービス検査事業本部 久保田 理恵

 

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