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顕微鏡

微生物による食中毒

特定の微生物が増殖したものや、毒素を産生したものを含む食品を人間が食べると健康を損なう場合があります。これを食中毒と呼びます。
食中毒の主な原因となっている細菌は、高温多湿な環境で増殖しやすいため、6~9月は細菌による食中毒が多発する傾向にありますが、食中毒全体としての数は夏だけに多いわけではなく、1年を通して平均的に起こっています。これは冬にノロウイルスなどのウイルス性食中毒が増加しているためです。近年の原因物質別での発生件数、患者数で上位の食中毒発生傾向ではノロウイルスが最も多く、以下、カンピロバクター、ウエルシュ菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ属菌と続きます。
今回は夏に多くなる細菌性食中毒について説明します。ノロウイルスについては、別の機会に紹介します。

食中毒と腐敗は、夏に発生することが多くなるということで混同しやすいのですが、これらは少し違います。腐敗とは食品のたんぱく質や炭水化物が微生物によって分解され、悪臭や粘りが出たりするものです。腐敗した食品を食べても下痢や嘔吐などの症状は出ません。これに対して、食中毒は食品衛生上問題となる特定の病原微生物が元となり引き起こされ、人間が食べるとその病原微生物特有の症状が出るものです。病原微生物が存在している食品は、腐敗している場合と違い外見上に著しい変化を伴わないことが多いため、病原微生物が食品に存在しているかどうかは目で見て判断することが難しいです。これを判断するためには培地を使って微生物を培養し、目で見えるようにすることが一般的です。

培地とは、その特定の微生物の繁殖にとって都合の良い環境を、人工的に作ったものです。検査する食品を溶かした水を培地に混ぜて、特定したい微生物が生育しやすい温度に置くことで人間の目に見える形になります。この形をコロニーと呼びます。培養終了後に典型的なコロニーが見られた場合、元の食品に検査対象の病原微生物が存在していたということになります。

培養後のTCBS培地 (c)Bureau Veritas写真は培養終了後のTCBS培地です。TCBS培地は腸炎ビブリオやコレラ菌がコロニーを形成する培地です。TCBS培地で中心部が青緑色のコロニーは腸炎ビブリオの典型的な特徴なので、写真の中で点々と見えているものは腸炎ビブリオだと推定されます。実際にはTCBS培地の環境を好む別の微生物の可能性もあるため、いくつかのコロニーをさらに別の環境の培地に移植して微生物の種類を絞り込みます。それを繰り返して最終的な判定をします。

食中毒を起こさないためには、原材料を適切に管理し、製造販売時の衛生を徹底し、正しい知識をもって調理しなければなりません。食品が消費者に届く前の段階で、食中毒を起こす微生物がいないことを確認するためには、こうした検査を行うことが必要です。ビューローベリタスエフイーエーシーは、腸炎ビブリオの他にもさまざまな微生物検査を行なっておりますのでどうぞご相談ください。

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ビューローベリタスエフイーエーシー「微生物検査」

【参考情報】

ビューローベリタスエフイーエーシー株式会社 検査部 微生物検査課  山根 昭紀

 


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